サイド&バック材については以前にも書いていますが、その記事からもう少し踏み込んで確信を持ってローズウッドの種(Dalbergia)については書けるなと思いましたので改めて。
以前の記事はこちら。
ブラジル政府が輸出を規制し始めるまではギターの材として定番だったローズウッド。
音色は硬質でクリアと表現されることが多いですし、実際、一つの面としてそう言えると思います。
しかしブラジリアンローズウッドの最も優れる点は"余韻"や"艶やかさ"というのが個人的見解。
とは言え、ブラジリアンローズウッドが使用されていればそれらの特徴があるかと言えばそういうことはなく、硬質な面だけが出てしまっているギターも珍しくないのが難しいところ。
後述するココボロと並んで"ただ硬い音のギター"がままあるのも事実。
結構、作り手を選ぶ材なのではないかなと個人的には感じています。
より突っ込んだ内容は以前記事にしていますのでそちらを参照してください。
厳密には複数種類あるようですが、基本的には主にパリサンダーと呼ばれる材が楽器用に用いられているよう。
2000年当初はブラジリアンローズウッドと見分けがつきにくいという話もあったり、実際色の濃いそういうのがあったように思いますが、最近は総じて色が薄い材が使われているように思いますし、結構ブラジリアンとは異なる見た目のように感じます。
音は良くも悪くも特徴がないと感じます。
ローズウッド的な鳴りであるのは間違いないのですが、ブラジリアンのような硬質感はないですし、後述するインディアンのような音の甘さみたいなものもなくプレーンという感じ。
ローズウッドの中では耳当たりが柔らかい方向かなという感じがします。
ただ、メーカーによる大量生産のモデルのインディアンローズウッドはややダルな印象を受ける物も少なくないので、そういうので同じメーカー内で比べるとスッキリした音像ではあるとは思います。
よく謳われている"ブラジリアンローズウッドに最も近い音"みたいなのには個人的には首肯しかねます。
とは言え、実を言うとマダガスカルローズウッドの個体で「ブラジリアンローズウッドみたいだな」と感じた物が1本だけ経験上あります。
その1本だけは音の艶やかさ、深みの点でブラジリアンローズウッドの使われた良いギターに近い感覚を受けました。
ですので、他にもそういった物があるでしょうから、材の質であったり料理の仕方でブラジリアンローズウッドっぽい方向に持っていけるポテンシャルはある材とは言えるのかもしれません。
こちらもマダガスカルローズウッド同様ニューハカランダとして扱われていました。
「ブラジリアンローズウッドに近い材は?」って訊かれたならならば、個人的に強いて言うならこのホンジュラスローズウッドを挙げます。
中高音域は近いものがあると思っていて、クリアさ硬質感等、近い特性があるように思います。
近い造りのモデルでブラジリアンローズウッドとこのホンジュラスローズウッドの物を比較した場合にホンジュラスローズの個体の方が好印象だったということも中にはありました。
とは言え、傾向として低音の深みという点でブラジリアンローズウッドに譲るかなという印象はあります。
でもブラジリアンローズウッド仕様のモデルとホンジュラスローズウッド仕様の同モデルを価格も考慮して考えるなら、ホンジュラスローズウッドのほうを選ぶという選択も十分ありなレベルの差とも言えるかなと思っていたりします。
他のローズウッドに比べると硬質感の点で一歩劣るかなというのと音の密度のようなところでも薄いかなという感じがありますが、良く言えば角のない耳当たりのいい優しい音。
結構、質によると言うか選別された物と大衆的(?)な物で幅広い感じがあり、利点としては甘い音と言える点かと思いますが、メーカーが大量に使っている物だと甘いと言うよりダークな音色の場合もすくなくないかと思います。
こちらも過去に記事にしていますので、そちらのほうでより色々と書いています。
先に挙げたローズウッドよりも低音の重厚感が強く、音の発し方が直線的でパワフル。
硬質感も強いので高音も立ちます。中低音もシッカリ感が強い。
この材自体がそういった傾向なのでトップは音にしなやかさと言うか柔軟さのある材を合わせたほうが合うと個人的に思っています。
ココボロとシトカスプルースを合わせた個体はそれなりの本数これまで試していますが、どれも"硬いだけ"な音になってしまっていました。
某大手楽器店でシトカ×ココボロ個体を試奏してる際に店員さんに「ココボロはハカランダに最も近いって仰るお客さん多いですよ」なんて言われたことがありますが、ココボロとハカランダは全く似てないと思います。
しかし、ハカランダにしてもココボロにしても"硬いだけ"な音になってしまっている個体がままあるので、そういう個体同士に限っては似てると言えなくもないかもしれません。
アレルギーが発症しやすいので使わなくなるルシアーさんもいるという材。
音的にも作り手への身体的面においても結構シビアな材と言えるかもしれません。
音色はさっぱりしていると言うかパサパサした印象。
ローズウッドの感じの中に少しマホガニー的なニュアンスを含み、低音側に少し重心が寄ったような感じと言いましょうか。
色味と言うか艶感のある音色のトップ材と合わせたほうが活きる材ではないかと個人的には解釈しています。
ほぼMartinとLowdenで使われているのしか見ません。
個人的にはこの記事を書いている時点では2桁まではいかないけど何本かは経験しています。
総じて印象はいいんですが、音の点でブラジリアンローズウッドより硬い音という印象はありません。
アマゾンローズウッドを使用した個体でこれまで触った物は全体的に印象はいいんですが、まだ掴めた感じはしていません(すみません)。
全体的に艶感であるとか滑らかさみたいなものは感じるように思いますし音の拡がりもあるような感じはします。
低音のドッシリ感、力強さもローズウッドの中でも最も感じます。
自重の影響もあってか音は滑らかでしっとりした印象。
そして伸びやかさという点でも非常に優秀。音が減衰していってからスーッと伸びていく感じ。
同じく低音の強いココボロと比べるとココボロは鋭角と言うか角があるような音なのに対してアフリカンブラックウッドは面で拡がるような感覚でしょうか。
ココボロはハッキリした音なのに対し、こちらは優しい音質。
楽器ですので、材がどうだからって言うのはユーザー側からすると後付けみたいなもので、実際そのギターの音がどうかっていうのが全てなわけではありますが、例えば、好みの音を求めてのカスタムオーダーをするとかであれば、材による傾向というのは各々自身の中に基準があるといいのではないかと思います。「このモデルがもうちょっとこっち寄りの音になればもっと好めるのに」みたいなのを具現化するようなね。
また、それとも重なる点もありますが、ココボロの項で触れましたが、トップ材を選ぶ材というのもあると感じます。相性と言うか。
ルシアーさんへのカスタムオーダーの場合、タップトーンとかを基に同じ材でもマッチングを考慮して組み合わせてくださる場合もありますが、出来合いの物を試すという場合は材傾向とか把握してると好みかもしれないとかそうでないかもしれないみたいなものは触る前からある程度わかるようになるかな、と。
今回の記事は(以前の材に関する記事含め)その辺の参考になればと思いますが、やはり各々で経験することで"この材は好きかもしれない"みたいなご自身の基準を持てると、好みの音のギターに近づきやすくなれるのではないかなと思います。
もちろんローズウッドに限らずの話ですが。

以前の記事はこちら。
目次
▶ブラジリアンローズウッド
▶マダガスカルローズウッド
▶ホンジュラスローズウッド
▶インディアンローズウッド
▶ココボロ
▶グァテマランローズウッド
▶アマゾンローズウッド
▶アフリカンブラックウッド
▶ブラジリアンローズウッド
▶マダガスカルローズウッド
▶ホンジュラスローズウッド
▶インディアンローズウッド
▶ココボロ
▶グァテマランローズウッド
▶アマゾンローズウッド
▶アフリカンブラックウッド
■ブラジリアンローズウッド(ハカランダ)
通称ハカランダ。ブラジル政府が輸出を規制し始めるまではギターの材として定番だったローズウッド。
音色は硬質でクリアと表現されることが多いですし、実際、一つの面としてそう言えると思います。
しかしブラジリアンローズウッドの最も優れる点は"余韻"や"艶やかさ"というのが個人的見解。
とは言え、ブラジリアンローズウッドが使用されていればそれらの特徴があるかと言えばそういうことはなく、硬質な面だけが出てしまっているギターも珍しくないのが難しいところ。
後述するココボロと並んで"ただ硬い音のギター"がままあるのも事実。
結構、作り手を選ぶ材なのではないかなと個人的には感じています。
より突っ込んだ内容は以前記事にしていますのでそちらを参照してください。
■マダガスカルローズウッド
ブラジリアンローズウッドの代替材として2000年前後からよく見るようになったマダガスカルローズウッド(それより前からニューハカランダとしてはそれなりにありましたが)。厳密には複数種類あるようですが、基本的には主にパリサンダーと呼ばれる材が楽器用に用いられているよう。
2000年当初はブラジリアンローズウッドと見分けがつきにくいという話もあったり、実際色の濃いそういうのがあったように思いますが、最近は総じて色が薄い材が使われているように思いますし、結構ブラジリアンとは異なる見た目のように感じます。
音は良くも悪くも特徴がないと感じます。
ローズウッド的な鳴りであるのは間違いないのですが、ブラジリアンのような硬質感はないですし、後述するインディアンのような音の甘さみたいなものもなくプレーンという感じ。
ローズウッドの中では耳当たりが柔らかい方向かなという感じがします。
ただ、メーカーによる大量生産のモデルのインディアンローズウッドはややダルな印象を受ける物も少なくないので、そういうので同じメーカー内で比べるとスッキリした音像ではあるとは思います。
よく謳われている"ブラジリアンローズウッドに最も近い音"みたいなのには個人的には首肯しかねます。
とは言え、実を言うとマダガスカルローズウッドの個体で「ブラジリアンローズウッドみたいだな」と感じた物が1本だけ経験上あります。
その1本だけは音の艶やかさ、深みの点でブラジリアンローズウッドの使われた良いギターに近い感覚を受けました。
ですので、他にもそういった物があるでしょうから、材の質であったり料理の仕方でブラジリアンローズウッドっぽい方向に持っていけるポテンシャルはある材とは言えるのかもしれません。
■ホンジュラスローズウッド
今では良材はハカランダより入手が難しいなんて聞くこともあるローズウッド。こちらもマダガスカルローズウッド同様ニューハカランダとして扱われていました。
「ブラジリアンローズウッドに近い材は?」って訊かれたならならば、個人的に強いて言うならこのホンジュラスローズウッドを挙げます。
中高音域は近いものがあると思っていて、クリアさ硬質感等、近い特性があるように思います。
近い造りのモデルでブラジリアンローズウッドとこのホンジュラスローズウッドの物を比較した場合にホンジュラスローズの個体の方が好印象だったということも中にはありました。
とは言え、傾向として低音の深みという点でブラジリアンローズウッドに譲るかなという印象はあります。
でもブラジリアンローズウッド仕様のモデルとホンジュラスローズウッド仕様の同モデルを価格も考慮して考えるなら、ホンジュラスローズウッドのほうを選ぶという選択も十分ありなレベルの差とも言えるかなと思っていたりします。
■インディアンローズウッド
現在「ローズウッド」とのみスペックに書かれている場合はこのインディアンローズウッドを指すように最もポピュラーなローズウッド。他のローズウッドに比べると硬質感の点で一歩劣るかなというのと音の密度のようなところでも薄いかなという感じがありますが、良く言えば角のない耳当たりのいい優しい音。
結構、質によると言うか選別された物と大衆的(?)な物で幅広い感じがあり、利点としては甘い音と言える点かと思いますが、メーカーが大量に使っている物だと甘いと言うよりダークな音色の場合もすくなくないかと思います。
こちらも過去に記事にしていますので、そちらのほうでより色々と書いています。
■ココボロ
赤みがある場合も多く、木取りによっては非常にエキゾチックな木目な場合もある材。先に挙げたローズウッドよりも低音の重厚感が強く、音の発し方が直線的でパワフル。
硬質感も強いので高音も立ちます。中低音もシッカリ感が強い。
この材自体がそういった傾向なのでトップは音にしなやかさと言うか柔軟さのある材を合わせたほうが合うと個人的に思っています。
ココボロとシトカスプルースを合わせた個体はそれなりの本数これまで試していますが、どれも"硬いだけ"な音になってしまっていました。
某大手楽器店でシトカ×ココボロ個体を試奏してる際に店員さんに「ココボロはハカランダに最も近いって仰るお客さん多いですよ」なんて言われたことがありますが、ココボロとハカランダは全く似てないと思います。
しかし、ハカランダにしてもココボロにしても"硬いだけ"な音になってしまっている個体がままあるので、そういう個体同士に限っては似てると言えなくもないかもしれません。
アレルギーが発症しやすいので使わなくなるルシアーさんもいるという材。
音的にも作り手への身体的面においても結構シビアな材と言えるかもしれません。
■グァテマランローズウッド
低音の重厚さがブラジリアンローズウッドと同じかやや重く、ココボロより軽い、そんな印象。音色はさっぱりしていると言うかパサパサした印象。
ローズウッドの感じの中に少しマホガニー的なニュアンスを含み、低音側に少し重心が寄ったような感じと言いましょうか。
色味と言うか艶感のある音色のトップ材と合わせたほうが活きる材ではないかと個人的には解釈しています。
ほぼMartinとLowdenで使われているのしか見ません。
■アマゾンローズウッド
ブラジリアンローズウッドに産地が近いので似ているがブラジリアンよりやや硬質と言われることが多い材。個人的にはこの記事を書いている時点では2桁まではいかないけど何本かは経験しています。
総じて印象はいいんですが、音の点でブラジリアンローズウッドより硬い音という印象はありません。
アマゾンローズウッドを使用した個体でこれまで触った物は全体的に印象はいいんですが、まだ掴めた感じはしていません(すみません)。
全体的に艶感であるとか滑らかさみたいなものは感じるように思いますし音の拡がりもあるような感じはします。
■アフリカンブラックウッド
材自体の重さが先述のローズウッドの中でも最もあり、この材を使われたギターは持つとソリッドギターのようなズッシリ感を感じます。低音のドッシリ感、力強さもローズウッドの中でも最も感じます。
自重の影響もあってか音は滑らかでしっとりした印象。
そして伸びやかさという点でも非常に優秀。音が減衰していってからスーッと伸びていく感じ。
同じく低音の強いココボロと比べるとココボロは鋭角と言うか角があるような音なのに対してアフリカンブラックウッドは面で拡がるような感覚でしょうか。
ココボロはハッキリした音なのに対し、こちらは優しい音質。
総評
楽器ですので、材がどうだからって言うのはユーザー側からすると後付けみたいなもので、実際そのギターの音がどうかっていうのが全てなわけではありますが、例えば、好みの音を求めてのカスタムオーダーをするとかであれば、材による傾向というのは各々自身の中に基準があるといいのではないかと思います。「このモデルがもうちょっとこっち寄りの音になればもっと好めるのに」みたいなのを具現化するようなね。また、それとも重なる点もありますが、ココボロの項で触れましたが、トップ材を選ぶ材というのもあると感じます。相性と言うか。
ルシアーさんへのカスタムオーダーの場合、タップトーンとかを基に同じ材でもマッチングを考慮して組み合わせてくださる場合もありますが、出来合いの物を試すという場合は材傾向とか把握してると好みかもしれないとかそうでないかもしれないみたいなものは触る前からある程度わかるようになるかな、と。
今回の記事は(以前の材に関する記事含め)その辺の参考になればと思いますが、やはり各々で経験することで"この材は好きかもしれない"みたいなご自身の基準を持てると、好みの音のギターに近づきやすくなれるのではないかなと思います。
もちろんローズウッドに限らずの話ですが。
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