異世界にて3
「はっ…ははっ…!やった!やったぞ…!!ついに僕にもチャンスが来たっ!」
思わず笑みが溢れる。
気持ちが高まっておさまらない。踊り出したいくらいの気分だ。
5人から充分な距離をとった
「夢にまで見た異世界転移だ!まさか本当に起こるなんて!神様ありがとうございますだ!」
両手を広げ、空を抱きしめるように仰いだ。
冗談ではなく、そこに女神様がいるのなら抱きしめてキスしてやりたい気分だった。
「ふふっ、しかし初めてでも問題なかったな。完璧に作動してよかったよ僕の
自らの両手をうっとりした表情でみつめる。
「あいつらなにもわかってなかったな。特に御法川のやつなんて相変わらずド低脳過ぎてキレるところだったぜ。転移者って言葉でピンとこないようじゃあいつら早々に死ぬな」
ふふっ、とほくそ笑みながら「まぁ、四方田と嵯峨はちょっともったいなかったかな」と軽い調子で続ける。
沢田石は現代日本に生まれ、アニメや漫画にとっぷり浸かってきたという経験と自らに与えられたもう一つの能力で現状をほとんど正確に理解していた。
この世界がさきほどまでいた世界とは
この世界には「マナ」という様々な力の源となるエネルギーがあり、そのエネルギーを使って生命は「アビリタ」と呼ばれる特殊な能力を行使できる。
沢田石の場合は2つのアビリタを有しており、一つ目が自分の気配を一定時間薄くする《
沢田石はこの
彼はこの能力をいわゆる異世界転生ものでよくある『ステータス』と『鑑定』が一緒になったようなものだと捉えている。
「出来れば攻撃系のスキルが最初にあったらよかったんだがな。2つとも便利な能力だけれどチートってほどじゃない。まぁきっとこの世界にもレベルの概念があるはずだから、経験を積めば自ずと他のアビリタを習得できるだろう」
他の生徒より先んじて状況を把握したこと、そして夢にまで見た異世界転移ができたことにより、沢田石の心は踊っていた。
「どうせモンスターとかいたとしても転移者にとっては雑魚なんだろうし、この世界の人間なんかは相手にもならない設定だろ。まずはゴブリンやラットあたりが定番かな。サクッと倒してレベルをあげよう。もしかしたらレベリング補正がかかってていきなり最強になったりしてな」
くくくっ、と抑えきれない笑みをこぼしながら、周囲を探索する。
いつのまにか元いた草原から薄暗い森の入り口にまで来ていた。
「…いいね。RPGらしくなってきたじゃん。」
不敵な笑みを浮かべながら、沢田石は森の中へと消えていく。