「顧客の自宅で2人きりに…」高齢者を食い物にして1億円着服、三菱UFJ信託銀行・元女性職員の悪質手口
週刊女性PRIME / 2023年7月19日 5時0分
担当する顧客の預金口座から現金500万円をだまし取ったとして、警視庁中野署は7月3日、三菱UFJ信託銀行の元職員・吉田美江容疑者(60)を詐欺の疑いで逮捕した。
「信託銀行の発表によると、吉田容疑者は2002年から東京・吉祥寺支店で勤務しており、2013年からは中野支店勤務に。2007年5月から2020年12月にわたって、顧客から不正に入手した払戻請求書を利用して着服していた。被害に遭った顧客は14人で、その被害額は9750万円にのぼります。着服した金は、生活費として使っていたようです」(全国紙社会部記者)
この事件発覚の経緯について、同信託銀行の女性職員は、こんな噂があると話す。
「吉田容疑者の不正発覚と同時期に、中野支店で30代の男性職員も着服していたことが判明したのです。その男性職員は、お客様の対応をする窓口で、堂々と機械から現金を引き出していた。防犯カメラにも男性職員が犯行に及ぶ姿が写っていたそうです。これをきっかけに社内調査が行われ、吉田容疑者の着服も発覚したのだろうと職員の間では囁かれています。私たちも世間に公表される直前に不祥事の詳細を知ったのですが、13年間も行われていた不正が急に発覚するとは思えなくって」
しかし、同銀行の発表では、男性職員の不正発覚は2021年12月。一方、吉田容疑者の不正発覚は、社内調査によって2021年11月に明らかになったとされる。
「男性職員の着服が発覚して調査をしたら、長年にわたって見落としていた不正が発覚したとはさすがに発表できなかったのでは」(同・女性職員)
三菱UFJ信託銀行は吉田容疑者について
事実確認のため、三菱UFJ信託銀行の広報に話を聞いた。
「吉田容疑者の不正は、中野支店で伝票チェックをしていた際に不審な点が見つかったため、店内の防犯カメラを確認すると、吉田容疑者が受領した現金をカバンに入れている姿が写っていた。そこで吉田容疑者に聞き取りをしたら、着服を認めたのです。その不正の社内調査及び公表を行う準備の中で、お客様からの訴えによって男性職員の着服も発覚しました。そのため発覚時期が逆だったということはありません」(広報室担当者)
噂はあくまで噂のよう。同時期に同じ支店から2件の不正が発覚したことで、銀行内でも動揺が広がったのだろう。
男性職員が約2年間で顧客2人の預金口座から着服したのは442万円。その一方、吉田容疑者は13年間にわたって着服した金額は、約1億円と大きな差がある。そんな吉田容疑者の手口とは?
「銀行には、現金をお客様宅にお届けするサービスがあるのですが、吉田容疑者はそのサービスの隙を狙って犯行に及んでいた。お客様からの訴えがなければ、判明する可能性は限りなく低い。だから13年間も続けられたのです。まさか本人もバレるとは思っていなかったと思います」(前出・女性職員、以下同)
銀行員は、大口の顧客相手には、その自宅へと訪問をし、顧客の要望を聞いたり、資産運用の状況を説明したりする。吉田容疑者は、顧客と2人きりになる、その“密室”の機会を利用していたのだ。
ひとり身の高齢者を狙った手口
「私どもがお客様のご自宅を訪問している中で、新たな投資商品を購入いただくときなど、さまざまな書類に記入していただきます。その際、お客様が深く確認をせず“あとは書いておいて”などと言い、書類に金額などを記入せずハンコを押して担当者に渡すことがある。本来、特段の事情がない限り、あってはいけないことなのですが……。お客様の自宅で行われることですから、確認は難しい。吉田容疑者は、そうやって入手した払戻請求書を使い“顧客の依頼で自宅に現金を届けます”と言って、事務員から受け取った現金を懐に入れていた」
とはいえ、自身の資産が減少していれば、すぐにわかりそうなものだが。
「吉田容疑者が主なターゲットとしていたのは、ご高齢のお客様でした。具体的には、死別したなどの理由でご親族がいなかったり、その関係性が希薄だったりするひとり身の高齢者。ひとり身であれば確認する人もいませんし、お客様の中には認知症が進んでいる人も……。調査では、お客様の遠縁の親族に連絡をして確認いただいたところ、吉田容疑者の犯行が発覚した事例もあるようです」
高齢のひとり暮らしともなれば、話し相手が欲しいときもあるだろう。吉田容疑者は、そうした心のスキマに付け込み食い物にしていた。
「定期的に訪問する職員を信頼しきって資産の管理を一任する顧客も当然います。吉田容疑者は、新入社員向けに投資商品の講師をするぐらいの人でしたから、お客様から“減っていないか”と聞かれても、“偽り”の説明をして安心させることは難しくなかったはず。全幅の信頼を置いていたお客様も多かったのでは。今回の事案は、その信頼を利用した悪質な犯行なのです」
こうした吉田容疑者の手口について、前出の広報室の担当者に改めて確認した。
――吉田容疑者はどのように払戻請求書を入手していた?
「吉田容疑者は“手続きに必要な書類である”とお客様に虚偽の説明をして、本来は必要のない払戻請求書を不正に入手していました」
2年間にわたって社内調査が続けられている
――吉田容疑者は、事務員に「お客様に現金をお届けする」と言って、不正に入手した払戻請求書を利用してお金を引き出していた?
「その通りです。現金をお届けするサービスは、運用ルールをより厳しく致しました」
――独り身の高齢者が主な被害者だったのか?
「被害に遭われたお客様の詳細は、お答えを差し控えさせていただきます。ただ、信託銀行という業務の特性から、高齢のお客様とのお取引が多いのは事実です。即座に不正を見抜けなかったことは我々も深く反省し、再発防止策を強化しております」
とのことだが、その再発防止策には、こんな記載が。
《特に配慮が必要なご高齢のお客さまには、お取引内容の定期確認のご案内と合わせ、アフターフォローを担う専担チームを新設します》
2度と同じような不正を許さない監視体制の構築を求めたいところだが、2021年より始まった社内調査はいまだに続いているという。前出の女性職員が話す。
「職員ひとりひとりに確認をしているため時間がかかっています。今、銀行の窓口に立っているのは潔白が証明された職員だけ。私も調査を受けましたが、本当につらかったです。数年前のことを出され“ここで何をしていた”と聞かれるのですが、覚えてなくて……。吉田容疑者と一緒に、お客様宅を訪問したことのあった職員はまっさきに疑われ、そうとう詰められたと聞いています。まるで犯罪者のような扱いの取り調べに嫌気がさして、職員たちは次々と辞めています」
信託銀行は信じて託すと書くけれど、すべてを他人任せにするのは危険だ。あなたの資産は大丈夫か――。
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