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学食で難民の家庭料理を提供し大成功
難民問題の理解促進に一歩前進!

陳 昭媛(ジン・ソウォン)(右)/法学部3年
植木 奈津子(うえき・なつこ)(左)/法学部4年

 紛争、迫害、人権侵害などにより国内外への移動を強いられている人を難民と呼ぶ。その数は全世界で5,000万人を超え、日本でも昨年、過去最高となる66カ国3,260人が難民認定申請を行った。

 難民が身近な存在であることを知ってほしい──。そんな願いを込めて難民支援に取り組むボランティア団体が、平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)所属の「難民交流プロジェクト」だ。メンバーと、企画ごとに募るボランティアスタッフで各種のイベントを運営する。これまで手掛けてきたのは100人規模の難民が交流する「難民フットサル大会」、古着を集めて世界各地の難民に届ける、ユニクロとのコラボ企画「衣料品回収」、難民の生活を擬似体験できる「模擬難民キャンプ」、難民ドキュメンタリー映画の上映会など。中でも反響が大きかったのは、今年1月に開催した「Meal for Refugee」(以下M4R)だ。

サトイモやブロッコリーをさっぱりとした塩味のだしで煮込んだミャンマーの家庭料理。癖がなく日本人の口にも合う

 「難民の郷土料理を学食で提供し、売り上げの一部をNPO法人『難民支援協会』に寄付するという試みです。私たちの課題は、より多くの人に難民問題を知ってもらうこと。M4Rであれば、自然な形で難民問題への関心を引き出せるのではないかと思いました」と語るのは、前代表、陳昭媛さん。

 提供するメニューは、アゼルバイジャンの家庭料理「アゼリ風トマト肉じゃが」と、ミャンマーの少数民族の伝統料理「カチン風サトイモのさっぱり煮込み」の二つ。他大学のM4Rで好評だったことや、なじみの深い食材で容易に作れる手軽さが決め手になった。

 メンバーは数カ月前から準備を始め、イベントのポスターやPOP広告を自ら制作。「食堂は一般の方も利用します。学内での広報活動はもちろん、Facebookを活用し、外部への発信にも力を入れました」と2代前の代表、植木奈津子さんは振り返る。

 必死の広報活動が実り、料理は初日から大きな反響を呼んだ。「売り切れて食べられなかった」という声が続々と届き、急きょ、提供期間を1週間延長。最終的には560食が売れた。

 「食後のアンケートに『自分の食事が難民の支援につながってうれしい』というポジティブな意見がたくさんあった。それが一番心に残っています」。そう言って二人は顔をほころばせる。

 これまでの支援活動では多くの壁にぶつかってきた。例えば「難民フットサル大会」では、難民のプライバシーの問題から開催場所の公開など大々的な広報は実現できなかった。だからこそ、難民の文化に触れる機会をつくり、多くの人の関心を引き出せたことに大きな喜びを感じている。

 「他人の問題であっても当事者意識を持って関われば自分も成長する」。試行錯誤を重ねた難民交流プロジェクトで陳さんは大切な気付きを得た。

 一方、植木さんが実感したのは「何事も“知らない”“興味がない”が一番の問題。問題意識を持って周りを見渡す姿勢は誰にも必要だと思う」。

 植木さんは来春卒業し、陳さんは再来年母国に戻る。将来、別々の道を歩んでいくが、「学生時代と違った形で難民支援を続けたい」と二人は誓う。

難民フットサル大会の記念撮影。毎年、数十人がボランティアスタッフとして活動する

衣料品回収では1週間で6,000着を超える古着が集まった

衣料品回収とセットで実施される模擬難民キャンプ

(提供:早稲田ウィークリー

陳 昭媛(ジン・ソウォン)(右)/法学部3年

韓国・ソウル市出身。豊文女子高等学校卒業。高校時代から戦争被害者を対象としたボランティアを経験。現在も、複数のボランティア団体で活動。趣味はダンス。

植木 奈津子(うえき・なつこ)(左)/法学部4年

宮城県出身。県立宮城第一高等学校卒業。中学生から10年間体操選手として活躍。大学1年次に競技中のけがで入院した際、ボランティア活動に関心を持つ。