10.初授業
「おお、アイテムだ」
出現したのはえーっと、なんだこれ?
「鑑定は出来ないの?」
「多分鑑定スキルがいるみたい。俺の目だと???の肉、と???のカード?」
「カード?」
アイテムを拾い上げてアイテムボックスに入れた俺に、ハナコさんが驚く。
「それって妖怪カードじゃない?」
「なんですその妖怪カード?」
「あれ? 知らない? 一時期ほら、メダルの奴流行ったじゃない妖怪の」
一時期って言われても俺の生きてた時代には流行ってないなぁ。
「あれは確か昭和とか令和時代だったはずだけど……」
ハナコさん、このゲームはその辺りの時代だけど現実世界じゃ数世代前のことだからね。
「ようするに、それのパロディーみたいな感じでカードゲームがこの世界でできるのよ、んで、そのカードは敵を倒すと確率ドロップするのよ」
「ハナコさんも?」
「ええ。私も、今はもうNPCボスだけど、倒せば貰えるかも?」
「ハナコさん倒すのは気が進まないのでちょっと欲しいけど諦めます、倒すのは無理」
そもそもレベル差があり過ぎて倒せないって現状もあるけどな。
校門を越えて校舎へと向かう。
昨日は結局無断侵入しただけだし、こうして正式に学校に入るのは今日が初めてだ。
「そういえば俺の教室ってどこだろ」
「確か下足場で自分の場所が点滅してたはずよ」
点滅? あ、ほんとだ。ロッカーの一つが点滅してる。
名前もヒロキだし間違いないな。
「ここはー、1年2組ね」
なるほど、下足場のロッカーでどのクラスかは分かるのか。
あ、上履きに履き替えたら教室に目的地マーカーが移った。
廊下を歩く学生たちがおはようと言ってくるので俺もそれに返して挨拶していく。
ハナコさんも通路を歩く幽霊さんに挨拶していく。
昼間にもいるんかいっ!?
「ここが1-2の教室ね」
「どうでもいいけど、教室にテロリスト飛び込んで来たりとかのイベントは無いよね?」
「さぁ、あるかもしれないわね」
「それだとエンジョイ勢巻き込まれるんじゃ?」
「サーバーが違うから彼らと会うことは無い筈よ。このサーバーで顔を合わせるのはNPCか格闘スキル持ちのマスターだけのはず」
なるほど、ちゃんと住み分けはされてるのか。
戦闘スキルも霊感スキルも持ってない、昔の日本を味わいたいだけのプレイヤーは別サーバーでほのぼのな日常を謳歌しているようだ。
俺がいるのは戦いあり、心霊現象ありの殺伐とした日常サーバーらしい。
「あれ? 初めて見る顔だね?」
「え? ああ、おはよう。俺は昨日出てなかったからな」
「そうなんだ。僕は
ばりっばりのNPCでした。
恐らく俺みたいに昨日の入学式出てなかった奴に説明してくれるお助けキャラなんだろう。
「学校で分からない事があったら聞いてね。僕でよければ助けになるよ」
いいところのお坊ちゃんって感じの少年は、それだけ告げると自分の席へと戻ってい……こうとしたのを呼びとめる。
「せっかくだからさ、俺の席、どこか教えてくれないかな?」
「えっとヒロキ君は……ここの席だね」
『あら、名前言ってないのに普通に名前言ったわね』
NPCキャラなうえに説明キャラだからそこは指摘しないでおこう。
こいつには相手の名前を知る特殊能力があるのさきっと。
指摘された座席に座る。
うん? なんか俺、見られてる?
『ヒロキというよりは私を見てないかな? おそらく霊感か霊視持ちね』
なるほど。ハナコさん、もしくは幽霊が俺に憑いて来てるから驚いた顔してるのか。
でも、驚いてる程度でハナコさんっ、とかは言ってないから恐らくあいつ等が取ったのは霊視じゃなくて霊感だな。
霊感だと初期レベルはそこに霊が居る、ということが分かるだけらしいし。
「はーい、ホームルームをはじめまーす」
爽やかなイケメン顔のNPCが教室に入って来る。
どうやらこのクラスの先生のようだ。
残念、女性の先生だったらよかったのに。
出席確認が始まった。
中学校からは出席日数気にしなきゃだけど、小学校の内は別に授業でなくても問題無く卒業できるらしい。
なので、別に授業受ける必要はないんだけど、せっかくだから一時間目の算数出てみるか。
ホームルームが終わり、俺の初授業が始まった。
いや、待って。今更足し算の話とか退屈過ぎでは?
というか、今の俺新一年扱いだから授業は確かに最初からだった。
本来なら数字の書き取りから始めるはずだったんだろうけど、この世界では足し算からさっさと入るようだ。
数字の書き方分からない人はいない、と思ったんだろうか?
そしてチャイムがなるまで45分。
眠気が襲ってくるのでうつらうつらしていると、チャイムが鳴って一瞬で醒めた。
うん、授業、めっちゃ退屈だわ。これ以上無理にでると時間無駄にした気がしそう。