【動画】マダニは「飛べる」と判明、翅はなく跳べもしないのに

静電気の力で宿主に付着する可能性、マダニ対策に応用できるか

2023.07.17
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最新の研究により、非常に小さなリシヌスマダニ(Ixodes ricinus)は、静電気によって空中に飛び上がることが明らかになった。(PHOTOGRAPH BY INGO ARNDT, MINDEN PICTURES)
最新の研究により、非常に小さなリシヌスマダニ(Ixodes ricinus)は、静電気によって空中に飛び上がることが明らかになった。(PHOTOGRAPH BY INGO ARNDT, MINDEN PICTURES)
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静電気でマダニが「飛行」する仕組み

 動物が草や砂、さらには空気中を移動すると、その動きによる摩擦で電荷が生じるとイングランド氏は説明する。陽子が持つプラスの電荷か、電子が持つマイナスの電荷だ。「そして、極性が逆であれば、互いに引き合います。極性が同じであれば、互いに反発します」

 静電気といえば、風船や下敷きを頭にこすり付けると発生し、その結果、髪の毛が吸いつけられて逆立つという現象を知っている人も多いだろう。

 マダニのように小さな生物であれば、こうした静電気によって体を地面から完全に浮き上がらせることができる。

 イングランド氏らは研究室で、ウサギの乾いている足をアクリル板にこすり付けて摩擦を起こし、双方に逆の電荷を発生させた。そして、ウサギの足またはアクリル板との距離を変えながら、ステンレスの鉗子でマダニを保持した。マダニを挟んでいた鉗子を開くと、すべての幼虫が帯電した表面に向かって飛び上がった。イングランド氏らは畏怖の念を抱きながらそれを見ていた。

 興味深いことに、マダニはプラスとマイナスどちらの電荷にさらされても、空中に飛び出すことがわかった。これはマダニの表面が帯びる電荷によらず、体そのものに原因があることを示している。また、この実験では、マダニが真上に移動できることも示された。これは、マダニが宿主を探すときによく行う水平方向の移動より難しい。

「基本的に、いつも静電気の引力が勝ち、彼らは引き上げられます」とイングランド氏は話す。

 今回の研究ではマダニの幼虫に焦点を当てたが、マダニの成虫やシラミ、ダニといった同じような大きさの動物にもこの力は働くと思われる。

 実際、7月10日付けで学術誌「Current Biology」に発表された別の論文では、線虫が静電気を利用してマルハナバチに飛び乗り、ヒッチハイクのように新しい場所に移動できるという証拠が発見された。

「つまり、彼らの研究と私たちの研究を合わせると、この現象はかなり広範囲にわたって起きていると考えられます」とイングランド氏は話す。

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