──劇中で、地球の人々が「聖なるもの」として崇めている超高性能エネルギー源「フォトン・バッテリー」ですね。たったひとつで全地球の電力が賄えるかもしれない、と設定されている……。
富野 そういう、単なるバッテリー以上の高性能な動力源でないと、モビルスーツなんて動かせない。問題は、フォトン・バッテリーというものがあるとすると、強力なフォトン・エネルギーを圧縮できるとんでもない強度の入れ物もある、ということになります。すると、水も空気も同じように圧縮できる……。
──それが、主人公のベルリたちが宇宙空間で利用する、大量の水や空気が詰まった「水の玉」「空気の玉」ですか。
富野 そうです。あの程度のものがなければ、宇宙で暮らすなんてことは絶対にできるわけがない。われわれはどうも、そういう技術と人間の関係に対する想像力をちゃんと持っていなかった、という反省があるんです。こういう技術的背景があってようやく、宇宙でガンダムのようなものを自由自在に動かせるわけです。
「宇宙エレベーター」が「資本」を作る
──『G-レコ』では、地上から宇宙までをケーブルでつなぐ巨大な「宇宙エレベーター」も重要な舞台装置になっていますね。
富野 それを登場させるにあたって、(一般社団法人)宇宙エレベーター協会の人たちにも意見を聞きました。それでわかったのは、宇宙エレベーターというのは要するにインフラ、日常の交通機関にしないと成立しないということ。つまり、旅行や観光の目的で行って帰ってくるという程度の交通機関だったら、社会を支えられないということです。
例えば宇宙エレベーターには、地球一周分くらいあるとんでもない長さのケーブルを張る必要があるけど、これってメンテナンスどうするの? ケーブル1本だからって、ナメてもらっちゃ困る。『G-レコ』の世界でいうと7万km余り、地球2周分です。それこそ錆びたらメンテナンスが絶対必要になる。それだけじゃない。地球は24時間回っているでしょ? となると、まっすぐな状態を保てるとは思えない。だから、インフラじゃないと恒久的に維持できないんです。