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種族:人間ではじまるクソゲー攻略! ~レベルとスキルで終末世界をクリアする~ 作者:灰島シゲル

【第一部】 有翼の少女と黄昏の光

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一日目・朝 未知の開拓者

「あ、そうだ」


 ふと妙案を思いついた。


「ネットのアイコンがないなら、ゲーム内で助けを呼べば良いじゃん」



 ゲームがあるんだし、ネットは繋がっているはず。

 大抵のゲームには、チャット機能なりメッセージなり他のユーザーと交流できるシステムがある。


 問題はこのゲームにそんなシステムがあるかどうかだが、そこは問題ないだろう。

 何せ、『リアル×レベル&スキル制』が謳い文句のMMORPGだ。MMOなら、きっと他ユーザーとやり取りができるシステムがあるはず。


 俺は地面に叩きつけたスマホを拾った。



「…………あれ?」



 画面の傷やヒビを覚悟していたけど、拾い上げたスマホには傷どころかヒビさえも入っていない。

 俺はスマホのケースもカバーも付けない自然派だから、この手に持っているスマホは剥き出しだ。

 だから、地面に叩きつければ普通はヒビなり破損が出るはず。それなのに……。



「なんなんだよ! さっきから!!」



 まるでひどい悪夢を見ているような気分だ。

 積み重なる〝ありえない〟その状況に、俺は悲鳴を上げた。

 思わずスマホを取り落とし、地面の――それも足元に広がる瓦礫の一部に当たったスマホが小さく跳ねた。



 慌てて拾い上げるが、スマホは無傷だった。

 まるでスマホではなく、まったく別の何かに変わったかのような頑丈さだ。

 正直に言って気味が悪い。

 けれど、もはや今の俺にはこれしか頼みの綱がない。



 俺はスマホの画面を開き『トワイライト・ワールド』と名前が書かれたアプリゲームを立ち上げた。

 ゲームを立ち上げると、先ほどと同じ様なステータス画面が表示された。

 だが、俺の用事があるのはこの画面ではなく、他ユーザーと交流が出来るチャットやメッセージ画面だ。


 ステータス画面を閉じようと画面の右上に触れた。

 反応がない。


 今度は左上に触れてみる。

 やはり、反応がない。


「…………」


 焦る気持ちを抑えながら、俺は画面の端に触れてく。


 ……どこを触っても反応がない。


 いやいやいや、そんなはずはない。何かしらあるだろ。ステータス画面だけが表示されるゲームなんて、聞いたこともない。



「本当に? 本当に、何もないのか?」



 ステータス画面だけが表示されるゲームなんて聞いたこともない。

 今度は画面端ばかりでなく画面全体に指を触れていく。

 祈るような気持ちで画面を触れていた指が、所持スキルの『未知の開拓者』の部分に触れた時だった。




 ≫【未知の開拓者】

 ≫未来を切り拓く人間だけが持つ可能性。この世界におけるすべての未来は未知であり、あなたが切り拓いた未来が既知となる。

 ≫どんな未来を切り拓くのかはすべてあなた次第。





 画面に表示される説明文。

 探していたものとは全然違うけれど、それでも起きた画面の変化に俺は安堵の息を吐き出す。



「未来を切り拓く?」



 どういう意味だろうか。

 何かあるのかと説明文を触れてみるが変化はしない。

 画面の端を触れるとその説明文は消えた。



「何かしらの効果は……ない、みたいだな」



 スキルの説明文を何度も読み返してみるが、それらしい記載は見当たらなかった。

 効果がないスキルなのか?

 だとしたらそれはとんでもない無駄スキルだ。



「他は、何かないのか」



 俺はまた別の個所を触る。

 次に説明文が現れたのは、LUKの数字をタップした時だった。



 ≫LUKの数値を上げますか? Y/N




「数値を上げる?」


 Y/Nってことは、YesかNoってことだよな?

 このステータス画面で数値を変えられるってことだろうか。

 数値を変えて、何かが起きるのだろうか。


「……」



 俺は画面を睨んで考え込んだ。

 けれど、いくら考えたところで画面は変わらないし、事態は動かない。

 未だにチャットもメッセージさえも見つけられていない謎のゲームなのだ。これで何かが変わるのであればやってみるしかない。



 アナウンス文をもう一度読んで、恐る恐る『Y』の文字に触れた。

 その途端に音もなく消えるアナウンス文。

 何か変わったのだろうかと、もう一度ステータスの数値に目を凝らすとLUKの数値が変わっていた。




 古賀 ユウマ  Lv:1 SP:3→2

 HP:10/10

 MP:0/0

 STR:1

 DEF:1

 DEX:1

 AGI:1

 INT:1

 VIT:1

 LUK:3→5

 所持スキル:未知の開拓者




 SPの数値が一つ減って、LUKが二つ上がった。

 減る数字と上がる数字は必ずしも同じじゃないのか?

 一度、それ以外に何かが変わったかと画面のあちこちに触れてみる。



「何も変わらない、か」



 どうやら、変わったのはステータス画面の数値だけのようだ。

 試しに他の数値を触ってみる。

 すると、ステータスとして表示されている数値すべてに同じ様なアナウンス文が出た。



「うーん……。上がったところで、何の役に立つか分からないんだよなあ」

 とりあえず、STRをタップ。出てきたアナウンス文に従ってYを押す。




 古賀 ユウマ  Lv:1 SP:2→1

 HP:10/10

 MP:0/0

 STR:1→2

 DEF:1

 DEX:1

 AGI:1

 INT:1

 VIT:1

 LUK:5

 所持スキル:未知の開拓者




 再び変化するステータス。

 今度はSPが一つ減って、STRが一つ上がった。

 ステータスの上り幅はステータス事に違うのか?

 今度はVITの数値をあげてみる。




 古賀 ユウマ  Lv:1 SP:1→0

 HP:10/10→12/12

 MP:0/0

 STR:2

 DEF:1

 DEX:1

 AGI:1

 INT:1

 VIT:1→2

 LUK:5

 所持スキル:未知の開拓者




 SPの数値はゼロとなり、VITは一つ上がった。

 ステータス上ではVITに合わせてHPが伸びている。

 VITは耐久力だから、それが伸びた分だけ生命力も合わせて上がった、ということだろうか。



「ん、もう数値を上げることはできないのか」


 他のステータスを上げようと数値に触れるが、先ほどのアナウンス文が出てこなかった。


「もしかして、SPってスキルポイントじゃなくてステータスポイントだった?」



 だとすれば、反応しなくなったのにも納得できる。

 VITに割り振って、残ったSPはゼロだ。

 一つのステータスを上げるごとに一つずつ減っていたから、SPに表示された回数分だけステータスを上げることができる、ということだろう。


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