7・初めてのテイム
「ハナコさん、一目惚れしましたッ! 俺にテイムされてくださいッ!!」
迷った揚げ句、ドストレートにお願いすることにした。
土下座で誠意を見せつつ100%確定テイムの使用許可を彼女自身にお願いするスタイル。
……
…………
………………
あれ? おかしいな?
結構時間が立ってるけど反応が無い?
でも攻撃とかされて俺が死んでない訳だし、敵意を向けられてる訳じゃなさそうだ。
反応があるまで待つべきか。
しばしの葛藤。でも、意を決して顔を上げる。
果たしてハナコさんは……真っ赤な顔して固まっていた。
視線が合い、気不味くなる感覚。
でも今視線を逸らすと絶対に失敗する。そんな予感がして目を離すことができなくなった。
声を掛けるべきか、向こうが話すのを待つべきか。
「「あの」」
なんとか促すべきかと声を出したその刹那、被った。
御蔭で再び沈黙だ。
相手が話そうとしているんだから待つべき。と思いつつもこちらから話題を振った方が話しやすいのでは、という思いもあるという、ああもう、どうしたらいいんだっ!?
「ええい、話が進まんわーっ」
「「うわっ!?」」
沈黙は、横合いからの大声によって破られた。
俺とハナコさんが同時に振り向いたその先には、タマモが憤慨した顔で仁王立ちしていた。
「あれ、タマモ?」
「じれったいわねっ。私の説明ブッチして何処行ったかと思えば、なんつー相手をテイムしようとしてるのかっ。ハナコもハナコよ、ボスなのにちょっとアリかもとか思ったわよね」
「だ、だって、あんなストレートに告白されたら、し、しかも私幽霊だよ。悪霊だよ。一目惚れなんてそんな……ど、どうしようタマモさんっ」
「管理AI的には面白そうだからハナコ次第でOKだそうよ。あんたどーすんの、ボスなのにテイムされてみる?」
「それは、えっと……」
凄く恥じらう乙女感出しながらハナコさんがこちらを流し見る。
「テイムって、一緒にいたい、ってことだよね?」
「はいっ!」
「うぅぅ。本来はボスだからダメなんだけど……不束者ですがよろしくお願いしますっ」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ、やったぁ!!」
「やったぁ、じゃねぇッ! さっさとテイムしろや!!」
「すいませんっした!?」
タマモ……様がおキレになられたので慌ててテイムを発動してハナコさんをテイム。
ハナコさんは抵抗の意思を示すことなくテイムを受け入れ、ここにテイミングが成立した。
テイムって、こんなんだっけ?
「はー、とりあえず、チュートリアルの延長でテイムに付いて説明するわ」
そして遅れながらテイムの説明を受ける俺。
なるほど、敵のHPを4分の1以下に減らすとテイム可能になるのか。HPが低いほどテイミングの成功率が上がり、本来ならば戦闘中のボスキャラテイムは不可能。
ただ、前例がなくゲーム開始直後な事もあって初期テイムでのボス捕獲に関しても100%扱いだったので今回は特例でハナコさんを仲間にすることが許可されたようだ。
今後同じ事が起きないようにボスのテイムに関しては初回100%捕獲は禁止、0%として処理されるんだとか。
あっぶね。他の奴がやってたら知らない間に修正されてるバグ扱いになるとこだった。
「はぁ、しっかし、AI管理と運営での管理でかなり厳しくしてるつもりなのに、こういった想定外のプレイでバグ技が発見されるのはちょっとアレよね」
「とりあえず俺としてはハナコさんと行動出来るようになっただけで十分過ぎるッす」
「はいはい、見付けてくれてありがとよ」
なんか、タマモ様口調悪くないですかね?
「タマモの素はあんなものよ。そもそも大妖怪で傾国の美女だもの」
「え、この説明AI普通に妖怪の玉藻なの!? なんでそんなのが説明してんのさ」
「高度な学習知能持ちAIがまだ少ないのよ。だからプレイヤーへの説明はまだ出てくる予定がない大妖怪や地球外生命体が受け持つことになってるの」
地球外生命体に説明されるのはちょっと嫌だなぁ。
「あれ? だったらハナコさんも?」
「私は最初からここのボス扱いだから。初回のみ私が戦って、倒されたら思考回路の無いボスとして使い回しされる予定らしいわ」
「ちょっと、ただのプレイヤーにそういう話はしないように、内部事情だからっ」
「あ、そうだった」
ということは、俺がテイムしてなかったらこのハナコさんはハナコさんリベンジに燃えるβテスターの誰かに攻略されて撃破、以降はただの中ボス扱いとしてAI付いてないNPCにバトンタッチすることになってたわけか。
「あれ? その場合ってハナコさんのAIはどこに?」
「一応マスコットとして顔を売ってるからね。彼女のAIは宣伝側に移動するつもりだったわ」
要するに広告塔のVチューバーみたいになる訳か。
「貴方がゲームからログアウトしてる間にハナコ借りるけど、そこは了承して貰うわよ。この娘はこのゲームのマスコットキャラでもあるから」
「それは別にいいですけど。ログイン中はずっと一緒ってことでいいんです?」
「や、やだもぅ」
くぅぅ、顔を赤らめるハナコさん、可愛過ぎるっ。