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インドネシア「日本の中古電車輸入禁止」の衝撃 世論は導入望むが「政治的駆け引き」で国産化へ

東洋経済オンライン / 2023年7月19日 6時30分

そんな中、いまさらながらKCIへの中古車両輸入の是非を問う議論が再燃したのは、車両の不足が深刻化していたからである。

国産車導入は遅れ、既存車両は老朽化

本来であれば、中古車両の輸入特例が終了した後は、INKA製の国産車両が順次投入されているはずだった。だが、コロナ禍などの影響も受けて国産車両の導入は早くても2024年に遅れることになった。一方、2022年半ば以降は社会のコロナ禍からの平常化が急速に進み、同年末時点でKCIの利用者数はコロナ前の8割程度に戻った。加えて、この間にブカシ線ジャティネガラ―ブカシ間の複々線化(長距離列車と通勤電車の分離)が完成、また沿線宅地化に伴うスルポン線末端部の利用者増加による大幅な増発が必要となっていた。

さらに、保有車両のうち、2010年代初頭に導入されていたチョッパ制御車両のトラブルが続発するようになっており、交換部品も枯渇していることから廃車せざるをえない状況に陥っていた。2020年以降、車両数がまったく増えないどころか減っている中で、必要車両数が飛躍的に増加していたわけだ。

現在はラッシュ時の減便という最悪の事態を避けるため、いったん12両編成に伸ばした車両を8両に減車して編成数を確保する対応が続いており、もっとも輸送量の大きいボゴール線では、5分ごとの運行が維持されている反面、ほとんどが8両編成となってしまい、混雑がコロナ禍前よりも悪化している。体感的には2012年時点と同程度くらいに後退しており、ピーク時は180%近い乗車率で、各駅で積み残しが発生している。もはや、2024年の国産車両導入を待つどころではなく、輸送力確保のためには2023年に中古車両を暫定輸入することは回避できない状況だった。

そこで、KCIは2022年半ばから中古車両輸入許可申請の準備と根回しを始めていた。2025年までに最大29本の調達の意向を示し、2022年末にようやくKCIを管轄する国営企業省が導入支持の立場を表明した。これに呼応して、どっちつかずだった運輸省も黙認という形で、事実上の支持に回った。

最低限の数の中古車両を導入し、もともと8両編成だったチョッパ制御車両の更新(VVVF制御化)という案も持ち上がったが、現状の設備上、これ以上の増発が難しい中での輸送改善は12両編成への統一以外に術はなく、更新工事は中古車導入以上のコストとなること、そしてリードタイムも長いことから、チョッパ制御車の置き換えも含めて、中古車両12両編成29本の導入がKCIの本命だった。

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