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安倍氏が倒れる姿を目撃、心の傷癒えぬが「この日だけは」と献花…奈良の事件現場

読売新聞 / 2023年7月8日 23時59分

警察官ら(右)が警戒する中、事件現場近くに設けられた献花台で手を合わせる人たち(8日午後3時24分、奈良市で)=長沖真未撮影

 日本中の人々に衝撃を与えた事件は、発生から1年となった。8日に行われた安倍晋三・元首相(当時67歳)の法要会場には多くの市民が献花に訪れ、事件現場に居合わせた関係者は当時の恐怖を思い起こした。多くの人が、心に深い傷や喪失感を抱えている。

「子どもの頃から、総理は安倍さんだった」

 「子どもの頃から、総理大臣と言えば安倍さんだった」。一周忌法要の会場となった東京都港区の増上寺で8日午後、献花した川崎市の会社員(23)はそう振り返る。

 安倍氏は戦後最年少の52歳で首相となり、8年8か月の通算在職日数は憲政史上最長だった。会社員は昨年の事件直前、横浜市で行われた演説会で安倍氏の街頭演説を聞き、その言葉に力強さを感じたという。

 「森友・ 加計 かけ学園の問題もあったが、信念を持って自身の政策を貫く政治家だったと思う。評価は歴史が決めるだろうが、『暗殺された首相』として歴史に残ってしまうのは残念だ」と語った。

 福岡市の会社員(46)はこの日朝、家族4人で上京し、献花に駆けつけた。昨年10月に山口県で営まれた県民葬にも参列したといい、「長期政権への批判もあったが、官房長官時代から実行力があった。突然命を奪われ、悔しさが消えない」と話していた。

 自民党によると、増上寺に献花に訪れた人は約5000人に上ったという。

「不安尽きない」

 事件発生時に奈良市の現場に居合わせた人たちも、 冥福 めいふくを祈った。

 安倍氏の近くに立っていた奈良県議の荻田義雄さん(75)は、安倍氏が山上徹也被告(42)(殺人罪などで起訴)に撃たれて倒れる姿を目の当たりにした。8日は現場近くの献花台の遺影に手を合わせ、「心の傷は癒えず体の調子もよくないが、『この日だけは』と思って来た。かけがえのない政治家を失ったことは痛恨の極みだ」と嘆いた。

 演説を聴いていた奈良市の会社経営(54)は事件後しばらく、銃撃の瞬間を思い出し 動悸 どうきが止まらなかったという。今年4月には岸田首相が狙われる事件も起き、「聴衆が巻き込まれたらと思うと、不安が尽きない」と話した。

拉致問題に全力

 「安倍さんは恩人であり、戦友。喪失感をぬぐうことはできない」。取材にそう吐露したのは、北朝鮮による拉致被害者・横田めぐみさん(拉致当時13歳)の弟で、被害者家族会代表の横田拓也さん(54)だ。

 安倍氏は拉致問題への取り組みをライフワークとしてきた。横田さんは一時期、政府の対応を疑問視する長文のメールを首相官邸に送り続けていたが、官邸を訪れた際、当時官房副長官だった安倍氏から「メールをずっと読んでいます」と声をかけられたという。

 その後は会うたびに笑顔で迎えられ、「人の苦しみに向き合う信念がある方だった」と感謝する。

 昨年の事件後、父・滋さん(2020年6月死去)の遺影の横に、笑みをたたえる安倍氏の遺影を並べた。家族会の活動があるたびに、2人の遺影に向かって「頑張ってくるよ」と心の中で語りかけている。

 家族会は被害者の一括帰国を目指しており、横田さんは「岸田首相も安倍さんのような覚悟を持って取り組んでほしい」と語った。

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