なぜ「ビッグモーター」で不正が起きたのか レオパレスや大東建託との共通点スピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2023年07月19日 10時26分 公開
[窪田順生ITmedia]

問題が起きた背景

 では、なぜこんな問題が起きたのか。特別調査委員会が同社に指摘した原因としては、「不合理な目標設定」「経営陣に盲従し、付度する歪な企業風土」「現場の声を拾い上げようとする意識の欠如」などが挙げられている。

 しかし、報道対策アドバイザーとして、この手の不正も山ほど見てきた立場で言わせていただくと、これはなにもビッグモーターに限った話ではない。「団塊ジュニア企業」が、この10年あまりこぞってハマっている「定番の失敗パターン」だ。

特別調査委員会からの調査報告書について(出典:ビッグモーターのWebサイト)

 「団塊ジュニア? なんだよそれ?」と思った方のために説明すると、団塊ジュニア企業とは第二次ベビーブームによる需要増が大きな要因で急成長して、全国展開を達成した大企業を指す筆者の造語だ。

 分かりやすいところでは、1973年創業のセブン-イレブン・ジャパン、同年に創業したレオパレス、翌74年創業の大東建託などがこれにあたる。76年創業のビッグモーターは人間で言えば、団塊ジュニア世代(71~74年)ではないが、団塊ジュニアを授かったファミリーが国内で爆発的に増えて、その恩恵を得た会社のことを「団塊ジュニア企業」と呼ばせていただく。

1973年創業のセブン-イレブン・ジャパンも団塊ジュニア企業の沼に……(提供:ゲッティイメージズ)

 そんな団塊ジュニア企業は、近年よく問題を起こしている。業種やビジネスモデルは違えど、共通の「負けパターン」があるからだ。

 人口急増の波にのって全国展開を達成し、巨大企業に成長する。しかし、人口減少時代に転じてもなかなか過去のビジネスモデルから脱却できず、「拡大路線」に固執してしまう。そのため、現場が帳尻合わせ的に不正に手を染めてしまったり、過重労働が強いられてしまったりという問題が発生するのだ。

 セブン-イレブンの場合、人口増時代の成長エンジンだった、同一地域内に店舗を集中出店させる「ドミナント戦略」に固執してしまった。結果、競合だけではなくセブン同士のカニバリを招き、バイト不足や現場の過重労働を引き起こし、時短営業をのぞむオーナーがFC相手に訴訟を起こすなど、いわゆる「24時間営業問題」が起きた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

続きを読むには、コメントの利用規約に同意し「アイティメディアID」および「ITmedia ビジネスオンライン通信」の登録が必要です

スピン経済の歩き方 連載一覧

次回の掲載をメールで受け取る

<div style="clear:both;margin:15px 0 0 0;padding:10px;">「情報操作(スピンコントロール)」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。<br><br>普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いや緻密な戦略があるのか。本連載では、さまざまな「スピン」に迫る。<div style="background:#eee;padding:5px 10px;font-size:small;margin:5px 0px 0px 0px;">※こちらのページには2015年7月以降の記事を掲載しております。<br>それより前に掲載された記事にをご覧になりたい方は「 <a href="http://bizmakoto.jp/makoto/series/1843/" style="color:#369;">2015年6月以前の記事一覧</a> 」をご覧ください。</div></div>

SDGs特集

- PR -