6・小学校潜入作戦
さて、日付について説明しよう。
タマモの話だと現実の一日を三分割して0時から8時までを一日、8時から16時までを二日、16時から24時までを三日としてゲーム内時間が経過する。
俺としてはニート生活になるので三日全部出ようと思えば出られるんだけど、ソレだとさすがに現実世界の生活が出来なくなるので基本二日目と三日目の二日分がメインになりそうだ。夜中は多分寝てる。
どうでもいいけどゲーム開始時間の関係で今10時くらいのはず。つまり現実世界で2時間後に夜中になるはずだ。
しかし、小学校に侵入するにはゲーム内で朝から昼の内じゃないと見回りの先生等に弾きだされてしまう。
夜中になれば幽霊が闊歩しているのでレベル1の俺なんて即死確定である。
なので、掲示板で見付けた開かずの間に行かなければならないのだが、時間がシビアだ。
ゲーム内では思考加速技術で、体感時間でちゃんと一日過ぎる時間が流れてくれるが、現実世界との齟齬がちょっと不安ではある。
まぁ仕事してない訳だから問題は無いのだが。
とりあえず、小学校にやってきた。
他のプレイヤーは今入学式に出ているようで、今日はほぼ探索等はしないだろう。
俺だけは入学式に出る前の段階なので学校に来ると不審者扱いになってしまう。
つまり、先生だけでなくNPC生徒に見付かるだけでも危険なのだ。
潜入ミッションだし段ボール欲しいな。と思いながら周囲をせわしなく警戒して小学校に侵入する。
見張りみたいな存在はいなかったので楽に侵入できた。
靴は……とりあえず脱いでアイテムボックスに入れておこう。
攻略サイトで頭に叩き込んだマップを頼りに開かずの間へ。一階なので結構すぐに見付かった。
開かずの間に辿りつくと、外から見えないように身を隠して一度ログアウト。
タイミングの関係でしばらく暇なので昼食を取ることにした。レンチンしてレトルトカレーをかっ込む。
数時間、現実世界の作業を行い時間を潰し、再度ログイン。
何度も攻略サイトを確認したので時間は大丈夫なはず。
このゲーム、ポータル的な場所以外でログアウトすると次回ログインはログアウトした場所に出てくるか、一つ前に登録したポータルの場所にでるかを選べる。
今回はポータル登録はしてないので、ログアウト場所の開かずの間か、自分の自室のどちらかが選択肢として出て来た。
当然、開かずの間に出現。
周囲を見回すが、誰も居ないらしい。
次に時間を確認。
ゲーム時間内の20時59分。丁度この付近を巡回する先生が宿直室に帰るためにこの場所を通り過ぎ、1分だけ誰も廊下に居ない時間が存在するのだ。
さぁ、もう少し。
懐中電灯のライトが開かずの教室内を一瞬照らす。
びくっと心臓が跳ねたが、声は出さなかった。
良し通り過ぎた。今は57分。
あと2分。
巡回の先生が立ち去っていく。
ここで焦って出て行くと、気配に気付いた先生が踵を返して戻って来るので、59分になるまで待たなければならない。
しかし、59分にさえなれば、戻ってこないそうだ。
先生も幽霊たちの時間に外には出たくないんだろう。
58……まだ。まだだ落ち付け。
タイミングは1分もある。ドアの前で待機すれば大丈夫。
先生の背中が角に消える。
58、まだか? 今出ると先生が戻って来るんだよな。59になるまで……今だッ!
音を立てないようにドアを開いて廊下に出る。
よし、誰もいない。後は21時になる前に女子トイレまで駆け抜けるだけ。
時間は少ない、急げ。急げ、幽霊達が出てくる前に。
滑り込みで女子トイレに入り込む。
廊下に幽霊が湧き上がるのが一瞬だけ視界に映った。あれは、テケテケか?
今は用事が無いので放置だ放置。
一番奥にあるトイレ、あれか。3回ノックして、っと。あ、違った。言いながらノックだっけ。
「ハナコさん遊びましょー」
ノックしながら声を出す。
さぁ、どうだ?
「はー、ぁー、いーっ」
どばんっとドアが内側へと開かれた。
俺の身体が引っ張られる。
トイレに入ったその瞬間、周囲が一瞬で変化した。
狭いトイレの一室から一転。黒くおどろおどろしい昏い泥のような物が周囲を覆った世界に、一人だけ、宙に浮いてこちらを妖艶な笑みで見つめる幽霊少女。
妖艶といっても体は出るところが出たような女性らしい体格ではない。
小学生と思われる体格に少し膨らみかけた胸。白く透き通った四肢は細く華奢。
おかっぱ頭に赤い吊りスカート。ブラウス姿の少女は、俺がこのゲームを始めようと思った切っ掛けそのままの姿だった。
「ふふふ、さぁ、私と楽しく楽しく遊びましょうか」
ああ、やっぱりハナコさん、愛らしい……
普通に闘うなら即殺されるのは分かってる。
テイムしようにもソレをさせてくれるかという問題もあるしテイムの仕方、説明前にこっち来たからよくわからない。
どうする? どうすればいい? ええい、かくなる上は、誠意を見せろっ!