「ファクトチェック」の必要性が叫ばれる中、なぜ東電原発事故関連の「フェイクニュース」は野放しのままなのか?

ファクトチェック組織の課題

2023年6月21日、ファクトチェック記事を表彰する国内初の取り組み「ファクトチェックアワード2023」が行われ、各団体が表彰された。

表彰にあたり、主催した非営利組織ファクトチェック・イニシアティブは以下のように述べた。

「誤・偽情報の氾濫が民主主義を脅かす問題となってきている中、人々がそうした情報に惑わされにくい社会を築くためには、公正で質の高いファクトチェックに接する機会が増え、真偽不明情報に対する人々の免疫力を高めることが重要と考えられます」

筆者も同組織が掲げる意義に強く賛同すると共に、受賞した各団体に心からの祝辞を贈りたい。

一方で、少し違和感もある。これだけファクトチェックの必要性が叫ばれていながら、福島第一原子力発電所事故に関するフェイクニュースへの対応があまりにも弱いことだ。

 

実例の数々は拙著『「正しさ」の商人』にも記したが、東電原発事故は近年の日本において最も大規模にフェイクニュースが広まったとさえ言える災害であり、それら誤・偽情報は今も猛威をふるい続けている。

日本でファクトチェックを掲げる組織や研究ならば本来、これらの検証を避けては通れないはずだ。ところが、マスメディアやファクトチェックを掲げる組織や研究の動きは不自然なほどに少ない。

その理由として、以下のような可能性が考えられるのではないか。

・ファクトチェックを標榜する組織や人物の中立性が充分に担保されていない
・ファクトチェックとして取り上げるテーマの選考や優先順位に恣意性がある
・業界内での相互批判や検証が不十分である

本稿では、国内のファクトチェック組織が東電原発事故関連のフェイクニュースにどのように向き合ってきたかの現状を示し、今後の課題を考察していきたい。

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