富野由悠季が語り尽くす、技術の残酷さと「GAFAに対する違和感」

独占ロングインタビュー【中編】
富野由悠季, 部谷 直亮

僕自身も国際便に乗ることはあるし、飛行機は当たり前だと思ってしまっているけど……あの国際便の飛行データのサイト、見たことありますか?

――どの飛行機がどこを飛んでいるか、わかるやつですね。リアルタイムフライト追跡を見ると、確かに地図が旅客機で埋め尽くされていますよね。

富野 あの量を見ても、信じがたいじゃないですか。われわれは交通機関として当たり前に受容しているわけですが、絶対に褒められたことではない。実際、ジェット旅客機の問題を深刻に捉えているメーカーも出てきているんですよね。

 

ニュースで見たんだけど、いまはエアバスなんかの大手も「電気飛行機」、つまりモーターで飛ぶ中型の飛行機の開発に力を注いでいるそうで驚きました。絶対にジェットエンジンはこれから批判を浴びるから、何としても開発を加速しなくちゃいけないと実行されはじめているのです。僕たちがぼんやり思っている以上に、メーカーも深刻に考えているらしい。

一方で、いくらグレタさんが目くじら立てて叫んだって、もうすべて手遅れだとも思います。だから、賢い人たちが本来そういう問題意識を持って、システムと技術を制御するとはどういうことかの洞察を磨かない限り、解はない。これが僕の基本的な物の考え方なんです。

グレタ・トゥーンベリさん(Photo by gettyimages)

インターネットは想像できなかった

富野 でも、僕は自分の限界も痛感していて……実を言うと、インターネットに対する想像力は持てなかった過去があります。GoogleもAmazonもFacebookも、最初はただのお友達サイトだったものが、いつの間にか世界を支配するまでになった。そういう可能性に対しては、正直まったく無関心でした。

僕はずっとワープロを使っていて、Wordやメールを使うのもものすごく遅かった人間なんです。ネットが本格的に普及した頃にはもう60代に入っていたし、コンピュータに対する「勘」を働かせることができなかった。

人類というのは結局、新しい技術をビジネスに利用して金儲けしたり、他人を支配するために使いたがるものです。それはGAFAも同じです。この欲望の部分を、技術から断ち切らない限り、ダメなんじゃないかと思うんです。

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