英在住の香港民主活動家「命がますます危険に」 当局が懸賞金
ジェイムズ・ランデイル外交担当編集委員、アリス・デイヴィース、BBCニュース
画像提供, AFP
羅冠聰(ネイサン・ロー)氏
香港当局はこのほど、中国国外に逃れた民主化活動家8人について、拘束につながる情報に100万香港ドル(約1800万円)の懸賞金をかけた。そのうちの1人で、現在はイギリスに住んでいる羅冠聰(ネイサン・ロー)氏はBBCに対し、自分の命がますます危険にさらされたと話した。
香港では2019年の大規模な民主化デモ以降、当局による活動家への抑圧が激化している。羅氏を含む8人は、2020年に導入された「香港国家安全維持法」(国安法)で、外国勢力と結託した疑いで指名手配されている。有罪となった場合、最高で無期懲役となる可能性がある。
イギリスのジェイムズ・クレヴァリー外相は、「中国が国内外の個人を脅迫し、黙らせようとするいかなる試みも容認しない」と述べた。
「我々は中国政府に対し国安法の撤廃を求めるとともに、香港当局には自由と民主主義のために立ち上がった人々を狙うのをやめるよう要請する」
国安法の施行以降、数百人の民主化活動家が逮捕・起訴された。
中国政府は、この法律は香港に安定をもたらすために必要だとしているが、反対意見をつぶすためのものだとの批判が出ている。
今回、指名手配された8人は全員、イギリスとアメリカ、オーストラリアに滞在している。この3カ国は中国と身柄引き渡しの協定を結んでいない。
香港警察の国家安全保障総監を務める李桂華氏は、「この人物たちは国家安全保障を脅かす重罪をおかした」と話した。
また、香港警察は国外にいる間は彼らを逮捕しないが、追跡はやめないと述べた。
当局に協力しないよう呼びかけ
香港の民主化運動の重要人物の1人である羅氏は、イギリスでは 「比較的安全」だと感じているが、懸賞金が発表されたことで、警戒を強めなくてはならなくなったと話した。
「(香港当局に)私の情報を提供する人が、イギリスや他のどこかにいるかもしれない。例えば、私の居場所や、私がある国を通過する際に引き渡される可能性のある場所などだ」
「誰に会うか、どこに行くか、こうしたことに十分注意しなければ、こうしたことで命を危険にさらすことになる。もっと慎重に生活しなくてはいけない」
羅氏はツイッターで人々に、この件について当局に協力しないよう求め、「自分たちで自分たちを制限したり、自己検閲したり、脅迫されたり、恐怖の中で生きたりするべきではない」と訴えた。
アメリカに拠点を置く「香港民主委員会」の郭鳳儀(アナ・クウォック)会長も、指名手配された1人だ。郭氏も羅氏に同調し、懸賞金は自分や仲間の活動家を威嚇(いかく)するためのものだと話した。
郭氏は声明で、「我々は故郷である香港の自由と民主主義のための闘いで一致団結する」と述べた。
オーストラリアのペニー・ウォン外相は、同国政府は懸賞金の発表に「深く失望」しており、「香港の権利、自由、自治が侵食され続けていることに深い懸念を抱いている」と述べた。
羅氏と郭氏のほか、許智峯(テッド・ホイ)氏、郭栄鏗(デニス・クウォック)氏、蒙兆達氏、袁弓夷(エルマー・ユエン)氏、劉祖廸(フィン・ラウ)氏、任建峰(ケヴィン・ヤム)氏の6人が指名手配された。