20.テイムってこんなのでいいの?
「えーっと、初めまして?」
「あ、はい、初めまして」
丁寧にお辞儀したのは、学園七不思議系の一人、テケテケさんだ。
黒髪ロングのヘアスタイルで顔が隠れており、口元だけが見える女学生。
なぜか小学校なのに上半身のスタイル的に高校生くらいの容姿である。
高校の七不思議として造られたらしいんだけど、容姿が確定した時には向こうの七不思議が埋まっていたので仕方なくこっちの七不思議担当になったらしい。
いや、だからそういう裏設定をプレイヤーに話さないでくれません!?
ハナコさんや他の七不思議とは学校では会わないらしいんだけど、彼女もマスコットキャラの一人らしくたまにCMなどでハナコさんたちと一緒に出てたりするらしい。
ただ、容姿が容姿なのでちょい役らしいけど。
「いやー、まさかハナコさんをテイムしてるプレイヤーがいるとはねぇー」
「めちゃくちゃ陽気だこのテケテケさん!?」
容姿からすると陰キャタイプだし、テケテケだから殺伐とした怨みがましい女性かと思えば、無駄に陽気なお姉さんだった。
なんでもテケテケはロールプレイ派らしい。知らんがな。
「なんか楽しそーよね学校の外とか。ねぇねぇおねーさんもテイムしちゃわない?」
「えぇ? でもボスキャラってテイム出来ないんじゃ?」
「出来るわよ? ただ限りなく確率が低いのと、抵抗意思の高さが普通のNPCより強く設定されてるからほぼ不可能ってだけででいない訳じゃないのだよ」
「それと、本人が率先してテイムされようとしてる場合はテイム確率が上がるらしいわよ」
そんな裏設定知りませんやん。というか言っちゃっていいの? ゲームバランス壊れない?
「テケテケと一緒に外出てみるのも楽しそうだし、私はいいけど?」
「おねーさんは実体持ちだからちゃんと触れるわよ。ふっふーん」
胸を下から腕組んで挟む姿でアピールしてこないでください、なんか垢BAN担当さんが手ぐすね引いてニタ付いてる気がします。
「じゃあまぁ、とりあえず、テイム」
―― テイムに失敗しました! ――
「「「……」」」
「テイム……」
―― テイムに失敗しました! ――
「よし、追い込みましょう!」
「えぇ!? 待って待って! タンマですよハナコさん!? あ、そ、そうだ。ちょっと電話するから待ってて!」
スマホ片手に電話する上半身しかない女学生の図。
うん、シュール。
なんぞこれ?
時折頷きながら自分の髪弄ったりしている。
普通に女の子の電話風景なんだけど、下半身無いだけで無茶苦茶不穏な感じになるなぁ。
ハナコさんハナコさん、結局俺ってテケテケさんテイムしなきゃ駄目な感じ?
「この様子だとテイムしなくとも付いてきそうだけど……テイムしないと死んだらそれまででこの世界から退場なのよ」
「え? どういうこと!?」
「ほら、プレイヤーにテイムされた生物はAIがそのままでしょ。でも私達ボスキャラクターの場合は倒されたら弱体化したNPCに地位を譲ってこの世界から去るのよ。あとはCMとかに出れるキャラクターのAIはそっち方向で活躍するんだけど……ゴクドーとかCM起用も難しそうなキャラのAIは死んだらそこまで、多分デリートされるんじゃないかしら?」
AIの世界もシビアだなぁ。
なんというか、そういう事情聴くと是が非でもテイムしてあげたくなってしまう。
テイムってAI側からしても救いになるのかも。
「でも、いいのかな。これ、俺がチューブに流したら皆知っちゃうのでは?」
「ヤバそうな動画だったら運営側からテコ入れ入ってるわよ。気にせず流しちゃいなさい」
いいんだ?
「いいのっ! やったぁーっ、ぬらちゃん愛してるぅーっ」
ちゅばっと電話にキスをして、テケテケさんが電話を切った。
どうでもいいけど、口紅塗ってるんだ? 電話に口紅付いちゃってるぞ。
「ほらほら、申請送るわよー」
―― テケテケさんが仲間になりたそうにしている、テイムしますか? ――
どっかのゲームみたいなメッセージ来ちゃった。
「何ソレ?」
「私達AI側から特定プレイヤーと行動したいと思ったら表示できるテイムしてメッセージ。急遽作って貰ったの」
「うわぁ……」
ハナコさんが呆れていらっしゃる。
っていうか、テイムってこんなのでいいの?
AI側からテイムしろって来るようになったのか、それはそれで交渉次第で強力な味方が出来る可能性は出て来たから面白そうだけど……俺だけゲームバランス壊れて来てないかな?
「じゃ、とりあえずテイムで」
―― テケテケさんをテイムした! ――
普通にテイムできたし。向こう側からテイム要請来たらテイム率上がるのかな?
と、とにかく、これはこれでチューブの視聴者が上がりそうだけど、逆に炎上したら凄い事になりそうな……家、特定されたりしないよな? 不安になって来たぞ。