2023.07.21

【鈴木エイト】山上徹也の凶行に対する私の責任の取り方

調査報道を抹殺しようとする勢力に抗い続ける
鈴木 エイト

私の責任の取り方

想定されるのは私への非難だ。すでにSNS上では「鈴木エイトの書いたいい加減な記事を山上が読んで安倍さんが殺された」「鈴木エイトが山上を教唆した」などの悪質なデマが流布されている。

私は自分の書いてきた記事に自信を持っている。私の記事が事件に影響を与えたならば、私は私なりのやり方で責任を取ろうと思っている。それは、これまでと同様に読者へ判断を任せるように、裁判員へ適切な情報を提供することだ。安部晋三元首相と統一教会との関係が被告人の勘違いや思い込みではなく確かなファクトによって立証できること、その上で山上が採った行動について適切な量刑判断が下されるべきだと思うからだ。彼の減刑のためではない。真実を基に量刑判断がなされる必要があると思うからだ。

今回の書籍では、山上被告が外部へアプローチをした形跡についても検証した。統一教会などカルト被害の相談機関や同じような立場の教団のセカンドジェネレーション、どこかに彼が繋がることができていたらと考えざるを得ないからだ。

また、彼が事件前にどこまでの絵を描いていたかも考察している。統一教会の被害者が金銭的にも精神的にも追い込まれてやむにやまれず起こした事件なのか、それともすべてを計算し尽くして社会のありようを変容させようとしたのか。一方的に決めつけず、大きな振れ幅のなかで捉えていく必要があると思ったからだ。

それは同じような事件が起こることを防ぐためであり、大切な人を亡くして悲嘆に暮れる人をこれ以上生まないために必要なプロセスだと感じるからである。

鈴木エイト氏 写真/加藤慶

まだ十分に山上徹也被告本人を意思疎通ができているわけはない。だが、彼との事件前のやり取りを公開してもよいか弁護人を通して尋ねた際に「エイトさんの記事や本を読んでいるので、どんな書き方をする人かは解っている。エイトさんの思うように書いてもらって構わない」との旨の回答を得ている。一定の信頼を持ってくれているとは思う。引き続き、山上徹也被告の内面に迫っていきたいと思う。弁護士だった山上の伯父とも事件後何度も自宅を訪ねて話を聞いてきた。カルト被害に遭った親族を助けてきた伯父の動向や見解についても記した。

今後も公判が始まるまでに各所へ取材を重ね、事件の背景を追っていきたいと思っている。