pixivは2023年6月13日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴
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とあるスタジオホールのステージ上。俺はゆっくりと歩き出す。
アク「…ようやく、この時が来たんだ…」
俺は俺に背を向け立つ、その男にゆっくり歩み寄る。すると、あちらも気づいたようで、振り返る。
?「おや、キミは…」
屈託なく笑うそいつの笑顔が癪に触り、溢れんばかりの殺意の感情をなんとか抑え込む。
アク「お前が……、カミキ、ヒカルだな…」
カミ「おやおや、初めましてかな?けど、この僕に、、実の父親に対して随分な言い草じゃないか」
アク「俺は…お前を父親だと思った事はない…!」
カミ「ふふ、ずいぶん嫌われてるみたいだ。僕が育児放棄をしてしまった事を怒っているのかな?」
いつまでも不気味な笑顔を絶やす事なく、それでも感情に抑揚のない言葉を吐き続けるカミキ。
アク「惚けているのか、それとも本気で言っているのか…!」
その顔が、声が、容姿が、カミキヒカルの存在そのものが、アクアの神経を逆撫でした。
アク「12年前、あるストーカーにアイを殺された…その4年前に、とある産婦人科医が何者かによって殺害された……分かったのは、どちらも同一人物に殺された事だった…!」
カミ「それが?一体何の話を?」
アク「12年前、アイが殺された後、そのストーカーは自殺を図った。ニュースで報道されたのは、何の能力も持ち合わせていない、ただの一般学生だった」
出来る限り、感情の昂りを抑えつつ、カミキに対面しながら、アクアは続けた。
アク「何故、あんな田舎の産婦人科に偽名まで使って入院していたアイを特定できた…?何故、引っ越したばかりのマンションの場所をただの一般人が特定できた…!」
アクアの言葉に、今まで不気味に微笑んでいたカミキの片眉が上がる。
カミ「…星野アクアくん、君は何を言っているんだい?16年前と言えば、君が生まれた年じゃないか」
アク「俺は…僕は、雨宮吾郎…16年前、アイを受け持った産婦人科医だ…」
カミ「……なんだって?」
その言葉を聞くと同時に、カミキから笑顔が無くなる。
アク「16年前、アイが死んでからずっと、僕はあのストーカーには共犯がいた事を疑っていた。そして今日この日、お前の尻尾を掴んだ…!ずっと待ち侘びていた…お前をこの手で殺す事を…」
カミ「…くく、くはは、、あーっはっはっは!!!」
アク「…?」
先ほどまで狼狽える様子を見せていたカミキは一変して、急に笑い出した。広いホールに2人しかいないこの空間に、その笑い声は不気味に響き渡っている。
カミ「いやぁ、驚いたよ。まさか、そのお医者様が僕とアイの子に生まれ変わっていたなんて…転生?とでも呼べばいいのかな?」
アク「…さっきから、気安くアイの名前を呼ぶなっ!!」
カミ「自分の女の名前を呼んで何が悪い?」
アク「…っ!!」
その言葉が起爆剤となり、アクアはカミキへと詰め寄り、殴りかかる。
しかし…それは迂闊な行動だった…
……グサッ…
アク「…ぐっ…!」
カミ「君の演技を見て、もっと賢い子なのかなと思っていたけど、どうやらまだまだ子どもだったみたいだ。ふふ、僕が何の準備もなしに、こんなところにのこのこやってくると思うかい?」
気づくとアクアの腹部にはナイフが突き刺さっていた。勢いもあってか、だいぶ深く入っているのが分かる。
カミ「…まぁ、銃刀法違反ぐらいにはなるかもしれないけど、僕は僕の身を守るために仕方なく刺しちゃった、いわゆる正当防衛って奴だよ…くく…」
アク「…き…さま…」
カミ「君も、星野瑠美衣も、僕とアイに似て綺麗な容姿に育った。瑠美衣はアイに、君は僕に、、さすが僕たちの子どもだ」
アク「だま…れ…!」
カミ「君は、こんな事をしなければもっと大物になっていただろう。そんな君の、僕の息子の、価値ある君の命を奪ってしまう僕の命に、重みを感じる…」
そう呟き、カミキはまた屈託なく不気味な笑顔をアクアに向けた。
カミ「さて、僕も暇じゃないからね。そろそろ行くとしよう。大丈夫、ちゃんと自首するさ。そうすれば、罪は軽くなるからね…。それじゃ、さようなら。星野愛久愛海くん」
そう言い残して、踵を返すカミキ。
…そう、ヤツは油断していた。
何の準備もなしにこんな所には来ないだと?…生憎、お互い様なんだよ…
プツッ…!
カミ「ん?」
アク「俺は…もともと、裏方志望だ……機材の配置を…イジることには…長けてんだよっ…!!」
アクアの言葉に、カミキは一瞬虚をつかれた。次の瞬間、カミキの頭上から、無数の機材が落ちてくる。
カミ「なっ…!!」
アク「死…ね…!カミキヒカル…!!」
完全に油断していたカミキに、その機材たちから逃れる術なんかあるわけもなく、あっという間に機材の下敷きになった。
アク「…ぐっ…終わっ…た、のか…?」
腹部のナイフが思ったよりも深く入り込んでいる。内臓がやられている可能性も高い。前世医者をやっていたアクアにとって、それがどんなに危険なのか、嫌でも分かる。
…だが、意外と気持ちは高揚としていた。それは、終わった安堵からなのか、今まで気を張り詰めていた緊張の糸が切れたからなのか…
アク「…はは、やっと、、俺も…終われる……アイ……」
…復讐は終わった。思えばずっと、12年間”最推し”の復讐にばかり囚われていた……。ようやく、終わりを迎えられる…
もう思い残す事は何も……
バタンっ!!
アク「…?」
ホールの扉が開かれる音が聞こえ、そっちに顔を向ける。
アク「…!」
その目線の先には、よく見知った面々があった。
ルビ・かな・あか「「「アクア(くん)!!!」」」
入ってきたのは、ルビー、かな、あかねの3人だ。
アク「なん…で…」
この3人はここにはいない筈だった。自分からあえて遠ざけて、安全圏に置いておこうとずっと思っていたのだから。
そんなアクアの心情とは裏腹に、3人はアクアの状態を目視するとすぐさま駆け寄ってきた。
その惨状を見て、3人とも顔を真っ青にしている。
ルビ「アク…ア…ねぇ…なんでっ!!」
かな「きゅ…救急車っ!今すぐ呼ばないとっ!!」
あか「っ…!」
ルビーはアクアの前でへたり込み、かなはすぐにスマホを取り出して119番へと連絡する。
そんな中で、あかねは静かにアクアへと話しかける。
あか「アクアくん…どうして…?」
アク「あか…ね」
あか「…一緒に…殺してあげるって言ったじゃない…」
アク「…」
あかねに顔を向けると、苦虫を潰したような顔で、泣いていた。他の2人も同じだった。
アク「…そんな顔…させたかったわけじゃ…ないんだがな…」
あか「っ…だったらっ、なんでっ!!」
あかねの声がホール全体にこだました。それはまるで、悲鳴にも似ていた。
アク「…俺は…もう、助からない、だろうな…」
ルビ・かな・あか「「「!?」」」
アク「…思った以上に、傷が深い……血もたくさん出てる…救急車じゃ…間に合わない…」
かな「そんなっ…」
ルビ「…ねぇ、嘘でしょ…?嘘だって言ってよ…!お兄ちゃん…!」
久しぶりにルビーから”お兄ちゃん”と呼ばれ、懐かしい気持ちになった。アイの件から、ずっと疎遠だったのだから。
アク「嘘は…嫌いだったんじゃ…ない、のか…?」
ルビ「…っ…許すから…今だけは許してあげるからっ…!!お願いよ…!」
そう言って、泣きながらしがみついてくるルビー。そんなルビーの頭を、力を振り絞って、撫でる。
ルビ「…っ!」
アク「…ごめんな…。こんな酷い兄貴で…アイの件も…ごめん…」
ルビ「…全部、全部許すからぁっ…!!だからっ…うっ…うぅ…」
アク「…あか…ね…」
アクアは、ルビーの頭を撫でるのをやめ、あかねを呼ぶ。
あか「…なに、アクアくん…」
呼ばれてから、あかねもアクアへと近づき、アクアの頭元に膝をついた。
アク「…今まで、ごめん…な…」
あか「…ううん…いいんだよ…」
アク「…あかねを…守りたかったのは…嘘じゃない…」
あか「…っ!うんっ…知ってる…よ…」
アク「だから…巻き込むべきじゃ…なかった…ごめん…」
あか「…そんな事ない…よ…アクアくん…私は…大丈夫…だから、、だから、」
そこまで言って、あかねは俯いて嗚咽を漏らす。
アク「…有馬」
かな「…アクア…」
最後にかなの名を呼んだ。もう既に、かなの顔は涙でくしゃくしゃになっている。
アク「お前と、いた時の俺は…唯一、自分を飾らなくて、良かった…」
かな「…っ!」
アク「気楽で…良かったんだ…お前は、特別、、だったんだ」
かな「…なんで、何で今更そんな事言うのよっ!!…なんでっ…」
アク「……泣かせて、ごめん…」
かな「謝るぐらいなら…ちゃんと生きてよっ…!お願いだから…お願いだからぁ…!」
もう限界が近い、意識が朦朧とする。俺は、3人に言える事を言った…。謝罪ばかりで、ほんとに不甲斐ないと自嘲気味に心の中で笑ってしまう。言いたい事、沢山あったが、どうにも言えそうになかった。
アク「最期…だから……俺は、3人のことを…大事に…想って…た…ありが…とう」
こんな俺を、兄と呼んでくれて…こんな俺と一緒にいてくれて…こんな俺を、、好きになってくれて……
アク「…あい…し…てる…これは…うそ…じゃない…」
かつてアイが、俺とルビーにかけてくれた言葉を、俺は3人にかけた。出来るだけ、笑顔を向けた。アイが死んでから、心の底から笑えなくなっていた俺が、今ちゃんと笑えているだろうか……
…俺にはもう、3人の顔が見えなかった……
あの後、救急隊が到着したが、アクアは助からなかった。ナイフは、腹部大動脈を貫通しており、出血も多量、内臓の損傷も酷かったと、あとで知った。
アクアの死は、瞬く間に広がり、ニュースで2週間ほど流れていたが、ひと月もすれば世間から忘れ去られていった。
そんな中、アクアの部屋の引き出しから、色んな人に宛てた遺書を見つけた。
有馬かな
これを見てる頃には俺は死んでるのかもしれない。
お前は俺の特別だった。有馬といる時だけは、自分を偽らずにいれた。お前の言葉で俺は、怒りも傷つきも、そして喜びもしたんだ…なんとなく好意的に見られていると気づいてた…だけど俺自身は、それがどんな気持ちだったかは分からなかった…。もっと長く生きていれば分かったのかもな…。だけど俺には、あいつに復讐する事が全てだった…アイの仇を討つことが、存在意義だった…。こんな酷い男なんか忘れて…幸せになってくれ…。お前は、そこらのアイドルより可愛いと思った事も信頼して妹を任せたのも嘘じゃない…妹を、よろしく頼んだぞ。
黒川あかね
前文同文
あかねは、初めてできた恋人だった。最初は、利用する事が目的でできた繋がりに過ぎなかった。だけど、お前が俺の元の姿に気づいて、寄り添おうとしてくれた時、俺もお前に寄り添いたいと思った。あかねを守りたいと思った。2回目のキスは俺の気持ちだった…だから、最後には遠ざけてたんだ…俺はお前を死なせたくなかったから…。俺はお前の女優としての才能を評価してる。だから、もう自殺なんて考えず、自信持って生きてくれ…。俺がお前を助けた事に、打算なんてなかったよ。ただ、幸せになって欲しい、そう願ってる。
星野瑠美衣
前文同文
お前には謝らないといけない事が、沢山ある。まず、アイの事をリークしてすまなかったと思ってる。有馬を助ける為とはいえ、後先を考えていなかった。軽率だった。ルビーが誰よりもアイを慕っていたのにな。そして、こんな兄貴でごめんな…。俺はお前を、この復讐劇に巻き込みたくなかった…。アイが死んで、お前までいなくなったらって思ったら、俺はもう俺じゃいられなくなると思ったから…。たとえ嫌われても、避けられても、お前が生きてさえいればそれでいいと願っていた。出来る事なら、一緒に生きて、お前の事を見守りたかった…。本当にすまなかった。そして、ありがとう。こんな俺でも”お兄ちゃん”と慕ってくれて、嬉しかった。ルビーの事、妹として、家族として、愛してる。この言葉に嘘はない。俺はアイのところにはいけそうにないが、お前の事を、地獄からでも見守ってるからな。
読んでる途中から、ずっと頬を伝う何かがあった。それは読み終えてからもずっと、止めどなく溢れてきた。
3人にとって、星野アクアという存在はとてつもなく大きな存在であった。
アクアの死は、その3人の精神を擦り減らすには十分過ぎた。
……翌日、また新しいニュースが報道された。それは、1人の役者と、1人の女優、そして1人のアイドルの訃報ニュースだった……
To be continue
久しぶりの投稿になります。が、先にさせて下さい。かなりヘビーな内容になっています。というか、終始シリアスで、甘さも何もないです。
ただ、普段ハピエン厨の私にしては、なんでこんなもん書いたのか、胸が痛いです。
現在巷で話題の推しの子、今までずっと避けててアニメしか完全には視聴してないし、原作を見てないので所々辻褄が合わないところがあるかもしれませんが、ご了承下さい。
なんというか、アニメ1話から相当重い話で何度も視聴やめようかなと思いましたが、それでも書きたくなって一応アニメは全部目を通しました。今のところ、星野アイと黒川あかねが大好きなキャラですが、有馬かなも好きです。ただ、アニメ1話でのあのトラウマはマジで脳が破壊されそうになりました。
ちなみに、原作は見てないですが色んなところでネタバレが流れてくるので大体把握はしてますが、黒川あかね死亡フラグ立ちすぎてません?これ、ガチであかねが死ぬような事になったら、流石に無理だぞって思うレベルでしんどくなりそう。有馬かなの曇らせもしんどいし、ルビーとの兄妹喧嘩もほんとにしんどいのに勘弁して欲しい…。
だから二次創作でぐらい幸せになって欲しいと思って書いてみたら、こんなにヘビーになった…。うん、ヤッベどうしよう…
うーん、実はこれ序章のつもりで書いているので何分割か区分分けして続きを書こうと思ってます。内容も大体決まってますが、私のやる気の問題ですね……。ただ、私は基本ハピエン厨で、みんなが幸せじゃないとしんどいので、なるべく暗くならないようにしていきたいと思います。しんどいのは最初だけって事で、今回は許して下さい。