ひとりぼっちレジスタンス

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ゆるキャラ界のガッキーといえば埼玉県深谷市のイメージキャラクターふっかちゃんな訳ですが、今日も今日とてふっかちゃんが可愛いなと思ったので写真を載せておきますね。




この可憐さ、ガッキーも真っ青やで~


さのまるとふっかちゃんどっちが好きなのってあなた、お父さんとお母さんどっちが好きか選べるんですか!(いい子ぶりっ子)


好感度が爆上げしたところで、本題です。


職場である歯医者の院長のパソコン駆け込み寺みたいな存在になってしまっている。

わたしは学生時代にプレゼンなどをパソコン(PowerPointなど)でやってきたおかげで今の仕事が務まっているところもあり、今や世間の多くの仕事はパソコンとインターネットなしでは成り立たなくなってしまった。

その変化はめまぐるしく、それらが直撃した上の世代は大変だったろうなあと思う。

多くの人々が仕方ないとそれらのテクノロジーにダイブしていったが、中には強硬に抵抗する人もいて、まるで魔女狩りのような迫害を受けながらもそれらの技術を頑なに拒否してきた人々がいた。


パソコンレジスタンスだ。


パソコンは使わない、メールも使わない、資料も手書きだし、何かあれば直接会うか電話だ。

わたしはそういった抵抗する人々が結構好きで、もし第三次世界大戦がIT軍団とアナログレジスタンスの戦争だったとしたら、レジスタンスに肩入れしてしまう、そんな勢いだ。

けれども、やはり、もう全てのシステムがパソコンとネットを前提に成り立っているわけで、さらには老人レジスタンスは定年や体調不良による退職によってその数をどんどん減らしていく。

極小の泡沫政党みたいな状態になった彼らも次第に心折れ、便利なIT生活の支配を受ける立場になってしまうのだった。


それは時代の流れである。

けれどもなんだか悲しいものでもある。

アナログにはアナログの味がある。

手書きの資料はその人にしか作れない稀少なものだ。

メールで済ますのではなく直接対話をする。

効率が悪くなると人は言うけど、大切なことはもっと別な部分にある。


何としても最後の一人になるまで抵抗してほしかったが、そういうわけにはいかなかったようだ。


わたしの経験上、そうやってパソコンやネットを最後まで拒否していた人間が、それらを利用しはじめる、実はこれが一番厄介である。

使わなかった時代に聞きかじった「憧れ」みたいなものを存分に発揮しだしたりするので手が付けられない暴れん坊になることが多々あるのだ。


ある日、院長がわたしのところに決死の表情で乗り込んできたことがあった。

なんでも、ゲオで借りたDVDをコピーできると聞いたらしい。

借りてきた渓流釣りのDVDとご丁寧にパソコンまで持ってきていた。

コピーしてくれという。

たぶん、パソコンがあればコピーできるみたいな話を誰かに聞いたのだろうと思う。

ずっとそれに対して憧れを抱いていて、じゃあ使うようになったのでやってみようか、ということになったらしい。

DVDから内容を取り出す行為はリッピングと呼ばれて2012年の法改正により原則として違法化された。

やってはいけないことであると説明しなければいけないのだけど、それ以前に、持ってきている渓流釣りのDVDがよくみたらBlue-Rayだ。

そもそも院長が持ってきたパソコンについてるのはDVDドライブなので視聴すらできない。

そこから説明しないといけないのだけど、院長からみたらDVDもBlue-Rayも同じ大きさのディスクなので違うと言っても理解してくれない。
 

何をどうやったらこんな状態になるのかしらないが、信じられないレベルでブルースウィリスも真っ青なレベルでウィルスに感染したパソコンを持ってきたり、完膚なきまでにハードディスクがぶっ壊れたパソコンを持ってきたりする。

院長は必ず「何もしていないのにこうなった」と言う。

絶対にそんなわけない。


レジスタンス時代にどこかで聞きかじった「いまSNSが熱い!」みたいな文言も真に受けていて「SNS始めたいんだけど」という相談を持ち掛けてくることもある。

じゃあInstagramなどいかがでしょう?なんならアカウント作りましょうか?と持ち掛けるのだけど、頑として譲らない。

「俺はそのInstagramというやつががやりたいんじゃない。SNSがやりたいんだ。意地悪しないで教えてくれ」

である。


起業したいけど何していいのか分からないという方、SNSという名称のサービス始めるとこういう人を取り込めますよ。


「見たいサイトがあるんだけど、どうやって見たらいい?」

「なんてサイトですか」

「えっとなんだったかな。たしかXvide・・・」

「職場から見るのやめてください。そもそも見れないようになってます見るなら自宅で」


どこで聞いてくるのかこんなやりとりもしょっちゅうだ。

とにかく、最後まで抵抗してた中年がテクノロジーを覚えるととんでもない暴れん坊に変身する。

中でも一番面白かったのが、かなりの緊急事態だったのか、わたしのところに突進してきて


「大切なメールが読めない!」


と、今誰かが死んだ、みたいな勢いで言われた。

詳しく話を聞いてみると、たぶん文字化けしているようだ。

それはまあ最近は少ないけどよくあることなので


「直せると思いますよ。持ってきてください」


と言った。

たぶん、エンコードみたいなの変更すれば直るはず。

どうせいつものようにパソコンごともってくるだろうから、そこでちょいちょいと直してやればいい、と思っていたら、ご丁寧にプリントアウトしてもってきた。


「繝シ縺ョ逧・ィ倥∈縺ョ繝。繝」


紙にプリントアウトされたこれをわたしにどうしてほしかったのか。

逆にさらさら読み始めたらどうするつもりだったのか。


さらに「メールが文字化けして読めない!」と割と近い血縁関係の人が死んだ、くらいの決死な感じで言われて、また紙に出されても困るので「パソコンごと持ってきてください」と持ってきてもらうと別に文字化けでもなんでもなくて、中国語で書かれたスパムメールだっただけだったりする。

たしかに文字化けに見えなくもない。

ただのスパムならまだ良いのだけど、その中国語のスパムを精査していると、16か所に「大便」って文字が出てきて、普段どんなサイト見てたら中国語で16か所も「大便」と書かれたスパムが来るんだ、と恐ろしくなったりするのです。

日本語でも16個大便と書かれたメールはもらったことがない。

大便って中国語でも大便なのな。


でもね、こういう暴れん坊なレジスタンスの人たちってかわいいんですよ。

基本的に純粋で、まるで初めてパソコンに触れたころの自分を見ているようで、その真っすぐさがどうしても憎めないんです。


「ムービーを撮りたい」

「どうしてですか?なんのために?」

「うちの家内の誕生日祝いとお礼のメッセージ撮りたい」

「協力しましょう」


こういうかわいい申し出だってあるんです。

ちゃんと協力して、撮影までして、動画編集までしてDVDにして渡してあげました。

すごい喜んでました。

ただ、ちょっと悪戯心で、メッセージを喋ってる院長の禿げ頭が徐々に光を増して、最後は一番明るいレベルの蛍光灯みたいになって光り輝きすぎてハレーションみたいになって何も見えなくなる、みたいなジョークを仕込んでおいたんですが、それに対して


「俺としては結構怒ってるけど、家内がとても笑ってた」


って言って喜んでくれました。

レジスタンスがパソコンを受け入れ、こうやって笑ってくれる。

それはなんだかいいなあって思うのです。


わたしがもっと老人になったとき、また新しい何かが世界の主流、みたいになっているかもしれません。

そのとき、もしかしたら抵抗してわたしらはレジスタンスになるかもしれません。

ただ抵抗しきれず、軍門に下った時にあまり暴れないよう、今から肝に銘じているのです。


例えば立体ホログラムみたいな技術が主流になってるのに、大暴れした老人のわたしが、16個の立体で飛び出す大便を召喚する、みたいにならないように、気を付けなければならない。