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無宗教の日本人が「スピリチュアル」にはまる謎 2000年以降の江原啓之ブームは何だったのか

東洋経済オンライン / 2023年7月21日 6時50分

実際、事件後は宗教団体の活動は目立たなくなりましたが、無宗教の宗教心に近い「スピリチュアル」や「癒し」が台頭したのですから。

――現在は統一教会問題を機に宗教への批判が高まっています。オウム事件後のように、数年したらスピリチュアル・ブームが再燃するのでしょうか。

つねにニーズはあると思います。2000年代にテレビで心霊やスピリチュアルが急に復活したのも、やはりニーズがあったからです。今はテレビからYouTubeなどへ媒体がシフトし、江原氏ほどでなくても、捉えにくい形で特定のYouTuberの人気が出ていく可能性があります。

客は消費者であり生産者でもある

――2005年にスタートした「癒しフェア」というイベントでは、占いから美容商品まで、癒し関連のセミナーや商品の販売者が出展しています。2023年4月に大阪で開催された癒しフェアでは、2日間で7626人(オンライン参加含む)が来場し、大盛況でした。

「癒し」の人気が出たのはスピリチュアル・ブームより前の1997年頃からです。トラウマ(心の傷)という言葉が認知され、傷の癒しが注目されるようになりました。

それ以前は、癒しは自発的な治癒力の活性化を意味していました。ところが、その意味を離れて、リラックス効果をうたった商品のキャッチフレーズとして使われるようになりました。

商品販売を主とする出展者が多い癒しフェアなどのイベントも、このような時代の流れと一致しています。癒しフェアでは、出展するセミナー会社や癒し関連商品の販売者自身も、空き時間にはほかの販売店を回るなど客のように行動しています。

逆に今回は出展者ではない客が、普段は占いやヒーリングなどを実践している場合もあります。癒し関連の民間資格が得られるセミナーを受けると、「消費者であり生産者でもある」という状態にすぐになれるのです。

――癒しやスピリチュアル、ヒーリングなどさまざまな言葉が使われているのはなぜでしょうか。

ネット上では「スピリチュアル」が虚偽や詐欺、信じやすさというイメージで批判されるため、当事者がスピリチュアルという言葉を使うのを避けています。特に彼らは宗教と同一視されることを恐れます。

耳に心地よいスローガン的な言葉が登場しても、世間に流布すると「宗教」と同様ではないかとたたかれて廃れていき、別の言葉に取って代わられる。その結果、さまざまなニュアンスの異なる言葉が乱立することになります。

政党と関わりたくないという人が多い

———陰謀論や反ワクチンに関わる主張をする人たち、例えば参政党の支持者と、スピリチュアル信奉者は重なりますか。

私の調査では、一般の人に比べれば、スピリチュアリティに関心のある層で陰謀論に引きつけられる人が多いのはたしかです。ただ、参政党などの支持者は、スピリチュアリティに関心がある人の中でもごく一部のマイノリティです。

スピリチュアリティ関心層は個人主義的で、組織的運動を嫌います。参政党は食と健康と環境を守るオーガニック政党という面だけでなく、天皇中心の排外主義という右派の面が強いです。

スピリチュアリティには反原発など左派的な面もあり、概して無党派層が多い。陰謀論を唱えるカルトや参政党などに関わりたくないという人は多いと思います。

井艸 恵美:東洋経済 記者

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