富野由悠季が語り尽くす「G-レコとガンダムシリーズの本質的な違い」

独占ロングインタビュー【前編】

『機動戦士ガンダム』の放送が始まった1979年から数えて、2019年は40周年の節目の年だった。ガンダムシリーズの生みの親として知られる富野由悠季氏(78歳)はいま、昨年11月末から全5部構成で上映が始まった、最新作『Gのレコンギスタ』(以下『G-レコ』と表記)劇場版制作の真っただ中だ。

昨年末、富野監督が多忙をぬってインタビューに応じてくれた。筆者は子どもの時から富野監督の作品の大ファンで、「技術と戦争」に関する研究をするようになってから、監督が描き続けている「戦争と人間」「技術をどうとらえるのか」というテーマについて、いつかお話を伺いたいと思っていた。

インタビューは2時間にわたった。『G-レコ』で描こうとしたものの本質から、技術論、環境問題、GAFAへの違和感、日本という国が目指すべき道まで、富野監督のイマジネーションは広大無辺の宇宙のごとく展開し、聞くものを圧倒するが、いずれも一貫した強い問題意識と優しさに根ざしている。まずは『G-レコ』の制作裏話から、じっくりとお楽しみいただきたい。(聞き手/部谷直亮[慶應義塾大学SFC研究所上席所員] 写真/西崎進也)

 

「遠い未来世界のリアル」とは何か

──『G-レコ』で印象的だったのは、ガンダムのコックピットの座席が、そのままトイレになったり、パイロットたちがコックピットで食事をしたりする。今までそうした描写はなかったので、新鮮でした。それはリアリティの追求だったんでしょうか。

富野 自分でもちょっとビックリしたんですよね。過去のガンダムシリーズの延長で考えていたら、『G-レコ』はこれほどリアルに密着する作品にはならなかったはずだから。

つまり、遠い昔、人類が絶滅の危機に瀕した宇宙戦争──これが『ガンダム』の時代です──があって、そこから1000年か1500年、もしかすると2000年とか3000年かけて文明が再生していった後の時代、それが『G-レコ』の世界観なのです。

アニメである以上、登場する子どもたちが元気に走り回れる世界じゃないといけない。そういう世界、つまり一度「使い切った」地球で、人々が衣食住を賄うために何が一番大事なんだっていうときに、当然、自然だという話になります。

植物が空気を再生してくれる。それから、放射線の半減期も1000年ぐらいあればなんとかなる。海洋に浮かんでいる分子レベルのプラスチックもだいたい沈んで、落ち着いてきた。そういう自浄作用があったうえで、人類が生きていくために一番重要なエネルギーは何なの、って考えると、電力ですよね。

どう発電するか。基本的には太陽光発電が安全パイなんだけれども、僕は太陽光パネルの脆弱さというものがどうしても気になっていたから、太陽光そのものを電力に直接変換できる技術があるうえで、さらに太陽光、光子(フォトン)そのものをバッテリー化することもできる、という設定を作ったんです。

 

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