富野由悠季が語り尽くす、技術の残酷さと「GAFAに対する違和感」

独占ロングインタビュー【中編】
富野由悠季, 部谷 直亮

富野 僕はガンダムでも結局は物語を作っているのであって、工学をやってるんじゃない。物語とは結局、文芸の世界です。だから、どうしても体感の問題に突き当たるわけです。メカ的にかっこよくて色気があればそれでいいのかというと、絶対に違うんです。

僕は子どもの頃からメカ好きだったけれど、結局、理科系や工学系に行けなかったことが悔しくもあり、ありがたかった部分もあるんです。結局、アニメという仕事のおかげで、「道具と人の関係性」を嫌でも考えることになった。だから、研究者とか技術者といわれてる人たちの多くは、こういう人間の体感のことをあまり考えてない、ということがわかってきた部分があるんです。

過ちの例が、典型的ですけど、原爆ですよね。「技術を直線的に突き詰めていけば、これができます。使うのは僕たちじゃないから、あとは知りません」では、本当は済まされないはずですよ。同じようなことは建築家にも言えますね。だって、こんなにガラス張りのビルばっかりたくさん作って、何が楽しいの? って……。

――言われてみれば、わかりませんね。五重塔のように千年残る、残す価値があるとは思えません。

富野 それが要するに近代的だとか、進歩だとか、発展だとか思っているその感度が、僕からすれば「鈍くなってるよね」と言うしかないと感じるのです。

ちょっと話が逸れるようだけど、僕は2016年から「アニメツーリズム協会」の会長をしていて、アニメを使った観光誘致の旗振り役をしながら、一方で最近のオーバーツーリズムの問題も深刻だなと思っているんです。実は、観光客をたくさん誘致しようということ自体、僕はちょっと疑問なのね(笑)。

理由は、グレタ・トゥーンベリさんが言うのと同じで、飛行機が温暖化を加速する一番の原因だから。それに最近は、そういう問題に対する若い人からの意思表示も爆発的に増えているわけです。

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