大型ロードスポーツを綺麗に
巧みに乗りこなして駆ける女
性を見た。
暫くピタリと付けてみた。
実に上手い。
背は高くない。むしろ低身長。
だが、上体は突っ張らずに背骨
を脱力させてごく自然に曲げ、
そして下半身でマシンをホール
ドしてぐいぐいと旋回する。
特にS字での快速切り返しなど
は芸術的だった。身体の使い方
が。
かなり乗る。完全に手足のよう
にマシンを操縦していた。
停めて降りた時に話をすると、
ニコニコとした笑顔で二輪が好
きで堪らないといった感じだっ
た。「良い笑顔」とはこの人の
ような人の笑顔の事をいうのだ
な、と感じた。
世の中、できる人の技法を観る
のは、観ているだけでとても
幸福感が生まれる。
女性ライダーはお尻突き出しの
背中そっくり返りや背骨に板
入れたような硬直直立、腕は
伸ばして突っ張って顎を出して
上半身ガチガチという人たちが
かなり多い。というかほぼそれ。
それは1980年代にも多かった
が、男ではそれはいなかった。
だが、現代では、運動身体機能
を無視する人が何故か多く、男
でもガチガチの地蔵のような塊
載りが多い。背骨伸ばし、腕突
っ張り、顎出しの三点セット。
下半身では乗らないので、足は
ステップに載せるだけで、ホール
ド操作などしない。
足の爪先はだらしなく外を向い
て、ドテッと足をステップに載
せている。ロードスポーツモデル
でも。
まともに運転できる道理が無い。
理由は、それはその種目の適切
な身体用法とは無縁だから。
野球の打者がバットを持つ時に
両手を離して「俺はこれが好き
だからこうやる。誰にも迷惑か
けてないからいいだろう。俺が
楽しんでるのだから」と言うよ
うなもの。
技法的なその道の道理さえ無視
する。
何やろうが適法ならば自由だ。
だが、正直いって、観ていても
一つも美しくもないし、感銘も
受けないし、心の潤いは訪れな
い。得るものも無い。つまり、
向上とは無縁の存在。
素晴らしいものを観たほうが、
遥かに心が豊かになる。
映画でも、駄作よりは名作を観
たい。
乗れてる人は、男女は関係なく
ストリートロードでも観ていて
気持ちいい。
かつて30年以上前はやたら乗れ
てる人は多かったが、近年は稀
だ。
尚更、できる人のその走りは輝
いている。