人類滅亡とかカタストロフィとか好きだから
ポストアポカリプスが大好きだ。
あらゆる作品群の中でもっとも心躍るジャンル。それがポスアポ。
よってそういう作品を好んで読んできたし、人に薦めて激しく鬱陶しがられてきた。なので今では人に薦めることはまったくしなくなった。私だけが知っていればいいことだ。私のポスアポをね。でもこれはネット原稿なんだし別にいいよね。垂れ流します。
ジャンルについて詳しいことは各自調べてもらうとして、個人的に外せないポスアポ絞り込み条件を書いておこう。
・復興やめよ?
興醒めだよ?
強固な社会秩序が作劇上邪魔だから世界を滅ぼしたのに、即座に復興されても困りますよ。
結末で復興するのは良しとしても、序盤から上向きムードを出さないで欲しい。
なんならそのまま滅びてくれても一向に構わないのよ。
・危機感もとう?
終末世界は危険であって欲しい。
そこを生きる主人公には名サバイバーであって欲しい。ちょっと油断をすると即ムクロ。それが終末観光の醍醐味だと思うので。
ただスローライフ系ポスアポというのもあるので、そのあたりは住み分けしてくれていいから。それはそれでいいものだから。
危険な生物や暴漢が出るのでもいいし、食料調達に苦労するのもまた楽しい。つらいだろうし死ぬかもしれないが、きっと素敵な思い出になる(生き残れば)。
・リソース管理しよ?
飲食物や薬は言うに及ばずだが、弾丸管理の概念も重視されるべき。
秩序なき世界に銃は不可欠なものだ。そして時として銃本体より重要なものが弾薬だ。
昔、ゾンビゲームをよく遊んでいたが、弾丸管理がとにかく楽しかった。ゾンビを全部倒していくと弾が不足する。どの敵を倒し、どの敵をスルーするか。そういうのを考えていると幸せになれた。弾撃ちまくりのゾンビゲームも悪いわけじゃないが、それはまた別の楽しみだと思うのだ。ポスアポでは弾が不足していた方がだんぜん良い。残り少ない弾を大事に大事に使ったり、死体から弾を回収したりして欲しい。ロックンローラーのアヤトラ、ヒューマンガス様が良い手本を示してくださっている。見習おう。
・人類は99%までOK
99%まで死に絶えてくれていい。推奨ですらある。
人間は多すぎるとすぐ地球の支配者面して秩序を作りはじめる。いったい何のために核ミサイルのスイッチを押したと思っているのか、よく考えてもらいたい。
1%未満の生存者が細々と暮らしているくらいがちょうどいい。
生活に余裕なく、生きることへの不安で暗い顔をしていて欲しい。復興も許されず、世界は危険で、仲間は少ないまま。なんと可哀相な。そんな人々をサバイバーな俺がクールに助けてあげたい。そのために99%までは良しとする(下手な転生小説よりたちが悪い思想)。
書き出してみると、むしろゲームの題材として向いた分野であると思う。実際、有名な作品が数多くあり、今なお増えている。ゲーム業界が羨ましい。『fallout』シリーズの大ヒットが大きいのではないかと思われる。
小説でも年に数冊は、じっくりたっぷり、豚足をしゃぶり尽くすが如く終末感を味わいたいものである。なんなら自分で書いてもいい。
電子書籍版ないかもと思ったらやっぱりなかった。もー。
小松左京という豪腕SF作家が書いた『復活の日』という作品がまずあって、これもまたすごい小説でモノ書き志望の若者が読むと「豪腕すぎんだろ……」と落ち込むことができる大著なのだが、その悪ふざけ版とも言える筒井康隆の怪作。
ポスアポには
「滅亡するまで」
「滅亡直後」
「滅亡してかなりの時間が経過」
という時間別の3パターンがあると思うが、本書は「滅亡するまで」を描いた作品だ。
どういった出来事が原因で人類が滅びるのかが、筒井康隆らしいドタバタ喜劇めいた筆致で描かれる。滅亡への坂道を転げ落ちながらも、どこか滑稽で、下品で、不道徳。とてもではないが教育に良い内容ではない。だから多感な中高生くらいで読めると人格をねじ曲げることができて、たいへんおすすめです。
えーこれも電子化されてないのー? 電子書籍ィ!
ということで、実本を買いましょう。映画化の話でも出れば、その時にはきっと電子化されるだろうけども。
上の分類で「滅亡してかなりの時間が経過」グループの作品である。そしておそらくこのグループの帝王。
この作品世界では、時間が経ちすぎて地球の自転すら止まってます。おいおい、すごすぎてイメージできないよ。植物は地球を覆って月にまで到達してるし、飛んだり歩いたり捕食するしでやりたい放題。わたくしは知性化キノコのアイデアがオキニよ。
作品を構成する要素がことごとく想像を絶することになっているこの本、後の創作者に与えた影響は計り知れないほど大きく、それが本作品を単なる傑作以上の存在にしている。だからこれ読んでるとたまにマウント取れますよ。性格悪い人におすすめ。
今回の三冊の中では一番ポスアポっぽいポスアポ作品だと思う。
そして作者は、私にとってまことに相性の良い作家、コーマック・マッカーシーその人。著作のどれを読んでも面白く、美しく、残酷であるという希有な作家なのだ。
大好きな作家が大好きなジャンルの作品を書いたわけで、そりゃねえ、もうねえ、YESって感じです。
なんかで滅びた世界(理由はどうでもいい)を、父と息子が旅をしている。探索したり干からびた林檎をかじったり危険な敵から逃げ隠れたり、親子は理想的な終末を過ごしている。ちっとも羨ましくないのだが、こういうのが大好物だ。この世界では『fallout』さながら、食糧不足から人食いが横行している。殺すと肉がすぐ腐るので、人食いたちは長期保存のために生きたまま人を拘束している。おぞましく、おそろしい世界だ。もう完璧だ。
父は銃を持っているが弾丸は残り少ない。人と出会えば警戒するし、何者も信じない。セリフをカッコでくくらないドライな文体が効いていて、読んでるとひりついてくる。現代人にはひりつきが必要なんだよ、下手なビタミンなんかよりもな。でも大丈夫。この本を読めば、ひりつけますよ。
あまりに好きな本なので、もう四度か五度も読み返している。この本は私にとってポスアポ理想型のひとつだ。全てが好みに合致している。なかなか出会えるものじゃない。読む度に染みる(シミルボン)。
今回は電子化されていない本ばかりでちょっと困ってしまったけど、勘弁してくださいよ。今日紹介したどれかが、あなたにも染みるといいのだが。
それでは皆さん、良い終末を。