17.厳重注意
「うおっ!? なんだお前ら!?」
「君たちだね、彼からカツアゲをしたのは」
「嘘、警察来るの!? 金策にカツアゲって言ってたじゃない」
「運営のトラップか、畜生ッ!」
逃げようとしたヨシキだが、即座に動いた警官により投げ飛ばされ拘束。
ソレを見たヒバリは困ったような顔で両手を上げて降参した。
やっぱり警官のレベル高そうだ。
『私ならやれそうよ?』
やめて。機動隊とか自衛隊が来ちゃう。
「とりあえず様子見しよう」
「あれ? もう一人居たはず……」
カツアゲされた中学生は小首を傾げ、ま、いっか。と放置することにしたらしい。
結果、捕まった二人だけが罪を償うことになったようだ。
「二人でカツアゲした金額を折半……すでに使った分は借金としておくぞ」
「はぁぁ!? 借金とかざけんな」
「黙れ不良めッ。今回は厳重注意で済ますが、次は少年院にブチ込むぞッ!!」
マジッすか!?
これって前科一犯付いちゃった感じか。
中学生がしてやったり、とイヤラシイ笑みを浮かべてる。これはざまぁしたった。って顔だな。
しばらく警官二人がヨシキとヒバリにお説教を行い、満足したのか立ち去って行く。
そして中学生が普通のNPCが取る行動に戻った。
またカツアゲしない限りは通行人モブになるようだ。
「ああクソッ、マジで所持金マイナスじゃねぇか!?」
「あらぁーこれはちょっと辛いわね。運営に騙されたわ」
とりあえず危険は去ったな。行こうか。
「お、おぅ」
どした? ちょっとアバターの顔赤くない?
「気のせいだろ。そら、行くぞ。つかいつまで手握ってんだ変態」
「え? うわっごめん」
慌てて手を離すとくっくと笑うユウ。
あ、今のはアレか、ワザと告げたな。
なんでこいつは男のくせに男性誘惑してからかってんだよ。
「よーっす、祝罪科一犯」
ユウと二人、古本屋から出て二人の元へ。
「あーっ! テメェら何処に隠れてやがった!?」
「姿見えないと思ったら、もしかして知ってたの?」
「まさか? 店から出ようとしたらお前らが巻き込まれてたから隠れて様子見してたんだよ」
「あー、そのごめん。古本屋見付けたからつい」
警察かゴクドー来そうだからって逃げたのは言う必要はあるまい。
『まぁ、ある意味間違っては無いからいいんだけど、あんまし嘘は吐いちゃダメよ?』
はい、嘘吐きませんッ! ハナコさんには誠実ですっ。
『そ、そぅ……?』
「テメェらなぁ……」
「あーしの取り分残ってっからさ。借金に回すぜ」
「あら。いいの?」
「仲間だろ? ほら、ヨシキも」
「お、おぅ。あんがとよ。つか顔近ぇっつの」
にひっと笑みを浮かべるユウ。その顔が可愛らしかったせいで顔を赤らめ視線を逸らすヨシキ。
罪作りな女、いや男だぜ。
「あら、借金帳消しだわ」
「俺のもだ。意外と残ってたんだな」
うん? なんでそうなるんだ? 二人で分割してカツアゲした三人分の金額払ったんならまだマイナスのはずだけど……
「んー? あーしの分の金額引かれてないんじゃない?」
「確かに、あたしとヨシキの分はカツアゲして手に入れた分引かれたみたいだけどユウの分はそのまま手に入ってるわね。なんでかしら?」
ふむ。つまり、カツアゲすると警察が来るまでは入手金額が決まってないのかもしれない。
警察が来た時点で逃げ切れば自分が入手した分の資金はそのまま自分のモノになる、とかじゃないかな?
「……といった感じなのでは?」
思った事をそのまま言葉にしてみる。
「なるほどねぇ。だから警察に捕まったあたしとヨシキは罰金として入手した全額の3分の1ずつ奪われたってことね。確かに借金はコロッケ代分だった気がするわ」
「奪われたっつーか奪ったのを取りかえされたンだけどな。はー。まぁ収支でいやぁユウが手に入れた分がそのまま手に入ったからプラスになんのか。でも、その残りで借金返済して数十円余りとか、お前どんだけ使ってんだよ!?」
「本二冊買っただけなんだが? ヒロキの本が意外と高かったのよ」
「も、申し訳ない」
「クソぅ、一番得したのヒロキじゃねぇか」
「ほんとにね。カツアゲしなかったのに調達資金での買い物は一番多いとか……」
じぃっと二人に睨まれ背筋が凍った気がする。
ユウが苦笑いしてなかったら本気で不良に絡まれてると錯覚してしまいそうだ。
「でもよぉ。ヒロキの御蔭で全員借金地獄って状況にならなかったってのも、あるんだぜ?」
「あ?」
「あーしが古本屋に行ってポリ公に見付からなかったの、ヒロキが古本屋行くのを見かけたからだし。そうじゃなければヒロキもついでに捕まって四人で借金だったかも」
「確かに、その可能性もあるわね」
「俺が貧乏くじ引かされてるんですが、それは」
「ま、収支ゼロなら問題はねぇか。けどカツアゲで金稼げねぇとなると一端引き上げだな。俺はそろそろ落ちるけどよ、お前らどーする?」
「そうね、あたしもログアウトしようかしら」
「ヒロキはどーすんの?」
「え? ああ、僕はこれから夜の学校チャレンジかな」
「「「マジで行く気だったのか!?」」」
珍しく一言一句間違えなく三人が揃った。