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70年代のストラトの特徴と値段が上がらない理由

Posted on 2012/10/152017/08/06

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現在でこそストラトキャスターはスタンダードな設計のギターとして不動の地位を築いていますが、過去には売り上げが芳しくない時代もあり、常に栄光のギターに君臨していたわけではありませんでした。
もしジミヘンがストラトを使っていなければ、70年代は更にストラトの売り上げは落ちていたでしょう。ラージヘッドで貼りメイプル仕様のストラトの値段が上がるのは、ギターとしての機能ではなくジミヘンの影響なのです。
他にも57年のメイプルネック、アルダーボディーで黒のヴィンテージストラトの値段が高いのはこの仕様のギターをエリック・クラプトンが使用していたからです。
ギターという楽器は同じ名前でも毎年微妙にスペックが変わり、改善もあれば改悪もあり、ワインのヴィンテージのように貴重な年というものが存在します。

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昔も今もギターが売れる要因はその品質というより、スターが使っているかどうかです。実際に楽器店で仕事をしていた知り合いの話では、「ジョンフルシアンテが使用!」と書くとエフェクターでもピックでも弦でも跳ぶように売れたそうです。
つまり、その品質で商品を判断出来る本当の耳を持っている人はそう多くは無いので、何らかのお墨付きが必要なんです。
それが、ギターの場合は誰々が使っていたという実績だったりします。
90年代はESPやフェルナンデスもV系ブームと連動して沢山アーティストモデルを出していて、今よりも勢いがありました。

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ヴィンテージギター市場でも70年代のストラトの値段が上がらないのは幾つかの要因が考えられます。

・重すぎるホワイトアッシュボディー
・三点止めのネックジョイント
・人気があった60年代のストラトとは角やボディー裏のコンターのシェイプが違い、太い
・塗装がラッカーではなくポリ
・ローパワーでクリアーなピックアップ
・ラージヘッド
・ダイキャストの一体型ブリッジ

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指板はラウンドです。

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ネックの調整はブレットトラスロッドで行います。

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チューニングキーはFマークの入った独特のもの。70年代当時はこれがちゃちく感じられ、交換するのが流行していたようです。

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ストリングガイドは1,2弦と3,4弦の2つがあります。

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ピックアップセレクターは76年後半から徐々に5点になりハーフトーンが扱えるようになりました。
逆に50,60年代のストラトではハーフトーンはわざとPUセレクターを中間ポジションで止めないと出せませんでした。

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ポールピースはフラット。

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ネックの仕込み角度を変えるマイクロティルト機構がついているのが70年代ストラトの特徴です。

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ボディー裏のスプリングまわりは昔から普遍的です。

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このあたりが70年代のストラトの特徴なのですが、人気がある50年代、60年代とは音質的な違いがあるものの、何かが劣っているとすればネックジョイントと塗料くらいでしょうか。
それ以外のスペックの差は品質というより単なる個性であり、好みの問題だと思われます。
実際アッシュは60年代のアルダーより価格が高いです。

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僕は父親から引き継いだ77年のストラトを使っているのですが、これがまた異様にフレットがすり減っていて、あるときに何でこんなにフレットが平らなのか聞いてみた所、僕が生まれるよりも前に「裸のラリーズ」のギタリストに何度か貸していた時期があったそうで、戻ってきたらこんなにすり減っていたらしいのです。
いつかyoutubeとかにどんな弾きかたをしてギターが痛んだのかを確認できる映像なんかがアップされたりするんでしょうかね。ユーズドではないのですが、いろいろな歴史をくぐり抜けてきたギターのようです。

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さて、この70年代後期のストラトと50年代、60年代のスペックのストラトの優劣をつけることは非常に難しいです。
しかし、音色のバリエーションとしては重要です。特に、ハーフトーンがクリアで80年代的なクリーントーンでのカッティングは60年代のファットなストラトや50年代の枯れたストラトよりも濁りが無く、「ハイファイ」といった印象の音色を作り出すことができます。(と言ってもギターという楽器自体が音響的にかなりローファイですが)
そういった意味ではこの年代のストラトにこだわる人は絶対いると思うんです。しかし、今でも定価くらいで買えます。

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そして、このギターも改造出来る箇所は改造しています。
トレモロスプリングはraw vintageに変え、配線材はクロスワイヤーです。配線自体もデヴィッド・ギルモアのようにフロントとリアのミックストーンが出せるように、センタートーンのポットをスイッチポットに変えて、ピックガードもアルミアノダイズドピックガードに変えています。ピックアップはそのまま。
ブリッジはユニット丸ごとフェンダーUSAのスティール製のものに交換しています。
ある意味で、トラディショナルなストラトと70年代のストラトの中間的なスペックになっています。

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話は脱線しましたが、結局のところ、ギターの値段が上がらない理由はこの年代のストラトをバリバリ使用しているミュージシャンが極端に少ないからだと思います。
僕が知る限りでも70年代後期のストラトを大々的に使用しているギタリストはU2のエッジくらいです。
有名なギタリストがとりあげない限り、どんなに品質が高くてもギターの価値はなかなか上がらないんです。
FenderとVanzandtの違いはそのあたりではないでしょうか。
質という面で見ればVanzandtはむしろ今のFender以上のギターを作り出していると思います。

それでも人々がFenderを手にする理由は、「何を使うのか」ではなく「誰が使ったのか」という尺度で、ものごとを判断してしまうからではないでしょうか。それは現代人の心の問題でもあるはずです。

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1000年以上に渡る西洋芸術音楽の歴史を総括し、ピアノという楽器が生まれるはるか昔に忘れ去られた中世の音楽理論、20世紀後半以降の情報処理技術などをメタレベルで融合させ、ピアノという楽器を拡張するような電子音響処理を施し、プログラミング技術を駆使して楽曲を生成することで、生身の人間の作曲家の思考やピアニズムとは異なる角度から音楽を捉えなおし、新たなピアノ前奏曲集の可能性を模索した12曲。

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これは21世紀ならではのピアノ前奏曲集だ。しかしこれがピアノの音なのか?不思議だ。

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過去1000年にも及ぶ音楽の実験と洗練の歴史を織り込みながら、まるで、まだ見ぬ人工生命が自発的にピアノと戯れているかのような楽曲群。これは最先端の電子音響でも現代音楽でもない。ピアノという楽器がもつ新しいユートピアのかたちだ。その優艶さに、またひとつ音楽の未来が楽しみになった。

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プリペアド・ピアノは、ピアノの弦の間に異物を挟み込みピアノという楽器固有の音色を異化したものだが、この松本の言う、ピアノ以外の「楽器」は一切使用していない演奏による、12の前奏曲は、いわばコンピュータ・プログラムによってプリペアドされたピアノによる演奏とも言い得るだろうか。それぞれがコンピュータの異なる処理によって拡張されたコンポジションおよび楽器、そして演奏者による新たなピアニズムを模索しているようだ。それは自動筆記的でもあり、また、映像的な喚起力を内包してもいる。

國崎晋(サウンド&レコーディング・マガジン編集人)

とても複雑な構造から成るピアノは、もっとも完成された楽器として広く知られている。松本はそんな楽器の王様にあたかも初めて接するような態度で臨み、鍵盤を弾くという本来の奏法だけでなく、弦をフィードバックさせたり筐体をたたいたり、どんなアプローチをすればどんな音が出るのかを、ひとつひとつ丁寧に確かめていったのだろう。その結果獲得した幾多の響きを増幅するための作曲技法、音響処理を徹底的に考え抜いて作られたのがこの12の楽曲だ。従来のピアノの枠にとどまらない12の新しい楽器が、それぞれの特性に合わせ極限まで洗練された演奏方法によって奏でられていくさまは、まさに息をのむほど優美なものである。

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松本昭彦

アーティスト/作曲家/プログラマー。東京藝術大学大学院修了。

アルゴリズム作曲を武器にピアノ曲からベースミュージックまで生成音楽を展開する。
アートの社会実装を掲げ、大手レーベルにてインスタレーション制作や、企業の研究部門のための開発、教育プロジェクトRESONANCEや学習エンタメAMCJを主催、雑誌PROSOUNDにアートとテクノロジーに関する連載を行うなど多岐にわたる活動を行う。

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Akihiko Matsumoto (松本昭彦)

松本昭彦(まつもと・あきひこ)。音楽家・プログラマー。

東京藝術大学大学院にて修士号を取得後、東京大学工学部研究員を経てアーティストとして活動。

2016年アルゴリズム作曲や電子音響処理技術を駆使した最先端のピアノ曲集となる1stアルバム 「Preludes for Piano Book1」をリリース。

自作のほか坂本龍一+高谷史郎, 大友良英, 渋谷慶一郎, evala, 池上高志, 藤本隆行, やくし まるえつこなど様々なアーティストの美術、メディアアート作品の展示にMax/MSPプログラマーとして関わる。

また、大学、学会等で専門分野であるアルゴリズムと作曲に関する講義、講演を行うほか、先駆的クリエイティブのワークショッププロジェクトであるRESONANCEを主宰し音や芸術に関する教育活動も積極的に行なっている。

技術者としても大学、放送局、自動車メーカーの研究機関のためのプログラム開発も行い、雑誌PROSOUNDにて音とテクノロジー、芸術に関する連載を持つなど近年は幅広い創作活動を行なっている。
http://akihikomatsumoto.com/

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