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転生少年の錬金術師道 作者:ルケア

少年編

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15話 7歳 才能に愛される? 

誤字報告ありがとうございます。

 朝、寝起きはまずまず。真ん中の共同井戸で顔を洗ってご飯の用意だ。…冒険者ギルドの前が殺気立ってる。少しでも割の良い仕事に有り付こうと必死だな。文字は読めないが、数字はなんとなくだが理解しているって感じかな。まあ基本、受付の人に読んでもらうんだろうけど。その時に一喜一憂するんだろうな。まあ、僕には関係ないので、ゆっくり食事をさせて貰いましょうか。今日もキノコと干し肉の麦粥だ。干し肉は昨日ほどには入れないでおこう。昨日は塩気が強すぎたもんね。


 食事を終えて鍋なんかを洗い、テントを片付けて馬車近くで待機。僕が乗るのは領都セロニア行きだ。…そう言えば領都にはマリー姉がいるんだったな。まあ、会わないだろうけど。


「セロニア行き~7日~セロニア行き~7日~。」


「セロニア行き~11日~セロニア行き~11日~。」


「セロニア行き~5日~セロニア行き~5日~。」


 セロニア行きの馬車が3台ある。…寄り道するかしないかが日にちの差かな。寄り道無しで行くよねそりゃあ。


「すみませーん。セロニアまで乗りまーす。」


「セロニアまでは大銅貨5枚だよ。冒険者証はあるかい? …白だね。よし、大丈夫だ。先払い大銅貨5枚だ。―――乗りな。」


「この馬車でいいですか?」


「ああ、問題ないよ。セロニア行き~5日~セロニア行き~5日~。」


 とっとと幌馬車に乗り込む。座る場所に寝袋を折って重ねてそれに座る。冒険者の心得に載っていた乗合馬車の常識らしい。馬車なんて初めて乗るから少しワクワクするな。…それにしても誰も乗ってこないな。僕一人だけか? いやいや少し早かっただけだろう。…でも村でもあんまり乗合馬車って通ってなかったんだよね。大丈夫かなあ。出入り口できょろきょろしているが、7日と11日の方に乗っている人も多い。…もしかして日にちが長い方が安いのか? それとも村に滞在する時間が欲しい行商人なのかな。でも行商人って基本歩きのイメージだし、こっちは最短距離料金で高いのかもしれない。


 結局こっちの馬車には誰も乗ってこなかった。…僕が乗らなかったらどうなってたんだろう。空荷でも出発するんだろうか。今回は僕だけの利用の様だし、乗合馬車の御者って一応公務員みたいなもんらしいからね。才能がなくても成れる職業、冒険者よりもよっぽどいいと思うんだけどなあ。倍率高いんだろうな。馬とか変な動物の維持費も領主様持ちだもんね。給金の他に駄賃としての乗車料を払う。所謂チップなんだよね。その代わり、村々を巡り、報告書をあげないといけない。凶作や人死にが多いとかを代官や領主様に報告書を上げる。だから、文字の読み書きが必須技能なんだよね。…文字の読み書きができるのは大きいよね。仕事の面でも。


 さてさて、いよいよ出発だ。幾ら錬金術師が昔に道を造ったっていっても、維持管理は必要なんだよね。まあ、それも錬金術師の仕事なんだけどさ。確か、黎明派っていう派閥がそんなことをやっているって聞いたかな、ジュディさんから。まあ、その維持管理をしなきゃいけないって報告も御者の仕事なのだ。公務員っぽいのもそんな仕事ばかりあるからなんだけど。


 それにしても、思っていたほどは揺れないんだな。サスペンションも無い幌馬車なのに、道がいいからなんだろうけど。それでもお尻に来る震動はある。寝袋を座布団にしていないと真っ赤になる奴だよ。ちゃんと冒険者の心得を読んでおいて良かったね。


 何事もなく馬車に揺られること半日、まだ日が明るいが、村についたので今日はここで1泊だ。…ここの教会前広場には冒険者がいないな。テントが一つもないもの。早速テントの準備をして、時間が余ったぞ。…素振りでもしようか。今回の乗合馬車は僕しか乗っていない。ということは、魔物が襲ってきたら僕が対処する他ない。


 武器は右手にレイピア、左手にマンゴーシュの二刀流スタイル。この世界では、若干変則的なスタイルだとは思うが、レイピアが手に馴染んだんだもの。レイピアには盾よりも短剣ってイメージなんだよね。前世の記憶のせいで。教会前広場で素振りを開始する。若干子供たちの視線を感じるが無視だ無視。そんな事よりも自分が死なない方が大事。羞恥で命は拾えないのだ。


 …なんといいますか、才能の力ってすげーと思います。レイピアを振る軌道っていったらいいのかな。どう振ったらいいのかが見えるような感じがするんだよね。そしてその通り振るうと確かに体に負担にならないような軌道を剣が描く。そして次の軌道が見える。選択肢は幾つかあるんだ。その中の一つをなぞるように剣を振るう。身体強化もしているが、それにしたって剣に振り回されることはない。しっかりとした剣筋が見て取れる。才能スゲー、これはもうチートなのでは?


 いかんいかん、傲慢退散傲慢退散。できることとできないことはある、オーケー? …よし。でも本当に才能さんは凄いな。何をしたらいいのかが大体でわかるってのも大概にぶっ壊れでは? 星を6つも振って貰ったエドヴィン兄は今頃どんな剣士になっているのやら。星3でもこれだけできるのだ。星6ならば…どうなんだろうね。未知の領域にまで踏み込むのかね。斬れないものでも斬れそうだ。


 そんなこんなで素振りをして、少し休憩と素振りを止める。そうすると後ろから拍手が聞こえる。誰だよ? と思って振り返ると、御者さんが手を叩いていた。見世物でもなかったのだが、型稽古にでも見えたのだろうか? しかし、拍手をされるほどの腕ではないと思うのだよ。まだ実践の経験もないし。


「いやー、見事だったよ。綺麗な剣筋だ。才能に愛されている、そんな剣筋だった。」


「? 才能に愛されているですか? 星の数ではなく?」


「そうだよ。星の数は関係ない。…いや、無いことはないが、星が少なくとも才能に愛されることはある。少年の剣筋は正にそれだったよ。我流ではあるが、無理のない振り、切れ目のない繋がりを感じる剣筋、それを無才であるとは思えない。星があり、尚且つ才能に愛されていないとその年では到底無理だ。そんな領域に達していた素振りだったよ。」


「ありがとうございます? でもよく解らないです。才能の軌道に合わせて振っていただけなので。」


「やはり、軌道が見えていたんだね。普通は幾ら星が多くたって、ある程度修練しないと剣筋の軌道が見えるなんてことは無いからね。それがそんな年端もいかない少年がまるで見えているかのように剣を振るっているんだ。才能に愛されてでもない限り、そんなことはあり得ない。」


「…才能があれば、星があれば軌道って見えるものじゃないんですか?」


「見えないものも多い。…いや、見ようとしていない、という表現の方が正しいのかもしれない。少年の場合は、才能に身を任せたのがいい方向に向かったようだね。才能が無理のない剣筋を教えてくれていた。幾ら才能があろうとも、我流で剣を振り回すだけなら、失礼だが、星1つも10個も変わらないといわれているからね。…それでも星10個だと直ぐに違和感を覚えるものだし、正しい剣筋の数が増えると言われているがね。逆を言えば、星一つでも、才能に愛されていれば違和感を覚えやすく、正しい剣筋になっていく。上達するスピードは星の数がモノを言う。ただしそれは正しいレールに乗った者の話だ。脱線していては何時まで経っても前には、上達はしないものなんだよ。」


「…なるほど、失礼ですがあなたは元貴族ですか?」


「ああ、そうだよ。剣士に星を2つだけ振られた、何の変哲もない元貴族の御者だよ。6年間も剣を振り続けてきたんだ。星2つでも剣筋をちゃんと見えるようにはなっている。ちゃんと才能が愛してくれているよ。…なんで冒険者にならなかったんだって顔だね。理由は簡単さ。御者になるタイミングが合ってしまったんだよ。初めは冒険者をやっていたよ。でもね、御者にならないかと知り合いの貴族家から声が掛かってね。星2つじゃどうやっても上にはいけないから、その時に辞め時だと思ったんだよ。だからこうして御者をやっている。」


「ありがとうございます。一応納得はいきました。」


「ありがとう。これでも自分で折り合いはつけているつもりだ。でも、少年の才能は私よりも上の様だ。少し羨ましいよ。これでも、始めはサーガに憧れた冒険者だったからね。」


「僕だって星3つなので大して変わらないと思います。」


「あれで星3つなら相当才能に愛されていると思うよ、私は。いいところまでいけそうな腕になりそうだよ。」


「ありがとうございます。でも、目標は錬金術師になることなので。」


「なるほど、すでに目標が決まっていることは良いことだ。錬金術師でも戦える才能は有用だ。鉄迎派なんかが有名だからね。剣の才能が腐ることは無いはずだ。」


 何ともまあ、元貴族なのに御者とはね。色んな所に居るものなんだなあ、元貴族ってやつは。…多分、就職に有利なんだろうな、元貴族って肩書。色んなところにこれからも出てきそうだ。前世の記憶には貴族って奴は碌でもない奴らばっかりで、傲慢に呑まれてそうな奴らって印象なんだけど、やっぱり前世の記憶は当てにならない。


 そんな訳で休憩も終わり、素振りを再開する。…この剣筋に身を任せるだけの素振りでも、御者さんの言っていることが正しければ意味がある行為なんだと思う。才能が愛してくれているってのもなんとなくだが分かったような気がする。才能がこっちだよと教えてくれているってことだもんね。正しい剣筋での素振りは、無駄のない筋肉を作るはずだ。僕にはこれがあっているという証拠なんだろう。


 そんな訳で夕方までみっちりと素振りをいたしまして、少々催してきたので村長さん宅にお手洗いを借りに行く。ちゃんと小銅貨1枚を支払い使わせてもらう。これも冒険者のマナーらしいからね。そして共同井戸で手を洗ってから今日もキノコと干し肉の麦粥だ。料理というほどでもない。普通に炊いただけだからね。キノコも保存瓶に入れておけば傷まないもんね。これは食べる用だから10個ずつと言わずにぎゅうぎゅう詰めにしてあるけれど。保存瓶は便利。きちんと火の後処理だけして食器を井戸で洗い、就寝。スライム燃料はまだ1個目が使えているのを見ると40個は欲張りすぎたかもしれない。


 朝、寝袋もそんなに悪い訳ではなく、しっかりとした睡眠を取れている。ただし、農家の朝は早いのだ。日の出と共に働き始めるくらいなので、起きるのはまだ日も上がってない午前時、井戸で顔を洗って、朝ご飯の準備。大体3回で1個のスライム燃料を使い切るくらいかな。てことは、40個は欲張りすぎたか。今度からは気を付けよう。食事を終えて、村長のお宅に一応行っておいて、出発まではレイピアの素振りだ。しっかりと鍛錬しておかないと、今回の旅に魔物が出てきたら僕が全て対処しないといけないんだから。少しでも体が動くように準備しておかないとね。


 そして、いい感じに体を動かしたとこらへんで、僕の方に声がかかる。…どうやら出発するらしい。『エクステンドスペース』に剣を仕舞い、寝袋を取り出して座る。そしたらまたごとごとと、幌馬車が進んでいった。まだまだ2日目、飽きが来るのは早いぞ。


面白かった面白くなかったどちらでも構いません。

評価の方を入れていただけると幸いです。

星1つでも私は一向に構いませんので。

5つ頂けると大変ありがたいですが。

出来れば感想なんかで指摘もいただけると、

素人読み専の私も文章に反映できると思います。

…多分。

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