「紫苑、今日ですよ。覚悟はできましたか」
静寂が支配する早朝の境内で、女が二人正座して向き合っていた。
「分かっています、お母様。私、ちゃんとお役目を果たします」
まだ大人になりきらない、ちょうどそんな年齢の少女の顔はきりっと引き締まり、その瞳には決意が秘められていた。
「それならいいのです。でも気をつけなさい。掟は絶対ですよ」
少女の母親は、厳しく娘に言いつける。
「どんな男だとしても、あなたはその人の子を孕まないといけないのです」
「……ふぅ、今日から新しい一年の始まりか」
藤堂眞はのんびりとあくびをついた。寝ぼけたままで、新年を祝うテレビを見つめる。毎年の事ながら、よくこうも飽きないものだと思いながら、眞は初詣にでも行こうと思いついた。どうせ、明日明後日には友達と行くことになるのだろうが、新年一番で行くのも悪くない。
(それに……)
眞の頬が緩む。
(もしかしたら先輩に会えるかもしれないし)
眞の家の近くにある水無月神社の一人娘であり、眞の先輩であり、彼の思い人でもある水無月紫苑の事を思い浮かべる。
紫苑は、眞が通う学校のアイドルだ。艶かしい黒髪、色気を感じさせる濡れた瞳に愛らしい桜色の唇。それらが相成って、彼女の清楚な美貌を際立たせている。しかも清楚な美貌の裏には、思春期の男ならば誰もが前かがみになってしまうような肉感的な身体が隠されているのだ。胸は窮屈そうに制服を押し上げ、腰は芸術的な括れを見せる。きゅっと上がったお尻は男達を欲情させるのに十分だった。
そんな完璧な美貌を持つ彼女だったが、未だ彼氏がいたことはなかった。ガードが固いというか、とにかく男を寄せ付けないのだ。しかしそのことがまた男達の人気を高めていた。
もちろん眞も例外ではない。
紫苑に告白……というところまではいっていないが、彼女とお近づきになろうと努力していた。積極的に話しかけてみたり、家が近いことを利用して一緒に帰ったりと出来る限りの理由を使って彼女との接点を作ろうとしていた。
最も眞の努力は漸く彼女と話せるようになったという程度で、前途はまだまだ多難のようだった。
「よし、いくか!」
自分自身を奮い立たせるように、眞は一言呟く。家を出れば水無月神社まで目と鼻の先だ。数分も歩けば、神社の境内に続く階段に辿り着く。
(先輩はいるかな?)
眞は長い階段を駆け上がり、売り子の巫女さんたちを眺める。水無月神社が古く、近隣でも一番大きな神社なだけはあって、女の子達のレベルは相当高い。だが眞はそんな可愛い巫女さん達を眺めて、ため息をつく。
(いない、か。)
巫女さんの中には、眞の目当てだった先輩の姿はなかった。しかたないと思って、普通にお参りすることにした。当然願いは……今年こそ可愛い彼女ができますように……できれば紫苑先輩を彼女にできますように。眞はお参りを終えて、おみくじでも引こうと、売り子さん達のほうに近づく。
「今年はっと………」
からんっ、からんっ。
おみくじの数字が入った箱を振り、出た数字を巫女さんに伝える。
(恋愛運は……ん?)
巫女さんから貰ったおみくじを開く。
だが眞はおみくじを見て、首を傾げる。
(……なんだ、これ?女吉って書いてあるぞ)
しかも貰ったおみくじには大きく女吉と書いてあるだけで、他には何も書いていなかった。
誤記でもしたのか、冗談で入れてあったのか、ともかく眞は売り子の巫女さんに聞いてみることにした。
「すいません。これ、女吉って書いてあるんですけど」
眞が巫女さんに見せると、彼女ははっと息を呑み、眞を品定めするようにじっと見つめる。あなたが…………なんですね、彼女はぽつりとそう独白する。眞が困惑していると、巫女さんがこちらに来てくださいと言って席を立つ。何がなんだか分からなかったが、彼女の只ならぬ雰囲気に眞は彼女に付き従う。初詣で人気の多い境内から遠ざかり、境内の端にあるまったく人気の無い場所へと眞は連れられた。
「それじゃあ、すみませんけど眠ってもらいます」
バチバチッ。
突然だった。巫女さんは懐からスタンガンを取り出すと、すまなそうにしながらも、スタンガンを眞目掛けて躊躇なく繰り出す。咄嗟に眞は逃れようとしたが、逃げ切れるものではなかった。
(な、なんで……?)
強烈な電撃が眞の身体を痺れさせ、すぐに意識が遠ざかっていく。最後に見えたのは、巫女さんの不安そうな可愛らしい顔だった。
「紫苑、あなたの相手が決まりました」
紫苑は、ふぅと息をつき気を引き締める。
「あなたも準備なさい」
「はい」
母に言われて、神儀のための準備を始める。必要な事は大体やっていたが、神儀のための衣装に着替えなければならなかった。
「そうそう、これも飲んでおきなさい」
紫苑は母から赤い丸薬を渡される。
「これは?」
「紫苑、これは水無月に伝わる秘薬よ。身体を敏感にさせると共に、痛みを和らげ、孕みやすくするのよ」
母の言うことだ。本当のことだろう。今これを飲めば、間違いなく今から会う男の子を妊娠してしまうだろう。一瞬躊躇するが、紫苑は目を瞑りごくっと赤い丸薬を飲み込む。
神儀に必要な白襦袢、外界から遮断するための耳栓、顔がすっぽりと納まる皮で作られた仮面を身に付ける。もちろん一人ではできないので紫苑の母が協力して、紫苑にそれらを装着する。首のところに付いているベルトを母が閉め、鍵を取り出し施錠する。
これで紫苑は完全に外界と遮断された。仮面の口元だけは開いていたが、耳と目が塞がれた彼女には音も色も分からず、ただとくとくと鳴動する自らの心音だけが彼女に分かることだった。
「それじゃあ行きますよ」
外界から遮断され歩くこともままならない紫苑の手を引き、彼女の母は神儀のために用意された部屋へと向かう。
(ん……ここは?)
眞は頭に走る鈍痛に眼を覚ました。周りを見渡す限りでは、ここは神社の一部らしい。畳が整然と並べられた部屋の中心に大きな布団が二つ置かれ、その上で眞は寝かせられていた。
「起きたのですね」
声のした方に目を向けると、そこには恐ろしいほどに美しい女がいた。年は30を少し過ぎたあたりだろうか、まだ肌には艶があり成熟した女性の色気を感じさせる。女は眞を一瞥すると部屋の襖を開け部屋へと入ってくる。彼女の後ろには妙な仮面を被った女と、巫女装束の少女達が付き添っていた。
「あ、あの……これは?」
女の妙な空気に押される。眞の問いに、女はじっと眞を見据えて彼の身体を嘗め回すように見つめる。
「……ふむ、体つきは中々ですね……あなた、服を脱ぎなさい」
その言葉は命令だった。否応なく従わせる絶対の言霊に、眞は身体をびくっと震わせる。
「早くなさい……命、花音」
「「はい!」」
女が後ろの二人に合図をする。二人はスタンガンを取り出し、眞を脅すように構える。先ほど強烈な電撃を思い出し、眞は抵抗する気も起きなかった。
「わ、分かりました」
眞はすぐに着ていた服を脱ぐ。さすがに女の子、それも飛びっきりの美少女たちに見つめられながら脱ぐのは恥ずかしかったが、この際そんな事は言っていられなかった。
「……何をなさっているの?下も脱ぐのです」
眞は服を脱ぎ下着一枚の姿になる。しかしそれでもだめだったようで、女はそれも脱ぐように命令する。眞は躊躇するが、ばちばちっと音を立てるスタンガンの音に脅され、下着を脱ぐ。
「……!!……随分と立派なものを持っているのですね」
女はごくっと喉を鳴らし、眞の肉棒を凝視する。美貌の女に熱心に見つめられた眞の肉棒は、自然と反応してその威容を奮い立たせる。平均的な大きさより一回り以上大きい眞の一物に、後ろに控える巫女装束の少女達も顔を赤らめながらも熱心に見つめていた。
「これなら……十分に役目が果たせるでしょう」
女は頷き、部屋の中央に進む。そして、
「んぐ………ん、ん、ん」
唐突に女は眞の口を自らの唇で塞ぐ。慌てて離れようとするが、両手はいつの間にか少女達に押さえられ、眞は身動き取れないまま女に口付けを強要される。女の舌が眞の口腔に入り、彼の舌を絡め取って貪るように啜り上げる。情熱的な口付けに翻弄される眞に、女は唾液と共に何か苦い物体を口の中へと送り込む。女は片手で眞の鼻をつまみ、否応なく苦い物体を彼に飲み込ませる。ごくっと音を立て苦い物体が眞の喉を通る。女は眞が飲み込むのを見届けると満足し、最後にちゅっと音を立てて唇を離す。
「これで準備は終わりましたね……」
女は入り口の所で固まっていた仮面の少女の手を引き、眞のいる布団のところまで連れてくる。
「こ、これはどういうことなんです!?」
突然脱がされキスまでされた挙句、準備が終わったというのはどういう事だろう。眞は混乱しながらも、女に問う。
「……あなたは今から、この子を…」
手を引いていた白襦袢の少女を指差す。
「孕ませるのです」
女は当然とばかりに、言い放つ。
「え!?」
眞は驚く。常識外の展開の連続に頭が麻痺しかけていていた。
「だから、あなたはこの子を孕ませるのです。これはこの神社の神儀なのです。この子はあなたの子供を孕む、それは神が定めたことです。………それに」
そして女は少女の身体の線を指でなぞる。
「あなたにも、悪い話じゃあないでしょう?この子を犯すだけでいいのよ。母親の私が言うのも何ですけど、この子、とてもいい身体をしているわよ」
女の指が少女の魅惑的な身体の線を明らかにする。白襦袢の上からも分かるほどの豊かな胸、そこから続く括れた腰、そしてつんと上がった尻はみっちりと引き締まっていた。少女の身体に釘付けになった眞を、女はうふふっと笑う。
「この子、今日が危険日なのよ。ここに出せばちゃんと孕むわ」
少女の細い腰を摩る。
「それにあなたも我慢できなくなっているはずよ。さっき飲ませた丸薬は秘伝の精力剤だから。……ほらね」
彼女の言葉通り急に襲ってきた耐え難い性欲に、眞は理性を手放しそうになる。肉棒はさらに逞しくそそり立ち、眞は目の前の少女を犯したくて堪らなかった。
「さあ、後はこの子を犯すだけ……私達はもういなくなるから。ちゃんと孕ませるのよ」
少女を布団のところで置いたまま、女と巫女装束の少女達は部屋から離れる。
(く……も、もう限界だ。で、でもこの子を犯すなんて……)
まだ状況ははっきりと分からなかったかが、自分の理性が限界に近いことだけは理解できた。目の前にはさっき女が示した通り、素晴らしい肉体が何の妨げなくあるのだ。仮面から覗く桜色の唇が誘うように艶やかに煌く。
(くぅ、ごめん。俺……。)
眞は憧れの紫苑先輩を思い浮かべる。まだ付き合うとかそういった段階ではないから、裏切りということにはならないだろうが、眞は心の中で彼女に謝る。そして同時に目の前の少女にも謝る。
今彼女に襲い掛かれば、恐らく眞は性欲が収まるまで止まらないだろう。そうなったら……眞は、この少女を孕ませてしまうかもしれない。顔も知らない男に孕ませられてしまうという事は、彼女にとってどんなに……
眞に限界が訪れる。少女に近づき、その瑞々しい身体を無理やりぎゅっと抱き締める。
(私、この人の子供を……生むのね)
紫苑は自分をしっかりと抱き締める男の身体を感じた。男のごつごつとした身体の感覚が直に伝わり、自分より少し大きい体に包まれる。音と視覚がないためか感覚が研ぎ澄まされ、男の心臓の音まで伝わってくるようだった。男は紫苑の白襦袢に手を掛け、無理やり脱がせていく。すぐに服は脱げ、自分が裸になったことを紫苑は自覚する。
(そういえば……あの子、最後まで突き放すことができなかったな…)
今日のこの日のために、自分の身体を磨き上げてきた紫苑にとって、自分の周りに寄ってくる男達は邪魔以外の何者でもなかった。毎日の彼女に話しかけてくる男達を冷たく突き放し、自分に寄せ付けずにいた。
下心見え見えの男達を突き放すのに何の呵責も覚えなかったし、今日の事がなくてもそんな男達に自分の身体を許そうなんて気はさらさらなかった。ただ、真剣に紫苑に告白してくる男の子を振るのは、どうしても心が痛む。彼らががっかりとしている姿を見るのはつらかった。最も彼らが好きだったわけでもなかいので、それも耐え切れる事だった。
その中であの子、藤堂眞は異色だった。紫苑は彼が話しかけてくるたびに冷たく突き放したのに、彼は何度も何度も紫苑に話しかけてきた。その内に突き放しきれずに紫苑も彼との会話をするようになり、彼が自分を送ってくれるのすら黙認するようになった。
好き……という訳ではない。紫苑は自分にそう言い訳していた。ただいると楽しいからという理由で、突き放しきれずにずるずると今日まで来てしまったのだ。
眞は少女の白襦袢を脱がせ、その瑞々しい肌を味わう。少女の身体は素晴らしかった。
ピンク色の乳首が若々しい豊かな胸の上で揺れ、細い腰から続く張りのあるお尻が眞を誘う。眞は理性を手放して、少女の胸にしゃぶりつく。吸い付くような肌が纏わりつき、絹のようなすべすべした感触が眞を楽しませる。そして眞は少女の瑞々しい唇にむしゃぶりついた。
(ふふ、こんなときに眞君のこと考えるなんてね……)
男に脱がされ、裸身を弄られながら、紫苑は自嘲気に笑った。
んん、ん、ん、ん。
男に顎をつかまれ、無理やり口付けされる。舌が紫苑の口腔を侵略し、ぴちゃぴちゃと音を立てて唾液を啜る。
んっ………ん、ん、ん…。
紫苑は必死に男の手から逃げようとするが、それは敵わない。次第に紫苑の抵抗が弱まると、男は一層大胆に口付けを深めていく。
ん、ん、ん………ん~~!!。
男は紫苑の口腔内を蹂躙し、舌を絡め取りすすり上げる。紫苑は予想外の刺激に喘ぎ声を漏らしてしまう。
んぁ、あ、あ、あ。
囀る小鳥のような声が彼女の喉の奥から漏れる。重なり合う粘膜からどうしようもない快楽が紫苑を虜にしていく
ごくっ、んぐっ。
男の流しこんだ唾液を紫苑は流されるまま嚥下する。紫苑は初めての快感に最早されるがまま、恐らく今の自分の状況をまったく理解していなかった。
(んぁ…ん……いいのぉ……ん…)
ぐちゅ くちゅ くちゅ ちゅる。
紫苑の舌と男の舌がまるで溶け合うように絡み合い、互いを貪りあう。
んぁん、……ん…ん…ん。
(今の初めてだったのね)
はぁはぁと息をつきながら、紫苑は初めてのキスに陶然としていた。紫苑が知識として知っていたのは啄ばむような軽いキスだけで、今のように貪りあうキスではなかった。
(でも、……気持ちいい)
どうやら自分の子の父親は悪い人間ではないみたいだ。紫苑を気遣うように、優しく触れてくる。でも、紫苑の脳裏からは眞の事が離れなかった。
(せめて、一言いっておけばよかったかな?)
自分は今からこの男の子を孕むのだろう。そして眞は孕んだ自分をどう思うだろうか?その事が頭から離れなかった。
はぁはぁと息をつき、透き通るような白い肌を紅潮させる少女を前に、眞は我慢できずに押し倒す。無理やり少女の細い足の間に腰をいれて、太腿を開かせる。最初怯えるように足を強張らせた少女だったが、すぐに観念して力を抜いた。眞は、少女の中心で咲くピンク色の花園にごくっと喉を鳴らす。ぴたりと閉じられたピンク色の肉襞が、眞の劣情を刺激した。
ぐちゅ。
眞は、正常位で自らの肉棒を彼女のヴァギナに押し当て、狭い入り口に馴染ませる。自分の我慢汁で彼女の膣口が塗れ、亀頭がぐちゅっと膣内に入る。亀頭を入り口に入れたまま、眞は腰を優しく前後に振り始めた。
くちゅ、ぐちゅ、ぐちゅり。
静かな部屋に厭らしい水温が響く。眞の肉棒は少しずつ膣口をほぐし、少女の肉壷へと挿入されていく。そして、亀頭が少女の処女膜に到達する。
(あぅ、大きぃ……くぅ)
紫苑は必死に痛みを堪えていた。抉りこんでくる男の肉棒は、処女の紫苑にとって途方もなく大きかった。
(こんなに痛いものなの)
痛みが丸薬で和らげられているというのに、紫苑の身体には耐え難い痛みが走る。涙を目尻に溜めて、必死に喘ぎを堪える。掟では、喘ぎを漏らしてはいけないことになっているからだ。
ぐちゅう。
男の亀頭が紫苑の処女膜に当たり、紫苑は今から行われることを知らせた。
(ごめんなさい、眞君。私、この人に…………いつぅぅ)
仮面の中で、紫苑は一筋の涙を流した。男は躊躇なく紫苑の処女を貫き、彼女の最奥まで抉りこむ。紫苑は男に征服されて、漸く自分が眞に恋をしていたことを自覚する。
(中に入ってきちゃうぅぅぅ)
心の中で眞に謝りながら、男に貫かれる痛さの余り、男に細い手足を回してしっかりと絡めてしまった。
眞は少女の身体に感嘆していた。目の前で自ら処女を貫いた少女は、白い肌を紅潮させ、必死に眞に白い手足を回してしがみ付いてくる。密着したために彼女の柔らかい胸が胸板で潰れ、眞の鼻腔を少女の甘い香りが刺激する。少女の膣肉は抱き締めるように眞の肉棒をきゅうきゅうに絡みつき、痛いほどに締め付ける。彼にとって始めての女は間違いなく極上の牝だった。
残念なのは、彼女の顔を見ることができないことだった。
一度顔のお面を取ろうとしたが、首のところに鍵が掛けられていて、とることはできなかった。すすり泣くような声が仮面の奥から聞こえ、甘く抱きついてくる少女を眞は心から可愛く思った。
二人はしばらくの間、重なったまま動かずにいた。
(気持ちいい。これが女か……)
少女の膣内をびっしりと覆う細かい肉襞が、それぞれ生きているように、眞の肉棒に舐めつく。ちゅうちゅうと肉棒に吸い付く少女の媚肉に、眞は陶然とした快感を腰全体で受け止めていた。その上処女特有の締め付けが、眞の肉棒を扱きあげるのだ。眞は少女の瑞々しい唇に優しく口付けながら、彼女の媚肉を味わっていた。
(はぁ、はぁ、はぁ。これが男の人の……)
紫苑は破瓜の痛みが紛れていくのをじっと待っていた。幸いなことに、この男は紫苑がしがみ付くままで動かずにいてくれた。その間中、男は労わるように紫苑の唇に何度も優しいキスを落とす。
何度も優しく唇を吸われていく内に、温かい気持ちが紫苑の胸に溢れる。暫くその姿勢で抱き合っていると、痛みが和らいでくる。すると男の巨根が紫苑を完全に埋め尽くしているのが感じられ、腰の奥に潤と熱くなってくる。
(だめぇ、このままじゃ、私ぃ……)
腰奥から湧き出る愛液と共に、紫苑の身体は敏感になって、男と触れ合うだけでたまらない刺激になる。
ん?眞は少女の身体が変化し始めたのを感じた。膣内は痛いほどにぎゅうぎゅうと締め付けていたのが、柔らかく包み込むように変わる。耐えるように密着させていた手足も、じっれたそうに動かし、漏れ出る声も痛みを訴えるものから、荒い息や甘い声に変わってくる。
少女の変化に、眞の肉棒はさらに硬くなっていた。眞は腰を動かし始める。最初のきつかった処女の膣内は程よく蕩け、ちょうどいい締め付けで眞の肉棒を刺激する。
ぐちゅ、ぐちょ、ぶちゅ。
眞はゆっくりと腰を動かして、少女の官能を引き出させる。腰を引くと、雁が少女の内壁に引っかかり、限界まで膣壁が肉棒に縋りつく。その度に彼女は可愛い喘ぎ声を漏らし、足をしっかりと眞に絡める。眞は思わず何回も繰り返し打ち下し、至福の締め付けを貪るように味わった。
ずちゅ、ずちゅ、ずちゅ。
少女が動きに慣れてくると、眞は動きを大胆なものへと変えていく。大きく腰を引き、遠慮せずに少女の最奥まで抉る。突くたびに絡み付いてくる少女の媚肉と、舐めつくような肉襞が眞を射精へと導いていく。紅潮した肌と、すすり泣くような喘ぎ声が少女の官能を伝えていた。
ずん、ずん、ずん。
最奥を刺激すると、少女は小さく喘ぎ、甘えるようにしがみ付いてくる。何度も突かれた少女の膣肉は甘く蕩け、眞の肉棒を完全に受け入れていた。眞は次第に射精へと近づいていく。腰の動きも、彼女の奥へと種付けるために、深く深くに繋がろうとする。
(あぁ、だめぇ。き、気持ちいいのぉ)
紫苑は男の肉棒からくる悦楽に溺れていた。眞の事が心の中に残っていても、丸薬の効果と男の肉棒は紫苑の理性を溶かし、はしたない声を上げさせる。男が深く突くと、亀頭が子宮口の盛り上がりを押し潰し、紫苑に響くような快感を伝える。引き抜くときには高く張った雁が、みっちりと締まった紫苑の膣壁をこそいで、切なくなるような甘美な官能を与える。
(もぉ、きちゃぅ……)
何度も繰り返される男の打ちつけに、紫苑はどうしようもない快感に溺れてしまっていた。頭では知らない男だと分かっているのだが、何度も突かれ、肌を合わしていると身体がこの男を求めてしまう。
唐突に男の動きが変わった。紫苑の奥に、亀頭を押し付けるようにして突いてくるのだ。
(はぁ、奥にぃ……だめぇ)
紫苑の膣奥で亀頭の傘が開く。男が射精に近づいているのを知り、紫苑は軽く衝撃を覚える。
(わ、私。この人に、孕まされるぅ……眞くぅん…)
今まで覚悟してきたはずの妊娠だったが、いざとなると紫苑も怖気づいた。しかも眞の事が紫苑の脳裏から離れなかった。このままこの男の子を孕めば、自分は眞とどう話せばいいのだろうか?それが紫苑を愕然とさせた。紫苑は腰を捩って、男から逃げようとする。
ずん、ずん、ずん。
そんな紫苑の思いとは関係なく、彼女の上に圧し掛かる男は遠慮なく紫苑を突く。奥を突かれると、痺れる様な快感が紫苑を襲い、どうしようもない官能が彼女を捕らえて男から離れられなくなってしまう。
ずちゅ。
男の肉棒が紫苑の子宮口を探し当て、鈴口が音を立ててキスをする。それと同時に紫苑は男の大きな肉棒が今まで以上に膨らんだのを感じた。
(え?も、もしかして…………あ、あ、で、出てるぅ。私の中に……)
ドピュルゥゥゥゥ。
男の肉棒から勢いよく精子が放たれる。しっかりと腰を捕らえられ、紫苑が身じろいだ程度ではびくりともしなかった。紫苑が男のことをどう思っていようとも、女の本能が注がれる精液に反応して、男の子を孕むために動き始める。直接精子が子宮に入り込むように紫苑の子宮口が男の鈴口を捕らえ、肉襞が絞り上げるように男の肉棒を締め上げる。紫苑の身体は男に種付けられて悦び、手足を男に絡め、しっかりと抱き締めてしまう。
(はぁん、出てる……子宮の中に入ってくるぅ……)
ドクゥ、ドピュウ。
心の中で眞の顔を思い浮かべ、快楽に咽び泣きながらかき消す。男の精液が紫苑の奥に次々と注がれ、紫苑は自分の身体が手遅れになってしまった事を思い知る。
ドク、ドク、ドク。
男が飲んだ秘薬のせいか、射精は終わることなく続き、紫苑を孕ませるための精液を出し続ける。
(もうこれじゃあ………あぁぁぁぁ、くぅぅぅぅ)
紫苑は葛藤のなかで、絶頂してしまう。びくびくと痙攣する膣内がもっと精子を絞りとろうと、男の肉棒をきゅーっと締め付ける。
おまけに紫苑は男に回した手をぎゅっと引き寄せ、男の唇に吸い付いてしまう。男は一瞬驚いたようだったが、すぐにキスに答えて紫苑の舌を絡めとる。
くちゅ、ちゅう、ちゅく、むちゅ。
紫苑と男は舌を絡めあい、夢中になって互いを貪る。二人の口からぴちゃぴちゃと水音が漏れ、静寂な神社にあるまじき音が辺りに響く。
ドピュ、ドク、ドク。
キスしながら、射精される感触に紫苑は悦びを感じていた。しっかりと抱き締められたまま種付けられると、愛されているという錯覚を感じさせられるのだ。紫苑の悦びに反応してか、彼女の膣内はさらに搾り取ろうと、男の肉棒を抱き締める。紫苑にも感じられるほど押し付けられ、男の鈴口を子宮口がちゅーっと吸い上げ、受精に向けて収縮する。
二人は抱き合ったまま、精子を植え付ける感覚、そして植えつけられる感覚に身を投じていた。
(ふぅ、なんて気持ちいいんだ)
眞は少女の膣内に射精を終え、その余韻に浸っていた。少女は細い足をねだる様に眞の腰に絡め、自分のほうに引き寄せてくる。腕を首に絡めて、皮の仮面ごと甘えるように眞の胸に抱きつき、はぁはぁと荒い息をつく。荒く息をつくたびに、少女の豊かな胸がぷるんと揺れる。彼女の甘い声が仮面から漏れ、それが眞に男としての満足感を与えていた。射精を終えた今でも、少女の膣肉は眞の肉棒に吸い付き、精液をねだる。
しばらく経って、眞は少女からペニスを引き抜く。少女の媚肉はまだ足りないといわんばかりに、ペニスに絡みつく。眞が抜くと、ピンク色の肉襞が雁に引っかかったまま捲り上がり、鈴口とヴァギナの間に白い粘性の橋がかかる。
(こんなに出したのか……これじゃあ、この子は…)
少女のヴァギナから出てくるこってりとした白い粘液を、眞はすまなそうに見つめる。今出てくるよりも遥かに多い量を、眞は彼女の中に注ぎ込んだ。しかしそれらは、少女の最奥へと注がれ、ほとんどが少女の膣内から出てこない。
体を離して、改めてみると少女の肢体は恐ろしく綺麗だった。眞の胸板に潰されていた胸は彼女の荒い息にぷるぷると揺れ、眞に種付けられた腰はほっそりと括れ、眞の肉棒を受け入れた少女のお尻はピンク色に火照っていた。眞は少女の白い胎を優しく撫でる。
少女の手が眞の手をしっかり掴み、ぎゅっと握った。
(ここに俺の子が出来るんだな。)
今まさに自分の精子が少女に受精しているかと思うと、眞のペニスは再び硬くなってきた。
(わ、私。……はぅ)
ヴァギナから出てくる精子が太腿に当たり、ひやりとした感触を感じる。そして紫苑は自分の身体がその精液を嫌がるどころか、喜んでいることに軽く驚いていた。自分でも分かるほど子宮が疼いて、中に入った精子を奥へと吸い込み続ける。自らを妊娠へと招く行為に、身体はひくひくとした快感を覚えていた。
(眞君、ごめんね。私、この人の子供を妊娠しちゃった)
男の手が当てられた胎が潤と熱くなる。目が見えず、音も聞こえないためか、男の精液の熱さが子宮で感じられるようだった。しばらくそのままでセックスの余韻に浸る。紫苑にとって初めての交わりは、相手が知らない男ということを抜きにすれば、素晴らしいの一言だった。
男は紫苑にとても優しかった。初めてのキスは情熱的で、舌を絡めあう行為は愛情すら感じられた。
(それに……)
紫苑は頬を染める。自分の処女を貫いた男の一物は、彼女が想像していた以上に逞しかった。紫苑の膣内を完全に埋め、張った雁が紫苑の媚肉を蕩けるように擦り、動くたびに膣全体を刺激し、途方もない甘美な感覚を紫苑に与えてくれた。しかも紫苑の膣肉に完全にフィットした男の肉棒は、入っているだけでどうしようもなく甘い声が漏れてしまうのである。
そんな男の事を、紫苑は恋にも似た感情で愛おしく思ってしまっていた。
紫苑が小さな幸せに浸っていると、男の手が紫苑を抱き上げる。布団の上で正面からしっかりと抱かれ、紫苑は胸板に顔を預けた。
(あん。またするのね)
自然と喉の奥から色っぽい声が出る。抱き上げられた紫苑は男の膝の上に抱かれ、股を広げられる。紫苑の膣口に男の肉棒が押し当てられ、再び入ってくる。
(ふぅぁ、やっぱり……おっきい)
紫苑の最奥に男の亀頭がくっついたところで、肉棒が完全に紫苑の中に納まる。今度は対面座位なだけあって、紫苑の体重で肉棒が深く入り込み、しっかりと最奥まではまり込んでいた。完全に二人の性器がフィットして、入っているだけで紫苑の官能を刺激する。
二人は抱き合うような姿勢で交わりあった。自分の媚肉が奉仕するように、男の肉棒にくちゅりと絡まり、紫苑は自分の身体が完全に堕ちてしまったことを自覚した。
くちゅ、ちゅく、ぷちゅ。
どちらからともなく舌を絡めあい、互いの唾液を啜る。既に紫苑の白い手足は男の背中に回され、二人はぴったりと密着していた。動かなくても、男の亀頭が子宮の盛り上がりを圧迫し、巨大な肉棒が紫苑の膣内で存在感を示していた。
ちゅーぅぅぅ、ちゅっちゅっちゅ。あむ。ちゅ、はむ。
男は紫苑の唇に吸い付き、大胆に舌を絡めあう。先ほど一度絶頂したからか、すぐに紫苑の気持ちも昂ぶってくる。
眞は唾液を啜りあいながら、腰を動かす。
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ。
括れた腰をしっかりと掴み、絡み付いてくる少女の膣内を抉る。一突きするたびに少女の子宮口が亀頭に吸い付き、射精を促す。一度味わったにも関わらず、少女の膣内は素晴らしく気持ちよかった。少女は濃厚な口付けに満足して口元を緩ませ、しっかりと眞にしがみ付く。肩口に自分の顔を乗せて、眞に密着する。
ずん、ずん、ずん、ずん。
「あ、あ、あ、あ……奥に当たってるのぉ…」
耳元から、少女の喘ぎ声と、荒い息遣いが聞こえる。突き上げるたびに、少女の媚肉は熱く絡みつく。
「やぁ…っ、あなたの……大きぃ…」
さっきまで押し殺されていた少女の声が、耳元で囁かれる。
ぐちゅ、ぶちゅ、むちゅ。
細い腰をがっちりと掴み、容赦なく上下にゆする。そしてその度に、少女の張りのある胸がぷるんと揺れる。そのまま激しく腰を振って、自分にしがみ付いてくる少女の身体を味わい尽くす。
「いい、いいのぉ。あ、あ、あ、あ、私きちゃうぅぅぅぅ」
少女は形振り構わず喘ぎ、眞の腰を細い足でがっちりとクロスする。トロトロに蕩けた少女の膣内が、肉棒を溶かすように締め付ける。
ずちゅ、ずちゅう。
深く絡みあった二人は、その淫靡な行為に没頭していく。眞は彼女の細い腰をしっかりと掴み、自分の腰に引き寄せる。がっちりと二人の腰が重なり、堪らない快感を二人に与えた。少女の膣内は、眞の肉棒をきゅうきゅうに締め上げ、射精をねだって蠢く。さらには眞の動きに合わせて、腰を動かすのだ。少女の柔らかいお尻が眞に密着するたび、痺れるような快感が走り、眞を射精へと導いていく。
「はぁ、だめぇぇ。私、いっちゃうぅぅぅ」
最初に絶頂したのは彼女だった。奥を何度も突かれ、膣全体を圧迫される感覚に二度目の絶頂を迎えたのだ。びくびくっと少女は痙攣して、さっきのものとは比較にならない大きな絶頂を迎えた。眞は彼女に合わせるように、腰を突き上げ、彼女の一番深いところで射精する。
ドピュゥゥゥゥゥ。
さっきの丸薬のせいで、一度出したにも関わらず射精の量は変わらず、次から次へと少女の中に注ぎ込む。少女も自ら孕まされること望んでか、腰をぐいぐいと眞に押し付ける。絶頂した少女の媚肉は幾重のも重なった肉襞の一枚一枚が、まるで意思でもあるかのように眞の肉棒を絞り上げる。
「あぅぅぅ。いっぱい、入ってくるぅぅぅ」
ドピュゥゥゥ。
完全にフィットした眞の亀頭の先には、少女の子宮口が絶頂のためにひくひくと痙攣していた。
くぱぁ
小さな子宮口が、眞の射精を少しでも飲み込もうとして開き、鈴口にぴったりと吸い付く。孕ませてくれとばかりに、少女の子宮口はきゅーっと鈴口を吸い上げ、精液を奥へと運ぶ。眞は敏感な亀頭でそれを感じ、腰が抜けるほどの射精感をその中に叩き込む。
「くぅぅぅ。お願いぃぃ、私をは、孕ませてぇ……」
ドク、ドク、ドク。
少女は眞の耳元で喘ぎ、種付けられる絶頂に酔っていた。しっとりとした少女の肌に包まれながら、眞は少女を孕ませるために射精を続けた。濡れそぼった膣壁は少女が小さな絶頂を迎えるたびに収縮し、眞の肉棒を絞り上げる。
「お願いします……私にあなたの…赤ちゃん……産ませてぇ…はむ、はぅ、くちゅ」
少女が言い終えると眞は少女の唇に喰らいつく。眞は少女の口腔に舌を入れて、強引に舌を絡めとる。そして少女の舌を吸いあげ、深い口付けを交わす。少女の身体がその快感に、きゅーっと眞の肉棒を締め上げる。
ドピュ、ドピュウ。
眞は吸い付いてくる子宮口に亀頭を強く押し付け射精を続ける。何度も何度も、この優美な少女の中に劣情を解き放ち、白いお腹の中に種を植え付けていく。彼女の上の口を蹂躙し、下の口を征服する。
ドクゥ、ドク、ドク。
眞は本能に導かれるまま、自分の子孫を残すために少女を犯し続ける。二人は射精が終わるまで、舌を絡め合い、愛を交し合う。最後の精液が少女の子宮に注がれる頃には、眞はこの少女のことが心から愛しく、気持ちが通じ合ったような気分だった。
(セックスって、こんなに気持ちよかったのね……)
紫苑はうっとりとした気分で男にしがみ付いていた。何度も精子を受け止めた胎が、ひくひくと悦んでいた。交わった後の気だるげな感じが、紫苑を幸せな気分にしてくれていた。
(私、もうこの人から離れられない)
男の子種を受け止めた紫苑の身体は、今も男の精液を求めていた。ぎゅっと抱きついていると、どうしようもなくこの男が愛しくなるのだ。自分の膣内にいる男の肉棒が再び大きくなってくるのを紫苑は感じた。今の彼女にはそれが純粋に嬉しく、再び精を注がれる期待に紫苑の奥から愛液が湧き出す。
(ごめんね、眞君。私、この人のものになっちゃった)
それから翌日の朝、紫苑の母親が起こしにくるまで、二人は離れることなく、紫苑を孕ませるための交わりを続けた。母親達に連れられ男が家から出されると、紫苑は仮面を取り外され、今まで交わっていた布団に横たわる。
「紫苑、ちゃんと掟を果たしましたか?」
「はい、あの人に私……」
紫苑は頬を染め、男に一日中種付けられた胎を摩る。あれだけの精子のほとんどが子宮に入り込み、紫苑の胎の奥ではほぼ間違いなく受精が行われているはずだった。
「そうね、あれだけやれば役目も果たせたでしょう。でもよかったわ、紫苑が幸せそうで」
紫苑の顔は幸せそうに蕩けきり、母の言葉など聞いていなかった。今の彼女の脳裏には眞の事など、まったくなく、自分を孕ませた男の事で頭が一杯だった。
「あらあら、よっぽどよかったのね」
そのまま紫苑は眞の事を思い出すまでの間、暫しの幸福に浸るのだった。
眞はそれから始業式の始まる日まで、何もすることが出来なかった。少女に会いに行くことも、先輩の顔を見に行くことも、どちらも何を話せばいいのか分からなかった。悩みを抱えたまま眞は始業式のために学校へと向かう。
いつもだったら紫苑先輩を待ち伏せして、一緒に学校に行こうとするのだが、今日はそんな気にはなれなかった。
眞がとぼとぼと歩いていると、後ろから友達の声がかかる。
「おーい、眞。お前、今日は水無月先輩と一緒じゃないのな。さては振られたか?」
「そんなんじゃないけどさ……ただ…」
眞が深刻そうな顔をするのを見て、友人は首を傾ける。
「お前、何かあったのか?……お、水無月先輩だ」
二人の前のほうに紫苑が歩いているのが見える。
「やっぱり先輩、美人だよな~。しかもなんか先輩、今日は妙に色気があるよな。なんていうか、艶っぽいっていうか……」
確かに眞の目から見ても、先輩は前よりもずっと色っぽくなっていた。前も十分な色気があったが、それとは違う匂いが立ち込めてくるような強烈な色気だった。
「それにさ、こう腰の辺りがきゅっとしてて……それに何か視線がまたエロイよな」
紫苑の目はどこか虚ろで、視線が定まっていないようだった。しかも官能的だった肉体は、さらに色気を増して周囲の男達を誘惑する。紫苑に釘付けだったのは眞達だけではない。周りにいる男達、それに女の子も呆気に取られたように頬を赤くして、紫苑を見つめていた。
「もしかしたら、男が出来たかもな。ほら言うだろ男が出来ると女は変わるって」
友人の言葉に眞は胸にずきっと痛みが走ったのを感じた。もしかしたら本当に先輩には彼氏が出来たのかもしれない。大体、先輩みたいな美人に男がいなかったのが異常なのであって、彼氏が出来たとしても何も不思議はない。
「俺、先輩に話してくる」
「お、おい眞」
眞は先輩に駆け寄る。今までぐだぐだと先輩に何を言おうかと悩んでいたが、それでは何も変わらない。取り敢えず先輩と話さないと、そう思って眞は先輩に話しかける。近くで見ると今日の先輩は本当に色っぽかった。白い肌が艶かしく光り、甘い匂いが鼻腔を刺激する。
「先輩、あの……」
眞が声を掛けると、紫苑はびくりと身体を震わせる。紫苑は目を潤ませて、じっと眞を見つめる。潤んだ目に見つめられて、眞は一瞬身体を硬直させて、何もいえなくなる。
どうしたんですか?……眞がそう先輩に聞こうとしたときだった。
「ごめんなさい」
紫苑は眞に一言言い残し、眞の前から逃げるように立ち去る。眞はその場に呆然と立ち尽くすしか出来なかった。彼が最後に見た彼女の目からは確かに涙が零れていた。
それから眞は先輩と話す機会を得ることはなかった。先輩が3年生で、今年で卒業ということもあってほとんど学校に来ないため、話すきっかけがないのだ。しかも眞が先輩に会うために、水無月神社に行っても会ってくれる事はなかった。そしてもう一人、眞が抱いた少女も、眞は会うことが出来なかった。
二人とも出会える可能性があるのは神社だけ、眞は毎日二人に会うために神社に赴く。しかし毎回、あの美貌の女に門前払いされてしまい、会うことは出来なかった。
自分が抱いた少女と、前から好きだった先輩。今ではどちらも恋しく、せめて一目だけだとしても会いたかった。しかし、どちらとも会うことは出来ずに時間だけが過ぎていった。
家の縁側で紫苑はどこを見るわけでもなく、ただぼーっと外を眺めていた。ぱたん、と障子の開く音がして、紫苑の母親が縁側に出てくる。
「あの子、眞君っていいましたね。またあなたに会いに来たわよ。よっぽどあなたの事が好きなのね」
母はからかうように笑う。
「そうですか……」
紫苑は目を伏せ、庭にある池の水面をじっとみつめる。ほんの一月前まで楽しく眞と会話していたのが嘘のようだった。締め付けられるように胸が痛み、池の水面に眞の顔が思い浮かぶ。
「何で会ってあげないの?ちゃんと話してあげればいいじゃないの。そのままじっとしていても、何も変わらないわよ」
そんなことは紫苑にも分かっている。でも、いざとなるとどう話せばいいのか分からず、眞を拒絶してしまう。しかも日が経つごとに、話しにくくなっていく。
「……そうそう、あの人も来たわよ」
「…!!」
紫苑は身体を硬直させる。と同時に、腰の奥が熱くなり、顔が火照る。
「あなたが会いたくないっていうから、帰ってもらったけど。このままじゃあ、あなたに愛想つかすかもしれないわよ」
紫苑の母はふふっと笑い、紫苑の顔が青ざめるのを見つめる。だが彼に会うわけにはいかなった。今あの男に会ってしまえば、もう自分は眞に話すことは一生できなくなってしまうだろう。そう思い、今まで一度も会わなかったのだ。
最も正直なところ、紫苑は男が会いに来てくれることが、たまらなく嬉しかった。自分を抱いた男が、こうも優しいとは思いもしなかった。毎日、彼が紫苑に会いに来ているというのを母から聞かされるたびに、家を飛び出し彼の胸に飛び込みたくなるほどだった。
「そうだ。紫苑、言っておかないといけないことがありました」
「?」
母は嬉しそうに紫苑に話しかける。さっきまでの意地悪な笑みとは違い、心底嬉しそうな母の様子に紫苑は戸惑った。
「紫苑…………おめでとう」
満面の笑みを浮かべて、紫苑の胎を摩る。
「あなた、赤ちゃんが出来たのよ。……よかったわね」
彼女の前に暗く待ちうけ、そして彼女が待ち焦がれていた宣告を終に聞く。紫苑の中を、二つの感情が駆け巡った。
一つは、絶望である。
もしかして妊娠していなかったら……あの日から何度そう思ったことだろう。そうであれば、紫苑は眞と再び今までのような楽しい日々を送れるかもしれない。もしかしたらそれ以上の関係にもなることができるかも……そういう紫苑の淡い恋慕は呆気なく消え去り、もう戻ることはなかった。
そしてもう一つは悦びだった。
それもかつて味わったことないような巨大な悦び。自分が母になったという満足感。何年もこの日のために生きてきたという達成感。そして、自分を孕ませた男への切なくなるほどの愛情が、紫苑の心の中に溢れる。あの胸に抱かれて、また咽び泣くほどの悦楽を感じたい。
それらが一体になって紫苑の気持ちを高めるのだ。
「お母様……ありがとうございます」
紫苑は荒れ狂う自らの心を押しとどめ、自らのことのように喜ぶ母に礼を言った。
眞は何度も何度も水無月神社に通ったが、結局彼女達があってくれることはなかった。紫苑と学校で会おうにも、彼女が学校に来ることはもうなかった。眞は決意した。
(卒業式、その日に紫苑とあの少女に絶対に会おう)
卒業式を過ぎれば、紫苑と学校で会える可能性なくなってしまう。それに、あの少女とも早く会わないと、もし彼女が……自分の子を妊娠してくれているとしたら……早く会わないといけない。
卒業式の日、眞は朝早く家を出て、神社に向かう。卒業式の前なら彼女も逃げられないはずだった。神社のところまで来て、毎日のように何度も繰り返していた動作を繰り返す。
あの女の家、そして少女と交わった家のインターフォンを鳴らす。そこは水無月神社に付随する大きな建物で、紫苑先輩とあの少女以外にも多くの女の子たちが暮らしている。いわば巫女さん達の寮みたいなものなのだ。
「俺です。藤堂眞です。今日も、紫苑先輩とあの子に会いに着ました」
インターフォンに女が出ると、これも慣れたように、用件を伝える。
「何度も言っているでしょ。あの子達はあなたに会いたくないって言っているのよ」
これもいつもと同じ。だが眞は今日ばかりは、引き下がる気はなかった。
「分かっています。でも、それでも、俺は彼女達に会わないといけないんです」
そして一瞬の沈黙。
「……わかったわ。ちょっと待っていてね」
眞の決意を知ったのか、女は眞をそのままに奥へと向かった。
紫苑は、巫女服に身を包んでいた。朝の禊は、お腹の子供のために止めていたが、朝の祈りは忘れない。紫苑がじっと瞑想していると襖が開き、母が入ってきた。
「紫苑、あの子、それにあの人があなたに会いたいって来たわよ……」
(二人とも…?)
「もしかしたら……あの子達、今日で最後かもしれないわよ。思いつめているみたいだったし」
背筋に冷や汗が流れる。
(どうしよう。答えなんかでていないのに……)
「わかりました。私、二人に会います」
だが、結局会わないわけにはいかないのだ。いままで逃げてきたけども、ずっと逃げ続けるわけには行かない。仮にどんな結末になったとしても。
母はインターフォンのところに行き、彼らを家へと招き入れた。紫苑は母に連れられて、彼らの待つ大広間に向かう。一歩進むごとに、板張りの床が音を立てる。ほんの数十歩で大広間まで着くはずなのに、永遠のような長さに感じる。
そして、
ぎいぃ……
障子を開けて大広間に足を踏み入れる。彼らを一人ずつ招き入れたのか、そこで待っていたのは一人だけだった。
(眞君……!)
久しぶりに見る彼の顔にうきうきしてしまう自分がいた。
大広間に通され、待っていた眞の前に現れたのは紫苑先輩だった。少女の姿はなく、先輩はあの女と一緒に部屋に入ってくる。久しぶりに見る先輩は、相変わらず綺麗で……それにこの前よりも艶かしさが一層増していた。
「その、先輩?」
眞は先輩に話しかける。近くに女がいたままだったが、恥ずかしがっても仕方ない。何しろこの女は眞が、先輩のことを好きなことも……少女を孕ませたことも知っているのだ。
「眞君……話してもいいかな?」
眞が続ける前に、紫苑が話し始める。
「何から……話すか迷ったんだけど…」
一呼吸置く。
「そのね。私、眞君のこと好きよ」
どく、どくという心臓の音が聞こえてくるようだった。急に先輩から、そう眞が憧れてきた先輩から愛の告白を受けたのだ。眞は嬉しい気持ちで一杯だった。
「えっと、先輩、俺も……」
眞は自分の気持ちも紫苑に伝えようとする。少女のことは頭に引っかかっていたが、自分の気持ちに嘘はつけなかった。しかし眞が最後まで伝える前に、紫苑は口を挟む。
「もう一つ、眞君に伝えないといけない事があるの……」
彼女は再び一呼吸置いて不安そうに眞のことを見つめる。紫苑は巫女服の上から、自分のお腹を摩りながら決心したように話し始める。
「私……私のお腹の中に赤ちゃんがいるの」
衝撃だった。頭が真っ白になり、思わず彼女の事をまじまじと見つめてしまう。自分のお腹を摩っている紫苑の顔は、とても幸せそうで母親の顔をしていた。
「せ、先輩」
「だからね……私、眞君と一緒にはいられない」
自然と紫苑の目から涙が零れ落ちる。
「ごめんね、本当は話さないといけなかったんだけど……私の家ね、」
彼女は自分の家に伝わる神事について、眞に話そうとする。しかしその話が口を出ることはなかった。
「俺は嫌ですよ。こんなこと……こんなことで、先輩と一緒にいられないなんて。先輩だって、俺の事好きなんでしょ?それなのに」
眞は必死になって割り込み、紫苑に食い下がる。
「俺は、先輩が妊娠していたって、気にしません。お腹の子だって責任もって育てます。だから……」
「眞君…」
紫苑は、感極まったように声を出す。彼女は戸惑いながらも、眞の言葉に嬉しそうに顔を緩ませる。
「眞君、ちょっといいかな?」
二人の様子をじっと見つめていた女がごほんと咳をつき、口を挟む。
「あなた、紫苑の子供を責任取って育てるって言っているけど、あなたが孕ませた子の事はどうするつもりです?もしかして、ほっとくつもり?」
女は意地悪そうな笑みを浮かべる。最も一番その言葉に驚いたのは紫苑だった。眞が、女を孕ませたというのは衝撃に加え母がなぜ彼のことを知っているのか、という事が紫苑を驚かせたのだ。
「……あの子の責任もちゃんと取る。でも……俺は、先輩のことも愛しているんだ」
眞だってそんな綺麗事が通らない事は知っていた。でも紫苑への気持ちも、あの少女への気持ちも、眞の中では真実なのだ。女は眞の目を真剣そうに見る。
そして彼女はふふふっと手で口を押さえて笑う。
「わかったわ。じゃあちゃんと、責任とってよね。私の大切な娘なんだから」
女は紫苑の頭を撫でる。
「よかったわね、紫苑。あなたの子供の父親がいい人で。二人分愛されるなんて経験、滅多に出来ないわよ」
女の笑い声が大広間に木霊する。紫苑と眞は固まったまま動かない。
「え、ええ!?」
先に動いたのは紫苑だった。
「……あ、あの人が眞君!?」
紫苑は驚いて、大きな目を限界まで見開き眞を見つめた。
「じゃ、じゃあ。この子は眞君の……」
紫苑は手をお腹に当て、赤くなる。
「そうよ、後であの人かどうか確かめてごらんなさい。あれだけ大きいのはそういないから。それに、紫苑。あなた、入れてもらえばすぐ分かるでしょう?」
「お、お母様」
紫苑は頬を染めて、恥ずかしそうに下を見る。眞も照れて、目を彷徨わせる。
「でもよかったわ。もし眞君が、この子の身体を抱き逃げなんてことになったら、どうしようかと思ったもの」
眞をにこやかに一瞥する。にこやかな目の中には、確かに冷たいものがあった。
「眞君。紫苑の身体、どうだった?やっぱり凄かったでしょ?いくら薬飲ませたからって、一日中盛ることはないわよね~」
二人はあの日のことを思い出して、赤くなっている頬をさらに紅潮させる。眞は紫苑の身体を思い出し、自分の股間が熱くなるのを感じた。紫苑は赤くなったまま母親をじっと睨んでいる。
「でも、眞君があの人で本当によかった。私…………」
紫苑は目に涙を溜める。眞はしっかり紫苑を抱き締め、優しく慰める。紫苑の母はその光景を微笑ましげに見つめていた。
「眞君、ここにあなたの子供がいるのよ」
紫苑は巫女服をはだけさせ、白いお腹を露出させる。ほっそりとしたお腹が少し膨らんでいた。
「ここにいるんだな……俺の子供が」
眞はどうしようもなく幸せだった。愛する女性が、それも二人分愛した女性が自分の腕の中に居て、しかも彼女のお腹の中には自分の子供が居る。柔らかい体をしっかりと抱き締め、自分の子供がいるお腹を触る。
これ以上の幸せはなかった。
二人はじっと抱き合い、最高の幸せをかみ締めていた。
「お母様、最初から知っていたのですね。なんで教えてくれなかったの?私、私……」
紫苑はしっかりと眞に抱きつきながら、母に文句を言う。
「紫苑、ごめんなさいね。それは全て掟で定められていたの。でも私は全然心配しなかったわよ」
悪びれずに母は紫苑に言う。
「どうして?」
そんな母を疑わしそうに見つめる。
「だって私は知っていましたもの」
紫苑の母はこちらを指差す。
「水無月の神様はね、はっぴーえんどが好きなのよ」
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