5・説明途中でバックレる
「……それで、一般人に攻撃すると警察が来ます。警察を攻撃し過ぎると機動隊が、自衛隊、米軍などなど倒せば倒すほどさらにレベルの高い存在が倒しに来ますので気を付けてくださいね」
多分今の実力なら警察来た時点で詰んでると思います。
「不良たちが相手の場合は警察が来ない代わりにゴクドーと繋がってる可能性があるので気を付けてください。抗争に巻き込まれたりしますから」
そういうとこまで現代世界に似せなくて良かったと思うんだけど。いや。そういう組織に入って悪役プレイしたいって人もいるんだろうなぁ。
まぁ要するに、そういうヤバそうな人種には近づかない方針で、絡まれたら基本逃げる。
襲われてる人助けることがあっても顔バレは避ける。うん、コレを基本方針にしよう。
「ではでは、初期所在地である自宅に向いましょう。ほいっとなー」
説明が終わったらしく、周囲の景色が一変する。
背景黒で滅茶苦茶視界悪かったもんな。
それに比べると……おー、なんか現実世界に戻ったみたいだ。
自室は現実とはちょっと違う広々とした個室に変化した。
灰色の絨毯と青を基調としたベッド。
ベッドか、既に俺の部屋には無くなった過去の遺物だ。
せめてこの世界でだけでも存分に使わせて貰おう。
ちなみに、自室の候補はいろいろ選べたんだけど、一番オーソドックスな部屋にしておいた。
なんなら畳式で布団敷ける部屋とか、ファンシーなぬいぐるみに囲まれた部屋とかハロウィン限定っぽい殺伐とした黒と茶色の部屋とかあったんだけど、普通のベッドが懐かしかったのでこの部屋にしたのである。昨日までベッドで寝てたけどな。
「マップを確認してくださいな。点滅してる場所が通うべき学校になりますよ」
言われ、視界の端にあるメニューからマップを選択。
マップの表示方法を選択できるらしく、全画面、非表示、画面端に小マップ。基本は小マップにして視界の端に常駐させておこう。
ゲーム感が増すから煩わしければ消してもいいかもしれないが、道を覚えるまではこれに頼るべきだろうな。
「マップの確認は終わりました? では外に出ましょう」
「この後スキルの説明を終えたら一度学校に向いましょう。道を覚えるまでは幽霊等は襲って来ませんから最初だけは楽ですよ」
でも、襲ってくる存在が居るのは知ってる、犬だ。テイム用に犬だけは襲ってくるのだ。
家の外に出てアスファルトの大地に足を下ろす。
凄いな、普通に現実世界歩いてるのと大差ないクオリティだ。
車の音が遠くから聞こえるし、誰も歩いてない道路だけど遠くで人の息遣いがあるのがなんとなくわかる。
そんな道をタマモと二人歩きながら学校へと向う。
「まず、戦闘スキルの蹴り技、これは蹴りを使っていれば経験値が溜まっていくわ。他の技系スキルも同じ、拳ならパンチを、剣なら素振り、経験値が溜まればレベルが上がってスキルを覚えるの。技系スキルは技スキルを覚えておけば複数所持してても全部使えます。スキルを使うと体が自動で動いて前蹴りとか、回転蹴りとか、腰の入った一撃を放ってくれますよ。自分で出来る方はスキルの補助が無くても使えますけど」
つまり現実で鍛えてる人は自分が使える技が使えるって訳か。スポーツ選手優遇だなぁ。
俺はそんなもの使えないからスキル覚えて恩恵にあずかるとしよう。
「得意武器の素手は何も持っていない状態だと全能力があがりますよ。攻撃力だけではなく防御力や機動力にも影響が出ます。レベルが低い間はそこまで実感できませんけどね。これは素手のまま敵と闘ったりすると経験値が溜まっていくのでお得ですね」
パッシブスキルになるみたいだな。
戦闘状態になれば自動で上がっていくようだ。
基本素手で蹴りまくるつもりなので一番レベルが上がりそうだなぁ。
「幸運はちょっと運がよくなりますが、これってどうやってレベルあげるんでしょうねぇ?」
あ、普通に生活するだけじゃレベル上がらないパッシブスキルもあるのか。
これは攻略サイト見て探っていくしかないなぁ。
死にスキルにはならないだろうけどレベルが1のままだと恩恵が余り受けられないから早急にスキル上げる方法調べとこう。
「ラッキースケベに関してはソレ系の状況が起きることで経験値が溜まりますわ。あ、でも私にはおさわり禁止でおねがいしますね。お金貰いますよ。法外な、ね」
できれば起こってほしくないような、起こってほしいような。でもお金は取られたくないのでこのAIとは起こらないでほしい。
「霊視はほら、あちらをご覧くださいな」
言われ、視線を向けた先には、電柱が一つ。その脇にぼやっとした人型が見えた。
「霊視のスキルが弱いのでぼやっとしか見えませんけど、アレが地縛霊ですよ。ちなみに物理攻撃は効きませんからヒロキさんは絡まれたが最後、取り憑かれてしまいます。除霊にはお金がかかりますし、お寺や神社に行くにも遠いですから取り憑かれ過ぎて呪い状態にならないよう気を付けてくださいね」
「呪い、ですか」
「ええ、複数の怨霊に憑かれると勝手にアバターが自殺しようとしたりしますから」
「仕様がえげつないっ」
「普通は霊視とか霊感と共に対抗策スキル覚えるモノなんですけどね。まぁせめて清めの塩くらいは常備するようにしておいてくださいな。商店で買えますよ」
「そういえばお金ってどうやって入手するんです?」
「バイトするかカツアゲするか、敵性存在を倒しても入手は可能です。そこはゲームなので」
なるほど、犬とか倒してもお金が……あ、犬だ。
「さぁ出て来ましたね。最後のスキルテイムの説明をしますね。今から行う最初の一回だけは100%テイム出来る状態ですので犬にテイムを使ってみてください。最初の仲間ができま……あれ? ヒロキさん?」
当然、犬等にテイムスキルを使う訳がなかった。
俺はダッシュで学校へと向う。さぁ、ハナコさんテイム作戦、開始だーっ!!