12.不良プレイ
「んで、ここが音楽室な」
「い、意外とまともな紹介だった」
どこかでフクロにされる未来かと思えば普通に親切な案内で何処に何があってどういう用途で使えばいいのか丁寧に教えてくれた三人組。
容姿はヤバい人だけど凄く親切でびっくりした。
「そりゃそうっしょ、あーしらのは不良じゃなくて不良プレイだからさ」
……ん?
不良、プレイ?
「ま、まさか、その容姿で一般人!?」
「そりゃぁこの世界じゃ今まで通りの人格でやる必要ないし、せっかくならロールプレイしてみたいじゃねぇか」
「うふふ。あたしもさぁ。本当は男になりたかったのよねぇ、こうして男の身体で世界を体験できるのって新鮮でさぁ。まぁちょっと悪ノリして悪人風になってるけど」
「あ、でもあーしは普通に元族な。まぁなんっつーか自分モテなかったからさ、女の身体に興味あってせっかくならっ、てなってみたんだけど、中学生以上だと自分の胸揉んでも警告になっちまうんだ。で、結局小学生やるハメになっちまってさ。授業タルいっしょ」
って、胸ェ!? ほぼ真っ平らだけど押しつけないでぇ、垢BANになっちゃうぅ!?
「って、おいおいユウ、そんなにくっついたらフレンド登録してねぇと垢BANされんぞ」
「ありゃ、そういえば普通にフレンド感覚で惑わせようとしてたわ。なんで警告でてねーの?」
赤髪少女ユウが困惑しながら俺から離れる。
腕に抱きつかれてるのちょっと嬉しかったんだけ……ひぃ!? ち、違うよ、違うよハナコさん浮気じゃないよ!?
『浮気もなにも別に付き合ってませーん』
あれぇー、そうだったっけ? っていうかだったらハナコさんなんでそっぽ向くの。ツーンとした顔なされるの!? 嫉妬してるよね。してますよね。ここにこいつらいなかったら即行土下座してるところだったよ俺。
「そういや、自己紹介まだだったなァ兄弟。俺ァヨシキだ」
「あたしはヒバリよぉ」
「あーしはユウね。よろしくー、あ、これフレ登録よろしく」
三人から一気にフレンド登録が来た。え、これ登録しないとダメな流れ?
「えーっと、ヒロキっす」
三人のフレ登録に許可をだして告げる。
「堅ぇなぁ、オイ、そういうのはち……おっとあぶねェ不良ムーブでもさすがに言えねェワードがあるんだった」
何を言おうとしたんだこのリーゼント頭。
「あ、そうそう、一応言っとくがこいつはリーゼントだ、どっかのモノ知りがポンパドールとか抜かして来る時もあるが俺はリーゼントとして育ったんだ。もしも俺の髪型をポンパドールなんぞと言いやがったら兄弟だろうが迷わず殴り飛ばすからよぉ、よろしくな」
よろしくされたくねぇ!?
「っと、そろそろ昼時か」
「教室に戻りましょうか。給食出るらしいわよ」
給食……ま、まぁ折角だし戻っとくか。
「そういやヒロキは何組? あーしは2組だけど」
「え? マジで、俺も2組」
「おいおい、同じ組かよ。お前らもう付き合っちまえよ」
「いや、男同士はちょっと……」
「アバター女じゃん」
あの、俺の意見は?
三人はぎゃあぎゃあ喚きながら自分の教室へと向っていく。
『賑やかな人たちねぇ』
「ハナコさんごめん。折角二人で学校探索する予定だったのに」
『良いわよ別に。それに……せっかくなら、夜の学校、探索しない?』
ハナコさんと夜のデート!?
そそそそそそれは、つまり、彼氏彼女の関係なのでは!?
『自分以外の七不思議って私知らないのよね。折角だし探索がてら探してみない?』
「おーいヒロキ、何してんの」
下手に怒らせると恐そうなので声を掛けられた瞬間弾かれたように俺は三人に合流した。
「ここってさ、輝以外だと誰も話しかけてこないのよね」
他の二人と別れ、ユウと共に教室に戻ると、説明士輝がこちらに軽く手を振ってきたので返しておく。
「彼、説明用のAIだろ、初心者用に案内とかQ&Aをしてくれるはずだから基本人当たりが良いんだと思うよ」
「ああ、なるほど。いきなり気安く話しかけて来たから殴ろうかと思ったけどそういうことならしゃーねぇか」
アクティブぅ。
「これから給食だよ。班で机くっつけて食べるんだけど、二人とも仲いいよね。一緒の班になったほうがいい?」
「あー、まぁそうだなぁ。あっちの班NPCばっかだし、ヒロキの隣がいっかなぁー」
だから抱きつかないでくださいますか? 相手がネカマだと知っててもドキドキする感触が腕に伝わって来るんですけど!? というか密着し過ぎると警告来るんじゃないの!? めちゃくちゃ密着してるんだけど。
『まぁ小学生だと性別の境界は結構曖昧って聞くし、甘くなってるんじゃない? その代わり成人男性や成人女性だと家族以外の小学生抱きあげると警告喰らうらしいわよ』
なるほど、小学生同士だから許される距離感なのか。
その辺り結構曖昧過ぎて知らないうちに垢BAN貰いそうで恐いな。