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迷走するNHKの「ネット放送」 資料からひもとく“あるべき姿”とは

ITmedia NEWS / 2023年7月7日 15時8分

 「上記以外は、『放送と同様の効用が、異なる態様』で実現されるものについて実施」

 としている。

 これを受けて第9回では、民放連が

 「NHKは今般、理解増進情報の名の下で膨らんだインターネット活用業務を絞り込み、『ネットには放送と同じものを出す』との姿勢を打ち出した」

 と念押ししているわけだが、NHKはネット向けのオリジナルコンテンツは作らないという方向性なのだろう。

 ただし、NHKは資料の中で

 「『放送と同様の効用』『放送』と同一の情報内容の多元提供」

 「参照点・多元性の確保を大前提としたうえで『放送と同様の効用で異なる態様のもの』を提供」

 としている。つまり動画コンテンツは放送されたものをそのまま使うが、「見せ方」や「見つかり方」は違いますよ、という話であろう。

 例えば放送時の報道番組は、ニュース枠の中で1本の番組のように見えているが、実際にはニュースネタごとにディレクター(NHKではPDという)や担当記者が異なっている。つまり、細かい取材ネタを持ち寄り、キャスターを中心に据えることで1つの番組に見せているだけで、中身はバラバラに切り離せる。実際に朝のあるニュースを、お昼のニュース用に短く再編集してもう1回放送するといったことも行なわれている。

 こうした、ユーザーの嗜好に合わせた再編成や、検索によるバラ提示は、ネット上のニュースプラットフォームでは常識だ。むしろニュースを検索したら、1時間報道番組が丸ごと見つかり、この中のどこかにあります早送りで探してください、みたいな事では、ネットのメリットがない。NHKの書きぶりは難解だが、やろうとしていることは分かる。

 民放連がNHKの言うことを理解できないのは、番組と報道のどちらをメインと考えているのかの差である。民放は広告が取れるのは番組なので、そちらをコンテンツの主力と考えるが、NHKの主力コンテンツは報道である。

 NHKの中では、NC(ニュースセンター)の権限はかなり大きい。緊急のニュースが入れば、番組を途中でもぶった切って編成変更する。深夜の放送休止中でもなにかあれば、当直のアナウンサーと技術スタッフだけで放送を再開する。NHKの放送システム技術者(放技)は、カメラ、照明、音声、スイッチャー、ミキサーといった放送・送出に関わる全ての業務を、持ち回りで担当し、習得する。これは、大災害によって1人しか生き残らなくても放送が出せるようにしておくため、といわれている。こういう感覚は、NHKにしかない。

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