法定刑は「死刑」のみ! 日本で最も「罪が重い」犯罪とは? 弁護士に聞いてみた
オトナンサー / 2023年7月11日 7時10分
日本の刑法には、さまざまな犯罪の成立条件や処罰が規定されています。あなたはその中で、現在の日本において「最も罪が重い」とされている犯罪を知っていますか。それは「法定刑が死刑のみ」という重罪のようですが、一体どんな犯罪なのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。
■「未遂」でも罪に問われる
Q.現在の日本において、最も罪が重いとされている犯罪とはどのようなものですか。
佐藤さん「最も重い罪とされているのは、『外患誘致罪(がいかんゆうちざい)』です。外患誘致罪は、『外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた』場合に成立し、法定刑は死刑のみになります(刑法81条)。
『外国』とは、外国の政府や軍隊、外交使節などの国家機関を意味します。外国人個人や、外国の私的団体などは含みません。『通謀』とは、外国に対し、日本に攻め込む決意をすることに積極的な影響を与え、外国との間で日本に攻め込む合意をすることです。
『武力を行使させた』とは、軍事力を行使させて日本国の安全を害することをいい、国際法上の『戦争』に限らないと考えられています。例えば、外国の軍隊が日本の領土に不法侵入した場合や、日本の領土を爆撃した場合なども『武力を行使させた』にあたるでしょう。なお、外患誘致罪は、国外で外国と通謀し、外患誘致の罪を犯した場合も処罰対象になります(刑法2条3号)。
この罪は、明治時代、1880年につくられた旧刑法時代から定められています。第二次世界大戦後、憲法9条『戦争の放棄』との関係で、1947年に文言の修正が行われました」
Q.この犯罪の法定刑が「死刑のみ」なのは、なぜだと考えられますか。
佐藤さん「外国と共謀して、日本国に対し、武力行使させる行為は、日本に住む全ての人の生命、自由、財産などが危険にさらされるばかりか、日本国の存立を脅かす危険性が非常に高いからです。
外患誘致罪以外に、法定刑が死刑のみの犯罪はありません。重い罪である殺人罪の法定刑も『死刑または無期もしくは5年以上の懲役』ですし、強盗致死罪も『死刑または無期懲役』と懲役刑が含まれており、犯行の悪質性などに応じて懲役刑が選択できるようになっています。
なお、外患誘致罪の法定刑は死刑のみなので、原則死刑になりますが、情状に酌量すべきものがあるときは、刑を減軽することができます(刑法66条)。死刑を減軽するときは、『無期の懲役もしくは禁錮または10年以上の懲役もしくは禁錮』となります(刑法68条1号)」
Q.外患誘致罪は、「未遂」に終わった場合でも罪に問われるのでしょうか。
佐藤さん「外患誘致罪には未遂を処罰する規定があるため、『日本に攻め込む合意が成立したけれど、実際に外国が攻め込まなかった』というような場合も罪に問われます(刑法87条)。未遂の場合には、必ずではありませんが、刑を減軽することができます。また、自分の意思で犯罪を中止した場合には、必ず刑が減軽または免除されます(刑法43条)。
なお、外患誘致罪は、未遂に至らない段階、すなわち、外国との間で日本に攻め込む合意をするための準備として、謀議をしたり計画を立てたりしただけでも、予備または陰謀として処罰される可能性があります。外患誘致罪の予備または陰謀をした場合の法定刑は、『1年以上10年以下の懲役』になります(刑法88条)。
Q.2023年時点の日本において、外患誘致罪の裁判例・適用例はあるのでしょうか。
佐藤さん「外患誘致罪については、今に至るまで、未遂も含めて裁判例はありません。外患誘致罪は、日本に攻め込むことについて外国と合意をする罪なので、そもそも発生するケースは極めてまれです。予備や陰謀であっても、処罰に値する危険性がある場合にしか成立せず、成立のハードルは極めて高いと考えられます。
また、仮に、この犯罪が成立したのだとすると、外国が日本に攻め込んできている状況であり、平時の裁判制度で処罰することは困難になります。予備や陰謀の段階であっても、外交問題に発展すると考えられ、司法が慎重になることも考えられるでしょう」
オトナンサー編集部
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