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インドネシア「日本の中古電車輸入禁止」の衝撃 世論は導入望むが「政治的駆け引き」で国産化へ

東洋経済オンライン / 2023年7月19日 6時30分

しかし、そんな国営企業省と運輸省に真っ向から反対したのが工業省である。工業製品の国産化を推奨するジョコウィ大統領令に逆らうものであるとして、中古車両輸入論者を国賊とでも言わんばかりに推進派を牽制した。議論は平行線をたどり、ついに業を煮やしたルフット海事投資調整大臣が2023年3月初めに考えを示した。ジョコウィ大統領のガードマンとも言われる同大臣の言動を関係者は固唾を飲んで見守っていたが、なんとこの時、同大臣は金融監督庁による監査が必要と付け加えたうえで、輸入支持に回った。

国会での議論に世間の高い関心

これにざわついたのが国会(衆議院)である。貿易、商工業、国営企業に関する予算審議、また監督権等を有する衆議院第6委員会は、ただちに参考人質疑を開き、INKAとKCI、それにKCIの親会社である国鉄KAIの各社長を出頭させた。この様子はYouTubeにてライブ配信され、再生数は1万2000を超えた。第6委員会のライブ配信は通常なら伸びても1000再生程度で、いかに中古車両輸入の是非に世間が注目していたかがわかる。

参考人質疑では、2023年~2024年にかけて最低12編成の中古車両の緊急輸入は避けられない状況であること、またその後の国産車両導入を約束していることをデータを用いて説明するKAI社長、車両製造が2024年には間に合わないことや、新車のほかに既存車両を更新して延命する案などを説明するINKA社長に対し、委員会メンバーはフィリピンやバングラディッシュなど、諸外国への輸出実績もあるのにどうして国内向け車両の製造ができないのかと強い口調で罵り、社会のため、国民のためであるという感情論を展開した。

補足しておくが、INKAの輸出実績はほとんどが客車や貨車で、一部が気動車という程度であり、電車の輸出実績はない。しかし、委員会メンバーに客車と電車の違いなどわかるはずもない。

そんな中、INKA社長は声を詰まらせながらも、電車を製造できる技術はあると回答する一幕も見られた。現状のINKAは独自で電車を設計するまでの能力はなく、寄せ集め部材を組み立てているという状況である。高度な設計技術を要する電車に関しては、KAI、KCIからの評価も極めて低いのが現状で、コーチビルダーの域を脱していない。それは出頭した各社長が一番よくわかっているし、そこさえクリアすれば、国産車両導入になんら障壁はない。それにもかかわらず、製造できると言わせたのは誘導尋問とも言える。

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