2023.07.21

【鈴木エイト】山上徹也の凶行に対する私の責任の取り方

調査報道を抹殺しようとする勢力に抗い続ける

歴代最長政権を率いた元首相が白昼、衆人環視のもとに銃殺されるという衝撃の事件から1年が経つ。事件によって浮かび上がった旧統一教会と自民党とのいびつな癒着は、解明されたとはとても言えない。そして犯人・山上徹也の真意も、いまだに謎に包まれたままである。長年にわたり旧統一教会問題を取材してきた鈴木エイト氏は『「山上徹也」とは何者だったのか』を刊行し、前編に引き続き、山上の実像と彼を利用しようとする勢力について説き明かす。

なぜこんな事件が起きてしまったのか

東京芝の増上寺では11時から一周忌の法要が執り行われ、岸田文雄首相や菅義偉前首相が参列した。留魂碑にも多くの人が献花に訪れたという。

改めて一年前の事件について思いを馳せる。この一年、私が常に考えてきたのは、なぜこのような事件が起こってしまったのかということだった。私が思うのは要人警護上の不備ではない。それは別個に議論がなされるべきものだ。私が事件現場で改めて思ったのは、どこかの時点でここまでの事件に発展する前にとめるタイミングはなかったのかということだった。

私は7月21日発刊の新書『「山上徹也」とは何者だったのか』のなかで、彼の事件前の足跡を追った。彼に身に起こった統一教会による家庭崩壊、そこから日本でもっともな著名な現役の政治家を銃撃するまでに何があったのか。なぜ時間は起こってしまったのか?どうしたら止められたのか。どうしたらカルトの被害者が犯罪者となってしまう前に止められたのか。

山上徹也が外部にSOSを発していたのではないか? そのことを確かめたかった。

幸いにして山上徹也本人とは間接的にやり取りができている。弁護人を通して手紙を渡してもらい質問を投げかけ、可能な範囲でその答えを受け取ってきた。

そして私と彼には事件の前から接点があった。彼のネット上の痕跡は2012年。他者のブログのコメント欄に「やや日読者」とのハンドルネームで書き込みをしており、そのなかで私のことにも触れている。「やや日」とは私が主筆を務めるニュースサイト『やや日刊カルト新聞』のことだ。もっとも古い彼のネットの痕跡に私のことが書かれていることは示唆的だ。そして事件の9日前、山上から来ていたダイレクトメッセージの内容が新たな波紋を呼んだ。