メールの中身は、まさかの…
「最近中国のデータ入力業界では大騒ぎになっております。
『平成30年分 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書』の大量の個人情報が中国のネットで入力されています。普通の人でも自由に見られています。一画面に受給者氏名、生年月日、電話番号、個人番号(マイナンバー)、配偶者氏名、生年月日、個人番号、配偶者の年間所得の見積額等の情報が自由に見られます。
誰が担当しているかはわかりませんが、国民の大事な個人情報を流出し、自由に見られても良いものでしょうか? ネットからハードコピーを取りましたが、アップできませんでした。残念です。
対策が必要と思います。
宜しくお願い致します」
この23分後、通報者は「念のため、(アップできなかった)ハードコピーの情報を送りいたします(原文ママ)」と前書きしたのち、年金受給者の氏名、マイナンバーなど15項目にわたる個人情報を書き写した2通目のメールを送信している。
ここで通報者が言っている「平成30年分 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」というのは、年金の受給者が日本年金機構に提出した確定申告書類の一種である。
'17年に大幅な税制改正があったため、日本年金機構では翌年の厚生年金から所得税などを源泉徴収する「税額計算プログラム」を作り直す必要があった。そこで、厚生年金の受給者約3506万人のうち、課税が免除されている障害年金や遺族年金などの受給者を除いた約770万人にプログラムの作成に欠かせない「扶養親族等申告書」を送付し、指定のとおり記入したうえ返送するよう求めていた。
返送された「申告書」は、機構が業務委託契約を結んだSAY企画がプログラムへの入力をおこなうはずだった。ところがその業務を、中国のデータ処理会社に再委託していたのである(再委託の件数は、約501万件とされる)。
SAY企画による中国への再委託が発覚後、一連の処理に従事していた機構の梅林芳生・給付業務調整室長は、わたしに言った。
「1月4日の仕事はじめの日に、このメールのことを知って、たいへんな事態だというのですぐに動き出した」
そう、「通報メール」に記載されていたのは、すべて実在する年金受給者の正しい個人情報であった。