知床観光船沈没、遺族「人災」と訴える 運輸安全委が意見聴取会
毎日新聞 / 2023年7月26日 19時14分
2022年4月に北海道・知床半島沖で乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没した事故で、国の運輸安全委員会は26日、事故の報告書案について学識経験者らの見解を聞く「意見聴取会」を開いた。乗客の遺族も非公開で意見を述べ「人が止めることができた事故であり、人災だ。運航を許可されるべきではなかった」と訴えた。
意見聴取会は社会的関心の高い事故を対象に開かれ、今回で9回目。JR福知山線脱線事故の調査以来、16年ぶりで、船舶事故では初めて。安全委は意見聴取会での意見を参考に最終的な調査報告をまとめる。
東京都内で開かれ、5人の公述人のうち1人は遺族で、本人の希望により非公開だったが、終了後に安全委が概要を発表した。それによると、遺族は「経験の浅い船長に任せ、連絡手段もなく出航した。なぜ船長はやめますと言えなかったのか。パワハラ的な環境ではなかったのか」と運航会社の体質について疑問を呈した。また、国の姿勢についても「事故の前に行われた北海道運輸局の審査・監査などでしっかり調査しなかったので、このような会社の運航を止められなかった」と批判した。
学識者「人災に近い」「事故は防げた」
他の4人は学識経験者で、東京大大学院の中尾政之教授は「失敗学」の見地から意見を述べ、事故当日に海が荒れると同業者に忠告されながら出航した船長らの判断について「無知で過信があった」と指摘。「船に通信設備があれば航行中に指示を受けて避難港に入れた。事故は人災に近い」と断じた。再発防止策として同業者による互助組織をつくり信頼できる安全管理者を置くことを提言した。
船員養成に長年関わってきた東京海洋大の矢吹英雄名誉教授は、安全統括管理者と運航管理者を兼ねていた運航会社の桂田精一社長(60)が資格を満たさず、事務所への常駐義務を果たしていなかった点を問題視し「この海域の危険性を十分認識していれば事故は防げた」と述べた。
意見聴取会をオンライン視聴した北海道の乗客家族の男性は「公述人の話は分かりやすかった上、事故ではなく『事件』と言い、人災が強調された」と肯定的に受け止めた。一方、運航会社の責任にもっと触れてほしかったといい「矢吹氏が話したように、事故原因と考えられる全てを洗い出し、悪天候になると予測できた状況で船を出した会社の責任も深掘りしてほしい」と求めた。
事故は22年4月23日に発生し、乗客乗員20人が死亡し、6人が行方不明のままだ。第1管区海上保安本部が業務上過失致死容疑で捜査している。【内橋寿明、山田豊】
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