富野由悠季が語り尽くす「G-レコとガンダムシリーズの本質的な違い」

独占ロングインタビュー【前編】
富野由悠季, 部谷 直亮

そこで、宇宙世紀に生まれたミノフスキー・フライトという技術を応用して、ケーブルの500kmごとに巨大な人工衛星を中継地点として設けている、としたわけです。これは要するに駅であり、ちょっとした街なんだよね。産業、とくに工業関係のものは全部この144個の人工衛星──「ナット」と呼ばれる場所に集中している、としました。

「キャピタル・タワー」の中継地点であり工業都市衛星である「ナット」(©創通・サンライズ)

この宇宙エレベーターのシステムにつけた名前が「キャピタル・タワー」(軌道エレベータ)。「資本」を発生するタワーになるからです。

──なるほど、それで「キャピタル」なんですか! 首都だから「キャピタル」ではなく、資本の「キャピタル」なんですね。

富野 このネーミングを思いついたときは、「やった!」と思ったよね(笑)。再生した地球にとって首都なんだ、と考えていたら、キャピタルって「資本」という意味もあると気づいた。「キャピタル・タワーを支配すれば、全地球の資本を押さえることができるかもしれない」としたら、強力なドラマが生まれると考えたわけです。

もうひとつ、フォトン・バッテリーはこのキャピタル・タワーで作られているんじゃなくて、もっと遠方から運ばれてきて、キャピタル・タワーの終着駅に届く、という設定にした。キャピタル・タワーという交通機関が成立するためには、双方向に運ぶものがきちんとなければいけないからです。それを司る駅には製造業や物流が生まれる。それでキャピタル・タワー(資本の塔)なんです。

 

『G-レコ』は経済のアニメである

──『G-レコ』は遠未来の経済圏そのものを描いたアニメだ、ということなんですね。驚きです。

富野 だから、僕が『G-レコ』で一番考えたのは、メカ論じゃないんです。地球をコントロールするってことは経済なんですよね。ということで、「キャピタルか」となった。

少なくとも、ロボットアニメで経済を描いた話というのは、これが初めてなんじゃないかと自負します。だから、その部分では威張ってるんですけど、誰も気がついてくれない。しょうがないから自分で説明することにしたわけです(笑)。

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