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詩としての短編

作者:己奴 春惡


『小説家』


生きている小説家を信じるのか?

奴らは平気な顔で嘘を吐く

死んでいる小説家は信じてもいいだろう

奴らは嘘を吐かない

少なくとも俺の生きている間は



『カス』


私の言葉は残りカス

私の体は真水のように

清らかではないから

煮詰めれば灰汁とともに出てくる

魂の残りカス



『列車』


「朝っぱらからモクモクと煙を吐いて威勢のいいこった。薪を喰らって馬並だ」

「今時に薪を喰らってる列車なんて見たことがねぇ」

「じゃあ何を喰うんだ?」

「俺が知ってるのは黒いやつさ」

「そりゃあ俺の朝飯の焦げたパン屑か?」

「違えな」

「じゃあ絵を消すときに使うパン屑か?」

「ああ、きっとそっちだ」

「列車も腹が減っては走れねぇからな」

風に棚引く黒煙は空をキャンパスにして今日も走る



『詩』


私の言葉はいずれ焼却炉の中へ

燃やされ、塵灰と一緒に空気に溶け

空に舞い、霧消して

田畑や海へと降り注ぐ

私たちの肉体は名も無き詩人の遺書でできている



『盗人』


ある日、男が警察に自首してきた。

「俺は盗人だ」と、男は言った。

彼に何を盗んだのか訊ねてみても、うんともすんとも言わないので、町の人々にわけを話すと彼らは口々にこう言った。

「そいつは嘘吐きか、さもなきゃ成りたがりさ。真実なんて真っ平ごめんだ。聞けば信じたくなるからな。」

男は真実を盗んだ盗人。

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