2023.07.26
# 年金

中国にマイナンバーと年金情報が「大量流出」していた…厚労省が隠蔽し続ける「不祥事」の全容

週刊現代 プロフィール

なぜ氏名だけを切り出したのか

約10日間にわたった衆参両院での集中審議で、水島理事長は終始落ち着いた調子で答えている。

「中国の業者の監査をIBMとともに行っております。その結果でございますが、委託をしておりました内容は、いわゆる切り出しました氏名の入力でございました。加えまして、調査をいたしました結果、個人情報等の流出のおそれはないというふうに判断しております」(参議院予算委員会・3月20日)

厚労大臣官房の高橋俊之年金管理審議官もこう断言した。

「SAY企画は、入力業務の再委託を行っておりました。しかし委託した業務の中には、マイナンバーでございますとか住所でございますとか、さまざまな所得額でございますとか、そういうものは一切含んでいないものでございます」(衆議院総務委員会・3月22日)

彼らがこの日までに練り上げていたシナリオは、SAY企画が中国に再委託していたのは「申告書」そのものではなく、そこから切り出した「氏名とフリガナ」だけであり、年金受給者の個人情報もマイナンバーも流出していないというものだった。

ではなぜ、氏名だけを切り出したのか。

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この質問を待っていた水島理事長は、滔々と述べている。

「SAY企画に確認をいたしましたところ、氏名の入力については、OCR(光学式文字読み取り装置)の読み取り精度が低いことから、これを補完するため再委託を実施したということであります。

そのため、入力作業に必要となる申告書の漢字氏名及び仮名氏名部分を、トリミングと言っておりますが、切り取った画像を再委託事業者に提供していたということでございます」(衆議院厚生労働委員会・3月28日)

「申告書」は先にも触れたように、「税額計算プログラム」を作成するための基礎資料である。

契約では、SAY企画が雇用したオペレーターが、記載された個人情報やマイナンバーを手打ちで入力し、プログラム化することになっていた。

ところがSAY企画は、オペレーターではなく、OCRを使って記載内容を読み取らせ、プログラムに流し込んでいた。

ただ、「氏名とフリガナ」だけがOCRで正確に読み取れなかったので、この部分だけを切り取って、中国に送り、向こうで入力させていたというのが、水島理事長の説明だ。

これが事実なら、個人情報は流出していないことになる。

しかし水島理事長の、この国会答弁は完全な虚偽である。なぜ筆者は、この答弁が完全な虚偽だと断言できるのか。その真相を、『 「年金の申告書」をスキャンして中国に「丸投げ」…?日本年金機構がひた隠す「ヤバすぎる個人情報流出」の実態とトップが取材で語った「虚飾のストーリー」』で明かそう。

「週刊現代」2023年7月1・8日合併号よ

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