次にくるライトファンタジー漫画がすごい2021
子供の頃、こんな風に考えていた。
「大人になったらゲームも漫画も小説も楽しめなくなるに違いない。ある日突然、大人菌のようなものに感染して脳が破壊され、コロコロコミックやファミコンや空想小説といったものに対して一切の興味と関心を失う。そしてBIG tomorrowのみを唯一の読書とする娯楽なき仕事人生がはじまるのだ。大人になるとはそういうことで、それはとうてい避けることのできぬ運命なのだ」
本当にこれを嫌がっていた。
中年男子になってみて気付いたが、全然そんなことはなかった。普通に大人になってもライトファンタジー漫画が読めている。ロードス島戦記やスレイヤーズは偉大だった。
ということで、つい最近「次にくるマンガ」系の記事を読み、リストにあるのだいたい全部読むというたいへんミーハーなムーブを決めたので、この記事を書くことで昇華(?)したく思う。
ただランキング作品はすべて面白かった。どの作品からもくる力を感じたし、何だったらすべておすすめなのだが、記事にまとまりがなくなるから、今回は現代を生きるオジサン世代の青春に間違いなく居座っていたライトファンタジー作品を取り上げることにする。
くる度★★★★☆
人を脅かす竜を狩る、狩竜人(かりゅうど)という人々が活躍する世界。主人公ラグナは狩竜人としては三流で自らを「おまけ」とまで称する。が、天才少女レオニカの付き人としてまあまあ充実した日々を過ごしており、しかも相思相愛であるらしい。
ハッピーエンド済なのであとは死ぬだけだな、と思うのだが今の幸せを失う恐怖をラグナは感じはじめる。その予感は的中する。
ある日、町に上位竜と呼ばれるドラゴン界隈の黄金聖闘士的な存在があらわれ、たいへんなことが起こる。いろいろあって主人公は最強になり、危機を脱するわけだが……。
最強主人公もの、という枠内に入る話ながら、創意工夫がちりばめられており、構成にも気合いが入っていて、はじめて読んだ時にかなり童心ゲージが上昇した。
勢いで一気に描かれた感性の作品ではなく、間違いなく熟考された脚本なのだが、猛烈な勢いがある。次から次へとボスを討伐していくハイテンポなストーリー展開がとにかく気持ち良い。
極めて現代的にアップデートされた白熱バトル漫画の傑作だ。
最新刊が8巻だから、今が追うチャンス。二桁台に乗ると手出しにくくなりますよ。バスに乗り遅れるし、みんなもう海に飛び込みましたよ。迷わずカートにぶちこもう。
くる度★★★★★
一巻が発売した時にかなり話題になっていたこの作品。
ジェフ・ベゾスのとこ(配慮)でも評価数が短期間で1000件越えしてしまうなど、発売当時の勢いがうかがい知れる。読んでみればわかると思うが、評価の多さも納得できるたいへんエモーショナルな内容だ。
一言で説明すれば、エルフが仲間たちの短い寿命に戸惑う話である。
長命種の悲喜こもごもが描かれている。
魔王討伐パーティーの後日談なのだが、主人公として選ばれたのが感情の乏しいエルフの魔術師フリーレン。
長命なので魔王討伐後も現役で旅を続けているが、ほんの数十年が経っただけで、かつての仲間は年老い、死んでいく。エルフにとってはそれは一瞬のことに過ぎず、納得にしろ理解にしろどうしても気づきは遅れてやってくる。寿命の短い人間は成熟が早いが、長命のエルフは心の発達もゆるやかなのだ。
だからフリーレンの心はだいたい遅れてやってくる。すべてが終わったあと、仲間が逝ったあと、ふと過去を振り返った時、以前は気にもとめなかったことが再発見される。その遅ればせながらの精神的成長を描いたのがこの作品だ。エモくならないはずがない。日本人はこういうのに弱いんだよなあ。
あまりにも雑な言い方だが、泣けるライトファンタジー漫画筆頭のような立ち位置に一瞬で行ってしまった作品だ。これが「こない」とはとても思えない。鉄板だろう。
ちなみに現在展開中のロードス島戦記新作でもパーンの死後が描かれており、ディードリットはひとりで生きているとか。こうして考えてみると、このエルフ問題にメスを入れた作品ってパッと思いつくものが少ない気がする。ありそうでなかった作品なのだな。
長生きするってのもたいへんなものだ。短い一生、後悔なく駆け抜けていきたいものだ。
神龍が出たら? 不老不死を願うに決まってるだろ(それはそれだ)。
くる度★★★☆☆
一巻が出たばかりのフレッシュ枠だ。
拠点防衛ファンタジーというジャンルが漫画では珍しく感じる。どこかゲーム感覚の薫る作品である。読んでいてイメージしたのは、農場経営要素のあるタワーディフェンスのような何かだ。楽しそうなゲームシステム。
異剣と呼ばれる適合者に絶大な力を与える剣が無数に出回ってますよ、という設定が軸になっているが、酒場経営やらギャグやら未来予知やら人情ドラマと、作者のやりたいことはたくさんあるようだ。今後どの方向に話が転がっていくのかは作者のプランニング次第だが、一巻時点では扱いに困っているような気配はなく、安心して読んでいられる。
おばかでまっすぐなキャラクターが多く、特に主人公グループの面々は嫌味がなく好印象である。キッズにもオススメだ。こういったキャラクターたちをのびのびと描けることは、この作者の優れた才能だと思う。
正直くるかどうかはまだまだ未知数のところもあるが、読者に素直に愛されるタイプの作品になってくれることを期待しつつ、一票入れておきたい。もし「きて」くれたら俺も人に目利きマウント取れるしひとつ頼むよ。
今回は以上としたい。