外来種に侵食される鳥取砂丘がSOS 除草作戦へ3千人出動めざす
産経ニュース / 2023年7月9日 10時0分
緑が一切ない砂漠のイメージが強い国立公園「鳥取砂丘」(鳥取市)だが、実はいたるところに「草原」が広がる。外来種の雑草などによる草原化で、砂丘本来の景観を取り戻そうと対策に苦慮してきた県や同市は今年、市民や観光客らの人力によるボランティア除草を再び活発化させた。ここ数年、新型コロナウイルス禍で参加呼びかけを控えていたが、「アフターコロナで参加しやすい環境が整った」としてPRを強化。3千人程度の参加を目標に砂丘の再生を目指す。
半分近くが草原化
「県民の財産である鳥取砂丘の景観を守り、次世代に引き継いでいくための取り組み」
平成16年度に始まり、19年の歴史を有するボランティア除草の目的を、鳥取砂丘レンジャーの玉野俊雅さんは、そう説明する。その精神は、21年に施行された「日本一の鳥取砂丘を守り育てる条例」にも盛り込まれた。
県緑豊かな自然課によると、主に外来種の雑草が繁茂する草原化が顕著になったのは昭和40年代初めごろという。平成3年には草原化した面積が、国の天然記念物指定を受けている鳥取砂丘のメインエリア約145ヘクタールの42%まで拡大。馬の背と呼ばれる高台の下辺りも緑一色となった。
鳥取砂丘の歴史を振り返ると、日本海からの冬の季節風に起因する「飛砂(ひさ)」が周辺の住民を苦しめてきた。江戸時代から飛砂を防ぐための植林が行われたものの、戦前までは、旧陸軍が砂丘を演習地として活用したため環境が大きく変わることはなかった。しかし戦後は、クロマツなどの植林が推進され、砂防林(飛砂防備保安林)の総面積は約720ヘクタールにもおよんだ。
ところが、植林された樹木が成長するにつれ、風がさえぎられて砂が動かなくなり、いたるところに雑草が繁茂。砂丘本来の景観が損なわれて観光面への影響も懸念されるようになった。このため、民間から砂防林の除去運動が起こり、鳥取市は昭和40年代に3年、50年代にも2年かけて計約32ヘクタールの砂防林を伐採し、ようやく砂の動きが確認できるようになった。
19年間で78トン以上除草
しかし、皮肉なことに、これが草原化に拍車をかけることになった。
「外来種の侵入を食い止めることができず、伐採したことで種が飛んで逆に草原化が広がった」と玉野さん。鳥取砂丘に占める緑地の割合は昭和42年の24%から、54年39%、平成3年42%と拡大し続けた。
このため県や同市などは、平成3年から3年間かけて除草と砂の動きの関係などについて調査。その結果、除草が砂の動きを活発にすることが裏付けられ、同時に、外来種の繁殖力は強く、継続的な除草が必要なことが分かった。
これを受けて6年には県や市などによる除草活動がスタートし、16年度からは住民参加のボランティア除草が始まった。現在は、5月末~9月初めの週末の早朝や夕方に、参加者を募って定期的に実施しているほか、企業や団体による除草、決められたエリアについて団体や個人が「里親」となって継続して担当するアダプト除草などを実施。
ボランティア除草には令和4年度までの19年間で延べ約8万人が参加、除草量は約78トンに達している。
ピークには8千人が参加
コロナ禍前の平成29年度、ボランティア除草の参加者は初めて年間8千人を超えた。ところが、コロナがピークとなった令和2、3年度はともに2千人にも届かず、3年度は1866人まで落ち込んだ。
玉野さんは「ボランティア除草参加者の減少に伴い、令和3年度には業者に委託して1・9トンを除草した」と打ち明ける。さらに今年4月から5月にかけては、ボランティア除草の対象エリアに15年ぶりに重機を投入した。
2、3年度はコロナの影響で、社会全体で密を避けたり、移動を手控えたりする行動制限が行われたため、市民や観光客に積極的に除草への参加を呼び掛けることはしなかった。一方で、近年は教育旅行や課外活動で砂丘を訪れる生徒らが増えてきており、アフターコロナの旅行プランとして、観光に除草への参加をプラスしたスタイルを提案する方針を打ち出した。ボランティアは、コロナ前水準一歩手前の3千人程度の参加を目標にした。
鳥取砂丘では、除草を推進する一方で、江戸時代から取り組まれている飛砂防止対策も継続している。玉野さんは「双方の施策を同時に進めるのは矛盾しているという指摘があるが、植えなければならない木があれば、抜かなければならない草もある。生活を守り、同時に砂丘も守っていく」と話し、バランスをとりながら砂丘を保全していく考えを示した。(松田則章)
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