【検証】 フランス暴動の偽画像、ソーシャルメディアで広く拡散

BBCヴェリファイ(検証チーム)、ロンドン

Riot police in Marseille

画像提供, Getty Images

パリ郊外で警官が少年を至近距離で射殺したことへの激しい抗議が、フランス各地で続いている。

抗議のもようとされる写真や動画がソーシャルメディアで拡散されているが、本物に交じり、偽物や誤解を招くものもある。

BBCヴェリファイ(検証チーム)が、いくつかの画像を調べた。

フランス映画の暴動シーン

若者グループがフランス警察の車両を乗り回す衝撃的な画像が、ツイッターなどで拡散された。若者の1人は窓から身を乗り出し、銃を誇示している。ツイートには、「フランス、今日のベスト写真」という言葉が添えられている。

フランスのフィクション映画「Athena」の一部が、今回の暴動の様子だとして拡散されていた
Presentational white space

7月2日に投稿されたこのツイートは、170万回以上閲覧されているが、偽物だ。現在フランスで起きている暴動ではなく、映画のシーンを切り取ったものだ。

BBCヴェリファイがこの画像について、過去にインターネットに現れていないか調べた結果、都市郊外での暴動を描いたフランスのフィクション映画「Athena」(2022年)の一場面だと判明した。

2022年のフランス映画「Athena」

画像提供, Iconoclast, Lyly Films

画像説明,

2022年のフランス映画「Athena」の一場面

Presentational white space

車両に載っている人物や、青いバイクなどが一致する。

このツイートをした人物は後に、この画像は「説明用」のものだったと釈明したが、何千回もリツイートされる前ではなかった。

その後、このユーザーはこのツイートを削除した。

別の映画の映像

数階建ての駐車場から車が落下する映像も、インターネットで広く拡散されている。投稿には、「フランスで一体全体、何が起きているのか……」という文章が添えられている。

映画「ワイルド・スピード ICE BREAK」(2017年)の撮影現場で撮られた映像が、フランスの暴動の様子だとして拡散されていた
Presentational white space

この映像が過去にインターネットに登場していないかを調査したところ、2016年6月のツイートが出てきた。そこでは、この映像は映画「ワイルド・スピード ICE BREAK」(2017年)の撮影現場で撮られたもので、撮影場所は米オハイオ州クリーヴランドだと説明されている。この情報から、BBCヴェリファイはこの駐車場がクリーヴランドのプロスペクト・アヴェニュー・イーストにあるものだと特定した。

また、車の色や建物の外観が、「ワイルド・スピード ICE BREAK」内のシーンとも一致した。

「狙撃手」は古い動画

ここ数日間、帽子をかぶった男が建物の屋上で自動小銃に見えるものを構えている映像が、ツイッターやメッセージアプリ「テレグラム」で繰り返し拡散されている。

あるツイートでは、この映像は「フランスの暴徒が警察の自動小銃を盗み、狙撃手になっている」と説明されている。別のユーザーは、この銃は警察車両から盗まれたものだとしている。

2022年3月にソーシャルメディア投稿された映像が、今回のフランスの暴動の様子として拡散されていた
Presentational white space

テレグラムには、フランスの国旗と炎の絵文字を並べ、「略奪犯が狙撃手に守られている」と書かれた投稿があった。

この映像はさまざまなプラットフォームで数十万回閲覧され、数千回拡散されている。

しかし、この映像は現在のフランスの暴動のものではなく、古いものだ。

BBCヴェリファイがソーシャルメディア上を調査したところ、この動画が2022年3月13日にツイッターに投稿されていることを確認した。

男性の服装や屋上での立ち位置、確認できる建物などが一致した。

一方で、撮影場所や、この銃が本物かどうかなどは特定できなかった。

この映像が過去のものだと知っているあるツイッターユーザーは、この狙撃手らしい人物は「1年以上ここにいるに違いない」とコメントした。

BBCヴェリファイはこのほかにも、フランスでの暴動にまつわる虚偽、あるいは誤解を招く投稿を調査している。

取材:フレイ・リンジー、シャヤン・ルダリザデフ