そもそも流行には乗りたくないというあまのじゃくな気持がある。ファッションにおいても、「へえ、こんなものが今年は流行るの?」と横目で眺め、「誰も彼もが同じような格好をしちゃってさ」と批判的に睨み続けるうち、ちょっとだけ自分も試してみようと思う頃には、すっかり流行が廃れているという有り様だ。コロナもしかりか……。
この三年間、一度もかかることなく乗り越えてきた。行動を控えていたわけではない。むしろ、おおいに動き回っていたほうだろう。緊急事態宣言期間は別にして、テレビや雑誌の仕事はリモートを含めてなんとか継続してきた。
丹念な手指消毒や検温、マスク着用など、それなりの備えに怠りはなかったと思うが、極端に神経質になった覚えはない。かかるときはかかる。いや、たしか第四波が到来したあたりから、まあ、いずれ自分もかかるのだろうなあと、半ば諦めていた。
にもかかわらず、一度も陽性反応が出ることなく、ついでに、喉が痛んだり頭痛がしたりといった症状すら表れることなく、むしろコロナ以前より健康だった。
「よく私、かからないで済んでいるよね。こんなに人と会ってるのに」
仲間内でよく話したものだ。自分は案外、免疫力が高い人間だったのかと、かすかに自負していたきらいもある。なのに……。
自らがかかってみて、思い知ったことはたくさんある。もちろん個人差があるし、年齢や体質や性格(つらいと思うレベルなど)によっても違うだろう。けれど、はっきり自覚したのは、「コロナはコロナ。インフルエンザや風ではない。舐めたらいかんぜよ」ということだ。