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種族:人間ではじまるクソゲー攻略! ~レベルとスキルで終末世界をクリアする~ 作者:灰島シゲル

【第一部】 有翼の少女と黄昏の光

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一日目・朝 曙光

 ≫≫チュートリアルクエストが完了しました。

 ≫≫チュートリアルクエストの報酬を支払います。



 ≫≫サバイバルセットを獲得しました。



 ≫≫種族:人間の中で初めてモンスターの討伐を確認しました。種族内における初討伐ボーナスが与えられます。



 ≫≫スキル:曙光を獲得しました。




 ぼんやりと空を見上げていると、女性の機械音声がポケットの中から聞こえた。


 ゲームを始めた時やこの世界に来た時、チュートリアルクエストを受けることになった時など、定期的に聞こえる声だ。

 おそらく、この声はトワイライト・ワールドのシステム音声なのだろう。

 俺はそのシステム音声を耳にしながら、当初の目的を思い出す。



「そういえば、チュートリアルクエスト中だったな」



 ゴブリンを倒すことに必死になりすぎていてすっかり忘れていた。

 俺はポケットをまさぐって、スマホを取り出す。



「なんか、いろいろ言ってたな」



 チュートリアルクエストの完了報酬に、種族内での初討伐ボーナス、それによるスキルの獲得だっけ。

 一つずつ確認していこう。

 まずは新しいスキルとやらだ。

 俺はスマホを開いてトワイライト・ワールドのゲームを起動する。




 古賀 ユウマ  Lv:1→2 SP:0→10

 HP:12/12→14/14

 MP:0/0

 STR:2→3

 DEF:1→2

 DEX:1→2

 AGI:1→3

 INT:1→2

 VIT:2→3

 LUK:5→7

 所持スキル:未知の開拓者 曙光 





「ん?」



 アプリを起動して、真っ先に表示されるステータス画面。

 その画面の変化に目が留まる。

 まず、レベルが上がっている。今しがたゴブリンを倒したからだろう。


 どうやらこのゲームは、自分のレベルが上がったとしてもそれをプレイヤーでもある俺には教えてくれないらしい。

 不親切だとは思うが仕方ない。自分のレベルが上がったどうかは、小まめにゲームを起動してステータス画面をチェックするしかないようだ。



「レベルに合わせてステータスも伸びている」



 次に目についた画面の変化。

 上昇率はステータスによって異なるが、どのステータスも増えている。

 レベルが上がったことで、ステータスも伸びたのだろうか?

 だとすれば、このステータスの伸びはいわゆる、レベルアップボーナスというやつだろう。



 レベルアップボーナスは他にもある。ステータス数値を上げる際に使うSPだ。

 レベルが上がる前はSPを使い切っていたから、今あるSPはレベルアップによって得られたに違いない。


 ……それにしてもSP10という数字は初期SPが3だったことを考えると多い気がするが。



「つまり、レベルが上がるとステータスも増えてさらにSPも増える、ということか」



 俺はスマホの画面を見つめながら独り言ちた。

 だとすれば、ゴブリンを倒しレベルが上がったことによって得られたものはかなり大きい。

 この世界で生き残るためには、ステータスの数字一つ馬鹿にできない。

 

 それは、先ほどの戦闘結果からも言えることだ。

 ゴブリンにとっては、振り向いた瞬間に地面の穴に()()足を取られ、転んだ先にあった鉄の棒で()()()()急所を貫かれた、という不運な事故でしかない。



 けれど、その不運な事故こそ俺が命を賭けて勝ち取った幸運だ。

 普通に考えれば、転んだ先の棒に貫かれるだなんて不運はそうそうに起こるはずがない。

 俺がもとより運が良かったとはいえ、いくらあの状況になるよう準備を整えたとはいえ、ほんの小さなことがきっかけであの状況は崩れてしまう。



 例えば、ゴブリンが穴に気が付いていたら?

 例えば、ゴブリンが倒れる時に踏ん張っていたら?

 例えば、倒れた時に突き刺さった場所が延髄ではなく肩や腕だったら?

 例えば、例えば、例えば……。


 あげていけばキリがない。


 それほどに、あの状況は綱渡りでありギャンブルでしかなかった。

 けれど、俺はそのギャンブルに勝った。

 ただ運が良かったと言えばそれまでだ。


 しかし、このゲームステータスが現実に反映されるのならば、初期SPで運のステータスを上げたことが、この結果につながったことは間違いがないはず。

 あの時、LUKを上げていなければ俺は今、死んでいたかもしれない。



「とりあえず、SPの割り振りは後回しだな」



 ステータスの恩恵は絶大だ。

 今すぐに上げなくても、少し休んでから俺のステータスをあげてもいいだろう。

 振り直しはできないようだから、しっかりと休んで、慎重にどれをあげるのか決めたほうがいい。



「それと、これが新しいスキルか」



 俺は所持スキルに出た新しいスキルへ目を向ける。


 曙光。


 明け方に東の空に見える光のことだ。

 アナウンスでは種族内での初討伐ボーナスだなんて言ってたっけ。



 俺の種族は人間、らしい。

 人間で初めてモンスターを討伐した、ということだろうか。

 やっぱり、この世界には人間がいない、ということだろうか。



 嫌な想像が頭をよぎる。

 俺はその想像を追い出すように頭を振って忘れると、ステータス画面の新しいスキルをタップした。




 ≫【曙光】

 ≫未来を切り拓く人間が照らす世界に告げる夜明けの光。

 ≫モンスターを倒した際に得る経験値量を増やし、Lvが上がった際に獲得するSPが二倍となる。




「チートやんけ」



 素でツッコミが出た。

 いやいや、SP二倍? 何それヤバくね。

 SPが二倍、ということは成長する速度もそれだけ早いということだ。

 それだけじゃなくて経験値の獲得量も増えるらしい。



 どのくらい増えるのかは明記されていないが、経験値が増えるということはそれだけレベルが上がりやすいということ。

 レベルが上がればステータスは伸びるし、獲得するSPは通常の二倍手に入る。

 ぶっ壊れという他ないスキルだった。



「んで、そのスキルのおかげでこんなに大量のSPがあるのね」



 大量にあったSPの謎は解けた。

 普通のゲームならば一人だけこんなスキルを持っていれば他の人間からの非難は免れないだろうが、生憎と他の人間はいない様子。



 さらに言えば、モンスターがいる世界なのだ。

 ぶっ壊れだろうが何だろうが、生き残るためならばありがたく使わせてもらうまでだ。

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