ライラック→カンベの結末です。ライラックがどうしてカンベを気にし始めたのかの初出の過去回想が入ったりします。
※小説ではないので読みにくいです。ご了承ください※
カンベ:藤本和臣(ふじもとかずおみ)
ライラック:東奈緒(あずまなお)
(87話で出そうと試みて名前を出せませんでした)
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・87話時
カンベが好きなものの、ギルドルールを思って自分なりに抑えていたライラック。
しかし林とリリィの仲睦まじい相方関係の様子を見て、恋愛感情の気配に心が揺れてしまう。
ライラックなりにカンベの事を考え、カンベの考え方も一応は理解しつつも、それでも自分がカンベのことを好きだという気持ちも大きく、あれやこれやと推論を並べて悩んでしまう。
(そして超深読み推理へ)
以前のカンベならはっきりとルールを掲げて切り捨ててもおかしくない為、歯切れの悪さからリリィとの関係を邪推し、カンベは『いつも通り』を振る舞うように葛藤してるのではと考える。
・88話以降
藤本(カンベ)と桜井(リリィ)の84話での会話を経て、ゲーム内ではそれぞれが『いつも通り』に過ごして行きます。
中の人達はそれぞれに思うものがあり、考え続けます。
桜井→いくら自分の恋心に素直になったとは言え、なんて事(森子が好き)を話してしまったんだ…。と後悔しつつ『いつも通り』を守れそうで感謝する。カンベが昔から厳しい人だと知っていたので、藤本に感謝しつつ、その内心を心配する。
森子→カンベさんとリリィさんの様子が表向き『普通』だけど、絶対おかしい!自分のせいかも!!いやでも!!私は決して身の丈を忘れた振る舞いはしません!桜井さんに失礼です!!と誓う。(ドキドキはする)
藤本→ギルドルールは建前、と口にしては見るものの、藤本とカンベという立場の違いからくる矛盾にこれからの自分のことを思う。桜井と森子がくっついたところでギルド的に別にすごく困るわけでもないし、ゲームがリアルを阻害するのは違うとも考え悩む。
ギルドルールについてこれからどうしていくか、ぽこたろうに相談をしてみようか考え始める。
※ご意見色々あると思いますが、ここでは「ルール」は必要だけれど、十分に考えた事ならば思いを優先し言葉にしてみるのも別に悪くはないのでは…という雰囲気です。彼らの中の信頼関係を踏まえての舵取りです。
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そんなやりとりを知らないライラックは、リリィの様子を特に注意深く眺め始める。
いい人であるリリィと、カンベを悩ませる魔性の女リリィという2つの可能性が頭の中をめぐる。
考え事をしていると、暇そうにしてるからと言う理由でニコから狩りパーティーに誘われる。
その時にライラックは、本人はさりげないつもりで実は全くさりげなくない質問を投げまくってしまう。
└リリィちゃんって元々優しいけど、林くんはやっぱり特別…なんだよね?!カンベとは付き合い長いんだろうけど、二人の時はどんな感じだったの?みたいな感じ
※23話の時にカンベとリリィが嘘の相方宣言をしていたのですが、ライラックはその時代からずっとカンベとリリィが特別な信頼関係を結んだ間柄だと思っていた。
それをきいたニコが、ああそういえば…と過去の話をし、カンベとリリィのかつての相方宣言が嘘だと知る。そして仲間のために自分がそう思われても構わないと男気を見せたカンベのエピソードにますます恋心を加速していく。
そしてリアル友人のつかさに話しては「ま~た言ってるよ…」とやや引きされる。
いよいよ来る所まで来てる奈緒に、「告白したってどうせ無駄でしょあんなオッサン」と心配故に冷たく言い放つが奈緒は気づかず、相方宣言が嘘だった事や恋愛について悩んでいる事実がいい感じに自分の中で(勝手に)繋がっていく。
リリィちゃんとのことは嘘→でも気持ちは好きだったかもしれない!相手のために身を引ける健気さ!→ギルドルールの恋愛禁止項目に悩んでる!→失恋をしながら二人のためにギルドの事を考えるカンベの事を幸せにしてあげたい!→好き!!!恋心溢れちゃう!!!オジサンでも良い!!!!!(ココ)
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後日、カンベログイン時にライラックからペア狩りパーティーに誘う。
「なんだか最近は二人で喋ること多いよね!」とライラック。
カンベは「そうか?別に最近じゃなくてもウチはアクティブ数少ないし、こんなもんだろ」と返す。
実際ジョブチェンジ後レベリングの都合上多くなっていた。カンベはいつも通りはぐらかす。
しかしライラックはカンベが自分との間合いを縮めてくれているのかもと期待を膨らませる。
そんな様子のライラックを察するカンベ。
ライラックが自分を妙に慕っていたとしても、この時はまだ上手いこと言えば大丈夫だと考える。
狩りを始めてそこそこ時間が経ち、休憩にしようとカンベが提案し二人でセーフエリアに座り込む。
二人で並んで座り、何か話しかけてくれないかとログを眺める奈緒。しかしそう長く待てず、心に浮かんだことをチャットへ入力していく。
「カンベはさぁ、…誰かを好きになったコト、ある?」
「えぇ…?」
言われた質問にカンベとして、いつも通りの怪訝な空気を出そうとする。
藤本は(この間の事を変に思われたかな)と渋い顔になる。
しかし、茶化すのも良くないと思い、真面目に返答を続ける。
「さぁ…多分無いんじゃないか。わからないけど…」
「好きな人って言える人、一人も居なかったの?」
「好きな人ねぇ…」
言われて考えて、一瞬森子の顔と桜井の顔が浮かぶ。直近の恋愛ネタが浮かんできて「そうじゃないんだよな」と真剣に思い出そうとするが特に浮かばない。
「気になる人っていうか」と続けられ、再び森子の顔が浮かぶ。
(あれは気になるじゃなくて心配なんだよな。なんかおっとりしてるし)
頭に浮かんだ考えを払ってから、この質問をしてきたライラックを見る。
いつも通りの表情をしているけれど、緊張している様子。
諦めたように視線を外し、言葉を返すカンベ。
「…っていうか、お前はさ、どうなの」
「え」
分かっていながらわざと聞くカンベ。本当はこんな会話を避けたかったものの、先日気持ちの部分を大切にするべきと説いた自分の言葉を振り返る。
覚悟を決めたような顔になる。
言われたライラック(奈緒)は予想外の問いかけに顔を赤くしパニックになる。
突然のフリに、今ここで伝えないでいつ伝えるの!と勇気を振り絞る。
「私は…好きな人いるよ」
「…そうなのか」
「私っていつも適当って言うか、流されやすいっていうか、結構ノリで生きてるコト多くって」
ゆっくり上がってくるログを眺める藤本。
昔(51話ラスト)にもし自分への好意を向けられたら、マスターとしてはっきりした態度を取らなければならないと思っていた事を思い出す。
しかしいざ、お互いの為にギルドを抜けようとした大人二人を目の当たりにして、ライラックもそうなってしまうのではないかと悩む。自分には引き止める事が出来ないかもしれない。
「そういう私を叱ってくれる人、私はテオ君くらいしか居なかったからさぁ…嬉しかったんだ」
昔パーティー内の揉め事で犯人探しが始まって、ライラックが標的にされてしまった際にかばってもらった事、はっきり反論できていない事を指摘されて「俺はちゃんと見てたから知ってる」と元気づけてくれた事。
所属していたギルドを抜けて一人になっている時に「試しに来てみたら」と声をかけてくれた時の事を思い出す。
藤本は「そんな事もあった…か」と思い出すも、当たり前のことを言っただけだったんだけどな‥と振り返る。
ライラックからの好意を知ったのは、昔パーティーを時々組むくらいのフレンドだった際、周りの知り合いに「あの子カンベが好きみたいだよ」みたいな事を複数人(他のギルドの人たち)に言われて、実際頻繁に向こうからチャットを貰っていた事をなどを回想する。その後もなんとなくそういう素振りに見えていた。
回想がおわり、実は自分のことじゃなかったりするかな…と今更自惚れた感覚の可能性に不安を覚える。
「…そういう人が…いるんだなぁ」
「……えぇぇ…??」
しらばっくれるの!?ここで!?と項垂れる奈緒。それとも覚えていないのかな…と思いながら言葉を続ける。
「私にそんな風に指摘する人なんて……カンベしかいないでしょ!!!!」
「私本当に嬉しかったんだから!私のこと励ましてくれたこととか覚えててよ!!!私ずっとずっと覚えてるんだから!!!!」
ライラックが顔を赤くしながらまくし立てるように告げる。
そしてコミカルな空気のままに、その言葉を遠回しに否定する。
「いや本当ごめん!怒ってばっかだったなーって思い出してた!」
「いいよ!!!!カンベはそういう事をなんて事ない風にするのがすごいんだから!!」
顔を赤くしながら必死に言い放つライラック
打ちながら切なげに画面を見つめる奈緒。
(私ばっか勝手に好きになっちゃうんだ。カンベにとって、私は特別でもなんでもなくって…ただの仲間なんだ)
言葉の雰囲気がかわる。
「…私本当に、カンベのことが好きなの。そういう所も好き。誰にでも平等な所が好き。このギルドの皆が優しいけど、私はカンベの優しさが一番好き」
「カンベが褐色髭面の、私よりずっとずっと年上のオジサンだったとしても好き、どんな人でもカンベがカンベなら私はきっと好きなの」
真剣な様子で言うライラック
眉を寄せながら静かに画面を見る藤本。
(俺はどうしたらいいんだろう。俺はどうしてやれるんだろう。どうしたら、俺は『正しくなれる?』)
ギルマスとして正面から叩き切るか、友人として心情に寄り添いながら答えるか考える。
「お前は、俺のこと何も知らないだろ」
「知ってるもん」
泣きそうなライラック
ジョークのような雰囲気を出すカンベ
「いーや知らない。俺、すっごい顔とかめっちゃボコボコでもう口とか臭いかも」
「以外とフローラルなやつかもだし?…私は顔とか気にしないもん…」
「芳香剤食ってるわけねぇじゃん」
「……もう!冗談にしようとしないで!私は本当に好きなの!!」
真剣な表情のライラック(奈緒)
「私、カンベに会いたい。会って好きって言いたい。振ってくれていいから」
言われて目を見開くカンベ(藤本)
「カンベが、私の気持ちに答えるわけじゃないって本当は最初から分かってた。…ちょっとは期待したけどさ…」
「カンベ優しいから、私が甘えようとするといつもスルっと上手に避けようとする。いつもみたいに注意する事だって出来たのに。近寄るとどんどん離れちゃう」
「それは…」
言いよどむカンベ
ログが上がらず沈黙が流れる。
大きく息を吐く藤本。覚悟を決める。
「俺は、お前の事をそれなりに気に入ってるし、俺に懐いてるのも気づいてた」
「でも俺はマスターだから、いつも通りの日常を大切に思ってる」
「…う、ん…。」
「俺のことを、そこまで好きになってくれて嬉しい。でも……俺はお前ほど、お前のことをそういう目で見れてない。それをわかっているのに、お前が自分から傷つきに来る事に同意できない」
「……どうしてもって言っても?」
「どうしてもダメ」
「私すっごい可愛いんだよ」
「それは俺には関係ない。お前が俺を中身で気に入ってるように、俺もライラックとしてお前を見てるから」
「ずるい、それ言われたら私何も言えない。……私振られちゃったんだ?」
「……ごめん。でも、俺は…お前とはまだまだ一緒に遊んでいたいと思ってる。皆と一緒に更新日を楽しみにして、皆でガチャ回して、新しい場所に遊びに行って…そういうやつ。」
「でも、お前が俺の側にいるのがつらい気持ちがわからないわけじゃないから、これは俺のただのわがままだな…」
苦しげに伝えるカンベ(藤本)
その言葉を見て泣きながら苦笑いをして、カンベを見つめる。
「…本当カンベはずるい。私、それ言われただけで『それでもいいかも』ってちょっと思えちゃったじゃん」
吹っ切れたように笑うライラック
「つらくないって言ったら嘘になる。…でもカンベと、この告白を境に距離が離れちゃうのはもっと嫌…」
「すぐに諦められないけど、私も皆と一緒にいつも通り遊びたい。だから…私、カンベにとって一番の友だちになれるように頑張りたい!」
ゲームの中のライラックが無理に笑う。
「私、告白しちゃったけどまだギルドにいて良いの?」
「……お前が良いなら、良いんだよ。…気持ちの整理がつくまで、しばらく俺がログインを控えてもいい」
「それはしないでよ。それこそ皆が怪しむよ!やだやだ!!」
「そうか」
メガネを外して目元を覆う藤本
項垂れる背中越しの画面
(いつかこういう返事をする日がくるかもしれないと思ってたはずなのに、思っていた以上につらい)
(でも俺以上にコイツはもっと辛かった)
画面前で鼻をすする奈緒
「きっと私、しばらくこの恋を忘れられそうにないんだろうな…」
<以降本編終了時までギルマスとギルメンの関係のまま進む>
いつも通りカンベにはしゃいで絡むライラックと、それを迷惑そうにするカンベ
このやりとり以降の二人はそういう付き合い方になっていくけど、ニコからすると前よりも砕けた仲になっているように見え、ライラックの落ち着きのない恋の様子も静かになっているのに気づく。
前まで少し滑りがちだった口も大人しくなり、少し元気がないような、大人になったような空気を感じる。
ぽこたろうもライラックがカンベの事を好きなのは見て気づいており、ニコと共に他のメンバーには内緒の話で「ライちゃん、いい子だね」「カンベが上手くやったかな」「どうだろう、あの子も真面目だから…辛かったんじゃないかなぁ」みたいに両名を見守る。
「カンベは、ずっと押されたら弱そうだしきっと時間の問題だよ」とニコがいたずらっぽく笑う。
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本編ライラックが報われなくてごめんなさい。最初から彼女は「叶わないパターンのネトゲの恋」を描くためのキャラクターでした。
ただ、その後のお話を用意してあるので、最終回をご覧になった後にそちらを見ていただけたらと思います。
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カンベ/藤本について
ギルマスという、ゲームの世界の中のリーダー役。
カンベとしての彼はいわゆる「強面で物言いのハッキリとした大人のリーダー」(年齢不詳)。ギルマスになる前から自ら矢面に立つ正義感や、人情に厚い部分があり、ぽこたろうにマスターをやるように勧められた。
ただ、強く物言えるのはある意味ネットの中だからもある。
人情に厚くなると、誰かの事情と誰かの事情がかち合った時に決断を下す必要が出てきて、そういう部分で面倒といいつつ面倒くさがらずとことん付き合う事で生まれる悩みを描くために生まれました。
(姿としては)桜井の次に出てきましたが、彼はその情の深さから森子を気にかけて、ギルマスのカンベであり藤本である…という立場から森子をいつも以上に気にかけ、なぜ気にかけてしまうのか自問自答し悩むキャラクターでした。
そしてその悩みは主人公達相手に留まらず、ゲーム内で想いを寄せられるというイベントでも向き合うことになります。
ライラック/奈緒について
ライラックは最初から「悪い子じゃないし明るくて素直だけど…配慮が足りない子」として描いていました。
ただ、気持ちが分かる人はいるんじゃないかと思いながら描いていました。(○○しちゃいけない…でもこれくらいならいいよね?と判断が揺らぐ雰囲気等)
そして上記にもある通り、叶わぬ恋を担当する予定でした。
これは語弊があるかもしれませんが、ライラックは思いやりを確かに持っているけれど、思いやりをもつことが目標になっていて、何が思いやりなのかまだ良くわかっていないようなキャラクターです。伝わりますかね…?
ライラックなりに考えて、相手の言葉をなぞり、復唱しますが真意までは受け取れていないような、そういう話です。
カンベに振られてから、どうしたら好きになってもらえるんだろうと悩み、軽口の中に含まれていた諫める言葉の数々を思い出しやっと猛省します。
振られてからのライラックは、「いつも通り」過ごしますが失言等はかなり減っていきます。カンベ程ではないですが、カンベがフォローに回っているのを察知すると同調して空気を良くするように心がけます。
彼女は失恋を経て少しだけ成長する。……というほろ苦いキャラクターです。
リアルが美人で順風満帆系だけれど、ネットではままならないというブラックジョーク的な所もあります。