インドネシア「日本の中古電車輸入禁止」の衝撃 世論は導入望むが「政治的駆け引き」で国産化へ
東洋経済オンライン / 2023年7月19日 6時30分
極めつきは、委員会メンバーから飛び出した「鉄道はレバラン(断食月後の帰省期間)の時期にしか混雑しないのだから急いで車両を入れる必要がない」との発言で、ライブ配信のチャット欄はブーイングの嵐となった。現場を見ていない、経歴だけの非常識議員、庶民生活を知らない上級国民……と炎上状態となり、ライブ配信終了後は中古車両輸入反対を声高に叫んでいたアンドレ・ロシアデ議員を中心にSNS上で標的となり、場外バトルの様相を呈した。
また、以前から中古車両の輸入に関しては批判的なメディアも一定数存在していたが、今回に限っては、ほぼすべてのメディアが緊急輸入は避けて通れないという論調で一致したことも特筆される。中には、乗客を再び屋根の上に乗せる気かという評論家のコメントを掲載するなど、言論統制がまかり通るインドネシアでは珍しく、ほとんどのメディアが国産にこだわる政府を批判する方向に動き、連日報じた。オンライン署名サイト「Change.org」にも中古車両輸入許可を求めるキャンペーンが立ち上がり、市民運動にまで発展した。
反対派議員も支持に転じたが…
結局、アンドレ議員は世論に押され、人生で初めて朝ラッシュ時の電車に乗って、自宅近くの最寄り駅から国会へ登庁した。殺人的ラッシュを経験した同氏はこれまでの主張を翻し、輸入支持派に転じた。これを受けて、衆議院も中古車両の緊急輸入を事実上認めたも同然となった。
それでもなお工業省は頑なに反対の立場を崩さず、最終判断は金融監督庁の調査結果とルフット海事投資調整大臣に委ねられることになった。金融監督庁の担当者はわざわざ日本に渡って現車確認まで行っており、評価は良好だったと伝えられている。
誰の目から見ても、もはや背に腹は代えられない状態であったにもかかわらず、ここまで議論が長引いたのは、2024年に控える大統領選の影響がある。現職のジョコウィ大統領は任期満了のため再選はないが、引き続き政界に影響力を行使するというのがもっぱらの見方である。よって、今の時期に荒波を立てたくないというのが、議員、閣僚らの本心である。自ら先んじて中古車両輸入を唱えられる状況ではない。
そんな中でも国営企業省が中古車輸入推進の立場を表明したのは、次期副大統領候補にも名前が挙がる実業家、エリック・トヒル国営企業大臣の影響力によるところが大きい。当初は4月には出ると言われていた決定が延びに延びて6月に持ち越されるまでの間、政府内での駆け引きが続いたであろうことは想像にかたくない。
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