環境に配慮し工事、自然に近づけてきたはずの川でなぜタナゴ消えた?
環境への配慮をしてきたはずの川で、どうして、タナゴはいなくなってしまったのか。北九州市の黒崎ひびしんホールで4日、市の中心を流れる紫川のタナゴをめぐるシンポジウムがあり、専門家と行政関係者が原因や今後の対応について意見を交わした。
シンポジウムの運営を担ったNPO法人「北九州・魚部」が、紫川にいたタナゴの仲間5種のうち、4種がここ十数年の間に絶滅したとみられるという調査結果を報告した。「魚部」は水辺の生物の調査、研究をしているNPOだ。タナゴの仲間は淡水の二枚貝に卵を産みつけること、種によって産みつけやすい貝の種が違うことが知られているが、こうした貝も1種を除き、見つからなかったという。
原因について、魚類の生態に詳しい福岡県保健環境研究所の中島淳専門研究員は、紫川にあった「せき」の撤去が関係している可能性を指摘した。
せきの撤去がプラスの魚も タナゴは……
県と市によると、せきは農業用水などをとるために置かれてきたが、ここ10年ほど、撤去や統廃合が進められてきた。水を必要とする周辺の田んぼが少なくなってきたことに加え、大雨のとき、せきがあると水位をより高めて川があふれやすくなるからだ。特に、2010年前後に豪雨で浸水被害があった後は、その動きが加速したという。
せきを外すことで、アユなどの生きものが上流と下流を行き来しやすくなる利点もある。実際、流れがある場所にすむ魚など、撤去がプラスに働いているとみられる種もあるという。
「本来の川の姿」に近づくは…