イスラム諸国と欧米で深まる溝 聖典めぐる抗議デモ、外交問題に発展
産経ニュース / 2023年7月22日 20時49分
スウェーデンでイスラム教の聖典コーランを巡る抗議デモが相次ぎ、イスラム諸国との関係が悪化している。7月中旬にはイラク政府が国内に駐在するスウェーデン大使の国外退去処分を発表し、外交問題に発展した。欧米はデモの行為に懸念を示しつつも、表現の自由は守られるべきだという立場で、イスラム圏との溝が深まっている。
中東の衛星テレビ局アルジャジーラ(電子版)などによると、イラクの首都バグダッドのスウェーデン大使館に7月20日未明、数百人が押し入り、建物に放火する事件が起きた。
スウェーデンの首都ストックホルムではこの日、イラク出身の難民男性らによってコーランを燃やすデモが予定されていた。
イラク政府も、「コーランを燃やす事態が起きたら断交せざるを得ない」とスウェーデン側に警告する声明を出すとともに、駐在するスウェーデン大使に国外退去を求めた。
一方、ストックホルムでは20日、イラク出身の難民男性らによるデモが予定通りに実施され、ロイター通信によると、男性らはコーランとみられる書物を蹴ったり破いたりした。男性らは燃やす行為には及ばなかったが、翌21日にもバグダッドで抗議集会が開かれたほか、イランの首都テヘランでも同日、スウェーデン大使館前に市民らが集結。「コーランは譲れない一線だ」と書かれたプラカードなどを掲げた。
スウェーデン政府は対応に苦慮している。警察は、治安を不安定化させるとしてコーランを燃やすデモの申請をたびたび却下したものの、司法当局が表現の自由は憲法に関わる問題として警察の判断を覆した。政府は事態の沈静化に向け法律の修正も検討している。
ストックホルムのデモを主導した難民男性は6月下旬、コーランに火を放ち、イラクのほかエジプト、サウジアラビアなどのイスラム諸国が反発していた。
トルコのエルドアン大統領は当時、「イスラム教徒の価値を侮辱することは表現の自由とは別問題だ」とし、デモを容認し続ければ、スウェーデンが目指す北大西洋条約機構(NATO)加盟で「トルコの支持は得られない」と警告した。エルドアン氏は7月中旬のNATO首脳会議の直前、スウェーデンの加盟を承認する意向を示したが、国会での批准手続きは今秋に始まる見通しだ。
表現の自由と宗教を巡っては2020年、フランスの週刊紙に掲載されたイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を巡り、表現の自由の立場から同紙を擁護したマクロン政権への抗議集会が中東などのイスラム圏で広がったことがある。
難民男性がコーランに火を放った6月下旬のデモを受け、国連人権理事会(47理事国)は7月中旬、宗教に起因する憎悪行為を非難する決議を賛成多数で採択した。ただ、イスラム諸国を含む28カ国が賛成したものの、表現の自由を重視する英米独仏など12カ国が反対し、立場の違いが浮き彫りになっている。(カイロ 佐藤貴生)
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