ずぶぬれの二人の世界

2000年代のJポップとカラオケに載らないボカロが好きです。

「センチメンタル・ゲイ・ブルース」とベトナム戦争

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 昨日、カラオケで、ブレッド&バターの「センチメンタルフレンド」を歌おうとして、間違えて、「センチメンタル・ゲイ・ブルース」を入れてしまった。

 取り消そうとすると、よく、見ると、「吾亦紅」を作曲した杉本真人先生の作品なので、ガイドメロディ頼りに歌ってみると、これが、とても秀逸な歌詞だった。

(最首としみつ作詩)

 

 歌の主人公は、ベトナム戦争の後に街娼になった男性である。

 主人公は、女性に絶望し、場末の酒場で慣れぬ酒にむせていたところを、黒人のアメリカ兵に介抱され、安ホテルで抱かれ、そのうち、男どうしで暮らしてつかのま幸せだったが、

 アメリカ兵さんは、ある日酒を飲んで暴れ、涙を流す。

 「その日」とは何か、はっきりは書いてないが、戦争の前線への徴集か、戦争が人間を追い詰め、人々の絆を断ち切るものだということが暗示されます。

 ジョーは、このあと、どうなったのでしょうか。戦線から無事に生還できたのだろうか。

 主人公は、お酒にむせるくらいだから、当時は若く、まだ少年だったかも知れない。

「小ちゃな窓のガラス越しに路面電車の青い火花が散った」という歌詞で、小さな窓が、主人公の生きる世界の小ささ、男性同士の火花のような快楽、誰でも乗れる電車の火花は、後に男娼となる主人公の未来を暗示するようです。

 主人公は、女に絶望し、こうした世界に入ったということで、一本気な性格の人か。

 歌の世界の場所は分からないが、路面電車があるならある程度都会で、東京なら、1970年以前だと思われる。

 エレキバイオリンが、歪んだメロディを奏でる間奏をはさみ、歌の後半は、伴奏もやや穏やかになり、主人公は、ベトナム戦争の後(1975年以後)、男娼になった。

 「はっか煙草」は80年代以降はメンソール、と言っていた記憶があるので、歌の世界では、80年代になる前か。

 アメリカ兵の「いい人」との別れを経て、街娼になったと想像される。

 お化粧も慣れて、そのへんの女性より綺麗になって、3時には風呂屋で、すね毛をそり、身だしなみも整える。

「あたしに弱味があるなら」、あえて弱味があるとするなら、ということなので、主人公は、女性にも負けない綺麗な人、もともと美少年だったのだろう。

 今ではすっかりプロの街娼になり、たくましくも生きて、同情など要らないであろう主人公は、いったい、誰に、自分の半生を語っているのか。

 それは、4番の歌詞の、「あたしに声をかけたのは、今夜はあんたが最初の男」である客に向かって語っているのだ。

 今夜、最初に声をかけた男性と、主人公とベッドを共にして、熱い時間を過ごし、(払うものも払い)

 そのあと、主人公に興味を持った男性客は、主人公にいろいろ問いかけ、主人公は最初の彼氏であるジョーのことや、すねげを剃るのが日課と冗談めかして自分の半生を語り終えて、「一本もらうわね、はっか煙草。つまらぬ話を終わらすために」と、「私の人生なんてつまらぬ話」と謙遜しつつ、煙草に火をつける。

 この歌詞があるために、主人公が誰にどんな状況で身の上話をしたのか、明確になります。

 煙草ちょうだい、と言えるくらい、仲良くなれて、ただのお客さん以上になるかも、と期待させる雰囲気。 

 主人公の男娼さんは、お客さんが、真剣に身の上話を聞いてくれて、自分に関心を持ってくれたからこそ、(あっちの相性も良かったか)「昔話は、これくらいにして。あんたは、普通の男なの?私のいい人になる男なの?」と期待をこめて問いかける。

 主人公は、今も、「あたしのいい人」を探していて、その深い孤独に胸が痛いが、しかし、過去は過去として、現実の世界をたくましく生きる人間像がここにある。

 杉本先生は、実に情感たっぷりに、色気と艶のある声で歌う。この人の歌は、どれもリアルで、生身の人間を表現している。杉本先生のライブを聴きたいと思いました。 

 ちなみに、GIという言葉は、アメリカ兵を意味する俗語で、軍用支給品を意味するそうです。

 兵士たちは、ただの消耗品の駒だった、人間の命は軽い時代でした。

 また、ベトナム戦争は、アメリカ兵だけではなく、ベトナム国民にも深い傷を残しました。

 Uフレットにコードが載ってないので、自分で適当にコードをつけた。

 5カポでAm、ならば、Dm基準にすればカポなしで、やれる。Gmは、1から3弦の3フレットを押さえたら、バレーコード使わずに済んだ。

 音感の似てるA#は、ぶっ飛ばしてもいいかな。

 

 

あたしが男を知ったのは

女を知った日から まだ3日目の夜

場末の酒場で むせていた あたしを介抱してくれた GIジョー

熱い嵐が身体を走り 気づいたところは安ホテル

小ちゃな窓ガラス越しに 路面電車の青い火花が散った

 

あたしが男を愛したのは

女に絶望した日から まだ間もない頃

男と男が部屋を借りて それからしばらくは幸せだった

ある晩ジョーは大酒飲んで 手当たり次第に あたりをぶち壊す

その日が来たのね あたしのいい人に 真っ黒な頬に 大粒の涙

 

あたしが街に立ったのは

ベトナムが終わってから しばらく過ぎた頃

寂しさまぎらす化粧もいつか ルージュをひく手つきも 女を越えた

あたしに弱みがあるなら それは 化粧を浮かせるひげの剃りあと

毎日3時になると 風呂場に行って すね毛を剃るのが その日のはじまり

 

あたしに声をかけたのは

今夜はあんたが最初の男

一本もらうわね ハッカたばこ つまらぬ話を終わらすために

それよりあんたは普通の男 それともあたしのいい人なの

今夜もたたずむ街角に 夜風がしみるよ

センチメンタル・ゲイ・ブルース

今夜もたたずむ街角に 夜風がしみるよ

センチメンタル・ゲイ・ブルース